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TBS系列で不定期で放送されている『ぶっこみジャパニーズ』というバラエティ番組がある。巷間良く耳にする、いわゆる“日本スゴイ系番組”だが、この番組で毎回のように取り上げられるのが、海外のなんちゃってな寿司を提供するレストランだ。
寿司と言えば海外では高級料理なので、儲かるからと寿司レストランを始めたというオーナーはどの国にもいる。同番組に登場する寿司の達人でなくとも、海外滞在中に日本食が恋しくなり、寿司を提供するレストランに入ったはいいものの、ネタの割に値段が張るといった印象や、外国人寿司職人が握った寿司に対する「コレジャナイ感」を抱いた人も多いのではないか。
だが、最近では、日本の高級店と同じレベルの寿司を、日本人寿司職人が握る店も増えてきている。確実に言えるのは、寿司という日本文化は海外でも定着しているし、カリフォルニアロールに代表されるように独自の進化を遂げていたりもするということだ。
文：6PAC
住民の流動性が高いアメリカ都市部の景気や物価を表す「スシノミクス指数」
英語にはアベノミクスならぬ「スシノミクス（Sushinomics）」という言葉があるのをご存じだろうか。Urban Dictionaryという俗語辞書サイトによれば、“寿司の値段と比較した価値”のことで、例えば映画館で映画を見るのは寿司2人前と同等であるとか、映画にポップコーンとソーダをつけると寿司3人前と同等といった比較をする際に用いられる。
米ブルームバーグ社は、米国各都市ごとの寿司の値段比較をした「ブルームバーグ・スシノミクス指数（Bloomberg Sushinomics Index）」を毎年公開している。同社によれば、スシノミクス指数は都市部の生活費（家賃、食費など）を反映しているという。ある都市で新たな雇用が生み出されると、それに伴い新しい住民が流入する。新住民の流入で住宅に対する需要が高まれば、当然家賃が上がる。それだけでなく、サンフランシスコのようにAppleやGoogleといったIT企業に勤務する高給取りが増えれば、周辺のレストランの価格も上がっていく。こうした景気や物価を表す指数としてスシノミクス指数は最適だという。
同社は2018年度のスシノミクス指数を7月23日に公開した。数字のベースになっているは、最も象徴的な“アメリカ寿司”である、カリフォルニアロールとスパイシー・ツナロール（以下、ロール寿司）の平均価格。同社の調査によると、全米平均でこれらロール寿司の価格は7.14ドル（約785円）と前年比で2.1％上昇した。この1年間の上昇率が一番高かったのは、日本でもイチロー選手でお馴染みのシアトル。過去5年間で価格上昇率が緩やかだったのはダラスとフィラデルフィアとのこと。フィラデルフィアといえば、あの『料理の鉄人』森本正治氏のレストラン、Morimotoがあるのだが。
ニューヨークが1位だが、2位シアトルの上昇率は6.7％
全米で一番スシノミクス指数が高いのは、当たり前だがお金持ちが数多く在住しているニューヨークだ。スシノミクス指数は144.89と唯一140台となっている。ニューヨークでは、この1年でロール寿司の平均価格が8.87ドル（約976円）と前年比で1.8％上昇した。2位は前述したシアトルで、スシノミクス指数は136.97。ロール寿司の平均価格は8.39ドル（約923円）で上昇率はなんと6.7％。一人前30ドルで済んでいたお会計が32ドルに跳ね上がった計算だ。
スシノミクス指数が発表されたブルームバーグの記事
3位はスシノミクス指数136.62のサンフランシスコ。こちらもロール寿司の価格上昇率は5.3％と高め。以下、4位マイアミ、5位ロサンゼルス、6位ボストン、7位フェニックス、8位サクラメント、9位アトランタ、10位オーランドと続く。なお、全25都市の中でロール寿司の平均価格が一番安いのはニューオーリンズの5.53ドル（約608円）だ。
一昔前であれば、こういったランキングが作成できるだけの寿司レストランの数はなかっただろう。裏返せば、それだけ寿司という日本食文化がアメリカ国内で普及した証しと言える。日本では回転寿司の登場で、一気に寿司がコモディティ化したが、アメリカではいまだに高級料理カテゴリーの中にあってコモディティ化していないことは驚きではある。日本では逆にパスタやピザが割とお高いのと似たような現象だろうか。
ちなみに前述した森本正治氏のレストラン「Morimoto」ではスパイシー・ツナロールが10ドル（約1100円）、カリフォルニアロールが9ドル（約990円）で平均価格は9.5ドル（約1045円）。ニューヨークの平均価格よりは高いが、突出して高いというわけではなかった。