EVENT | 2022/05/26

今や無線LANで1Gbpsは普通?自宅のWi-Fiルーターのベストな置き方をWi-Fiのプロに聞いてみた。日本の「パソコン業界」を支えてきた企業バッファローに潜入【後編】

取材・文・構成・写真:赤井大祐(FINDERS編集部)
インターネット回線のない生活など考えられない現代。
リモート...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

取材・文・構成・写真:赤井大祐(FINDERS編集部)

インターネット回線のない生活など考えられない現代。

リモートワークやゲームのオンラインプレイ、動画のストリーミング再生をはじめ、これまで以上に重要性を増す自宅のネットワーク環境、ひいてはパソコン環境が、どのような進化を遂げてきたのか。国内のネットワーク関連機器業界において圧倒的なシェアを誇る株式会社バッファローに取材を行った。

名古屋市大須にあるバッファロー本社の裏手、商店街の一角にある「Wi-Fi Connected Home」。一見どこにでもある戸建て住宅だが、なんと中には最新のIoT家電がぎっしりとつまったバッファローの自社施設だ。

前後編の後編である本稿では、一般公開されていない「Wi-Fi Connected Home」を案内いただきながら、自宅でWi-Fiをストレスなく、最適に使うために気をつけるべきことや、「Wi-Fi 6」「Wi-Fi EasyMesh™」といった最新規格がどのようなものか、バッファロー コンシューママーケティング部 BBSマーケティング課の面々に話を伺った。「自宅のWi-Fiが安定しない」「部屋によっては途切れやすい」といった悩みを抱える人は必見だ。

バッファローの秘密の施設「Wi-Fi Connected Home」

左からネットワーク開発部 内製アプリ開発・設計検証課 DQA/PQA係長小田氏、コンシューママーケティング部 BBSマーケティング課、永谷氏、課長 下村氏、森重氏、栗本氏、

――  「Wi-Fi Connected Home」は家一軒を使ったかなり大掛かりな施設ですが、どういった目的で作られたのでしょう?

ルーターなどの機器を実際の家庭と同じ環境で利用するために作られたものです。なぜこのような施設が必要になるかというと、日本の住宅環境が大きく関係しています。

施設内は家電が多い以外は一般的な住宅だ

―― どういうことですか?

その特徴がこの「3階建て」という部分に非常に大きく出ているのですが、欧米って平屋が多いじゃないですか。となるとWi-Fiの電波もできるだけ水平方向に飛ばすことが求められるので、周辺機器もそれに合わせて発達していきます。対して日本は土地が狭い分、家が垂直方向に伸びていきますよね。2階建て、3階建も当たり前です。いかにして階をまたいだ状態で、Wi-Fiの電波を安定して飛ばすか、ということを研究する必要があり、この「Wi-Fi Connected Home」はその実験場として機能しています。

「Wi-Fi Connected Home」のルーターは1階に置いてある1台と2階にある1台の合計2台を、「メッシュWi-Fi」として紐付けており、家の中の家電計65個が接続されています。

「Wi-Fi Connected Home」各フロアの間取り(提供:バッファロー)

―― まさに「Wi-Fi Connected Home」という名前に相応しい数ですね。

もちろんこれだけの数を接続している家は滅多にないかと思いますが、当社が今年行った調査では、2018年から2022年にかけて自宅でインターネットに接続する機器の台数が「11台以上」と回答した割合が、16%から43%にまで上昇しています。「21台以上」の回答も1%から5.8%まで上昇しており、今やほとんどの家電がWi-Fiに接続していると状況と言っても過言ではなくなってきています。

「Wi-Fi Connected Home」はフロアごとにテーマを決めておりまして、例えば1階のテーマは「暮らし」。冷蔵庫、電子レンジ、IHコンロはもちろん、トイレもWi-Fiに接続したものとなっています。

―― 今はそんなものまで出ているのですね。

例えばこのトイレはPanasonicさんのものですが、「アラウーノアプリ」というアプリを通じて、トイレを使ったタイミングをモニターすることができます。これは遠方に住む高齢のご家族を持つ方に活用されています。

ちなみに2階にはお風呂場がありますが、なんと浴室、浴槽を自動で洗うことができます。TOTOさんの製品でして、こちらもアプリから指示を出すだけで遠隔で掃除から給湯まで行うことが可能です。

―― 正直家電がWi-Fiに繋がっていても活用しきれないイメージはありましたが、ここまでくるとさすがに便利ですね。

2階では他にeスポーツをテーマに、ゲーミングPCを備えた部屋も用意しています。現在「Wi-Fi 6」という最新の規格が登場しておりまして、これはなんと言っても無線で1Gbpsという通信速度を、理論値ではなく実測値として出せるようになってきたものです。つまり無線でありながら有線よりも速度が出る、という時代になったんです。

コンマ数秒を争うようなオンラインゲームでも回線が安定している状態であれば、無線でも快適にプレイできるようになってきています。もちろん現状では有線と比べて安定性には欠けますが、近い将来、eスポーツの現場においてもWi-Fiでの接続がスタンダードになっていくかもしれません。

リモートワーク時のデスクをイメージした書斎。PCの他に、プリンターやスピーカー、Zoom専用機などがWi-Fiに接続されている。

3階はリビングで、大型のテレビを2台設置しています。こちらも当然Wi-Fiに接続したものでして、それぞれ異なる回線につないだ状態でどれだけスムーズに通信を行うか、電子レンジなどの電波干渉はどの程度発生するのか、といったテストを行っています。

次ページ:Wi-Fi安定のために気をつけたい3つの要素

next