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「とりまつないで光ればいいじゃん?」ギャル電に学ぶ、イノベーションに絶対必要な「はじめの一歩」の踏み出し方【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(18)
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  • 2021.11.09
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「とりまつないで光ればいいじゃん?」ギャル電に学ぶ、イノベーションに絶対必要な「はじめの一歩」の踏み出し方【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(18)

グラビア本のような装丁の、ギャル電による電子工作本

高須正和

Nico-Tech Shenzhen Co-Founder / スイッチサイエンス Global Business Development

テクノロジー愛好家を中心に中国広東省の深圳でNico-Tech Shenzhenコミュニティを立ち上げ(2014年)。以後、経済研究者・投資家・起業家、そして中国側のインキュベータなどが参加する、複数の専門性が共同して問題を解くコミュニティとして活動している。
早稲田ビジネススクール「深圳の産業集積とマスイノベーション」担当非常勤講師。
著書に「メイカーズのエコシステム」(2016年)訳書に「ハードウェアハッカー」(2018年)
共著に「東アジアのイノベーション」(2019年)など
Twitter:@tks

ギャル2人組の電子工作ユニット、「ギャル電」が出版した書籍『ギャル電とつくる! バイブステンアゲサイバーパンク光り物電子工作』(オーム社)が話題だ。この書籍にはイノベーションのために最も大事な要素が詰まっている。

自分のためのテクノロジー

ギャル電は「ギャルも電子工作する時代」をスローガンに結成された二人組のユニットだ。この連載をやっているFINDERSでも「光るとモテる!電子工作する渋谷のギャルが描く未来」)」というインタビューが掲載されている。マイコンとLEDなどの電子部品を使って、自分が身につけてテンションを上げるための電子工作を行い、ネットでもストリートでも成果を発表している。

ギャルが着飾るメイクやアクセサリーは、誰かのためでなくて自分自身のテンションを上げるためのものだ。なので、自分のための電子工作=ギャル電というのはとてもよい名前だ。電子工作をする人にとってのバイブル的雑誌『Make:Magazine』のサブタイトルは「自分のためのテクノロジー(Technology on your time)」で、ギャル電のスタイルはMake活動のド真ん中と言える。

我流とデタラメは違う。手を動かすことによる学び

『ギャル電とつくる! バイブステンアゲサイバーパンク光り物電子工作』より

現代では簡単に説明できる知識は、Googleで検索すればすぐ出てくる。そうして簡単に調べられる知識の価値は無料に近づき、重宝がられる価値は言葉にできない、表現が難しい、何度も手を動かさないと体得できないものに移ってきている。簡単に説明できない答えに、手探りでたどりつくことこそが、現代で貴重なスキルだ。

『ギャル電とつくる!バイブステンアゲサイバーパンク光り物電子工作』(オーム社)は、そうした手探りの知識の身につけ方で満ちている。書籍内のいくつもの言葉からそれが伺える。

「気合い入れてコテで巻いた髪型だって、どうせ途中で崩れるし、電子工作でも作ったものは動かしたら壊れる前提で、はんだごてと一緒にお出かけして直しながら使ったらいいじゃん?」(38ページ)
「電子部品をそのまま図にしてるから、初心者でもぱっと見でわかりやすいのが実体配線図のいいところ!でも、回路が複雑になってくると、電線の数も増えるし交差したりするから、実体配線図だとごちゃごちゃしてごちゃごちゃして見づらいこともあるよ。そんなときは、回路図で見てみるといいかも!」(23ページ)

彼女たちは何度も具体的にモノをつくるワークショップを行っているし、メンバーのまおは工学修士としてエンジニアリングの実力を証明している。我流を語っても、邪道ではない。まおはあるインタビューで、「先に動くものを作ってから理論を学ぶ方が自分はわかりやすい」と語っている。本に見られる、モノそのものとそれを抽象化した図や理論との関係を、ギャル電はきちんと捉えていることがうかがえる。むしろそうした「手応えのある学び」は、今の教育に求められながら、十分なソリューションのないものだ。

次ページ:イノベーションに必要な「自分のゴール」

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