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光るとモテる!電子工作する渋谷のギャルが描く未来|ギャル電(電子工作ギャルユニット)
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  • 2020.01.15
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光るとモテる!電子工作する渋谷のギャルが描く未来|ギャル電(電子工作ギャルユニット)

「100年に一度」と言われる大規模な再開発プロジェクトが進行する渋谷。今、“大人の街”へと変貌を遂げようとしている。

渋谷はかつて“若者の街”だった。90年代、センター街を闊歩するギャルがお茶の間の話題をさらい、ガングロメイク、厚底ブーツ、ルーズソックスといったギャルカルチャーが一世を風靡。しかし、そんなギャルカルチャーは2000年代以降、一気に衰退。ギャルは渋谷から姿を消した。

いや、ギャルは消えていなかった。独自の進化を遂げ、私たちの目の前に再び現れた。光るアクセサリーを身にまとい、夜の街で煌々と光を放つ電子工作ギャルユニット「ギャル電」。“ギャルも電子工作する時代”をスローガンに“ギャルによるギャルのためのテクノロジー”を提案すべく、ユニークなファッションアイテムや電子工作ワークショップで注目を集める。

なぜ“ギャル”と“電子工作”の突然変異は起きたのだろうか? 話を伺った。

聞き手・文・構成:岩見旦 写真:松島徹

ギャル電

電子工作ギャルユニット

現役女子大生ギャルのまおと元ポールダンサーのきょうこによる電子工作ユニット。「デコトラキャップ」「会いたくて震えちゃうデバイス」など、ギャルとパリピにモテるテクノロジーを生み出し続けている。夢はドンキでアルドゥイーノが買える未来がくること。

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「タピオカ」「感電上等」電飾看板を首から下げるギャル

―― 本日はたくさん作品を持ってきていただきましたが、こちらは何でしょうか?

きょうこ:電飾看板ネックレスシリーズです。プラ板2枚にシールが貼ってあるだけで、結構雑な作りです。今年の夏に、秋葉原にある明和電機さんの公式ショップでワークショップをやるというので、もっとプロダクトっぽいものを頑張ってみようと、まず作ったのが「タピオカ」。そして「感電上等」「ギャル電」「令和」。全部手作りでやっていて、「高収入」が一番難易度高いですね。意外と「タピオカ」の縦バージョンが人気です。

まお:一時期スマートなデザインのものが広まりましたが、今またこういう下品な看板みたいな世界観がまた来ていて、「SPINNS」という若い子向けの服屋でも、昔の風俗の看板をパロったみたいな商品を出しています。

90年代のギャル文化がまた盛り上がると同時に、ローファイ・ヒップホップやヴェイパーウェイヴといったノスタルジックな雰囲気の音楽が流行り出して、海外からは80年代のシティポップが人気を集めていて。

きょうこ:こういう混乱を加速させようと思って、ギャルが電飾看板を首から下げるというファッションをするのは、かなりサイバーパンクかなと。

フランスにヤマンバギャルが生息

ギャル電・まお

―― そもそもお2人は元々ギャルでその後で電子工作を始めたんでしょうか? それとも電子工作をしていた人がギャルになったのでしょうか?

きょうこ:それはちょうど交差していて、私は電子工作を始めてからギャルになり、まおは元々ギャルで電子工作を始めました。

まお:私は9歳からタイに住んでいて、その頃からギャルカルチャーが大好きでした。

―― タイでもギャルだったんですね。

まお:週末だけギャルという感じでした。外に出てギャルの格好をして遊んだりもしていたんですけど、仲間は一人もいなくて。その頃、海外のネットの中ではギャルサーが流行っていたんです。例えばフランス人のギャルサーはパリで活動して、パラパラとかを踊ってたんですが、私は行けないのでFacebookで交流したり。あとは昔日本にあった「前略プロフィール」というサイトで、こっちからギャルに絡んでいって、友達を作ったりしてました。

―― だけど、その頃すでに日本ではギャルカルチャーは下火になりつつあったんじゃないですか?

まお:そうですね。その頃日本では益若つばささんとか、白めのギャルが流行ってました。だけど、フランスにはヤマンバみたいなゴリゴリ黒ギャルがいて。

―― フランスにはヤマンバが残ってたんですね!

まお:残っていました。海外の人たちとコメント交換したり、自撮りのやり方聞いたり、どういうコスメ使ってると聞いたり。当時、中国の市場では有名ブランドのカラコンやつけまつ毛、ウィッグがブランド名の貼られていない状態で工場から横流しされていて、4分の1くらいの値段で売っていました。

18歳の時日本に来て、同時に大学に入学したんですけど、そこでロボットコンテストみたいなイベントに出て、初めて電子工作したら楽しくて。それから、自分で光ものを作ったり、ブログを書いたりしてました。

―― ギャルでしたら、大学でも目立っていたんじゃないですか?

まお:そんなに注目を浴びていたわけではなかったですけど、陰で「レディーガガ」って呼ばれてました。

きょうこ:雑な陰口(笑)。金髪というところしか合ってない。

日本のストリートにはテクノロジーが足りない

ギャル電・きょうこ

―― 一方、きょうこさんはギャルが全盛期に10代を過ごされていましたよね。

きょうこ:そうですね。だけど、ちょうどその時はどちらかというとインドア派で、めちゃくちゃ陰キャでした。ディストピアSFとかサイバーパンクSFが好きで、『ニューロマンサー』とかウィリアム・ギブスンの作品は買えるものは全部買いました。ストーリーの後ろにカルチャーがあって、テクノロジーがあってみたいな世界にすごく憧れがあったんです。割ともっさりとした地味な10代を過ごして、このままじゃダメだと思って、ポールダンスを習い始めました。

それまでは、ギャルに対して憧れが混じった嫉妬の感情があって、ネガティブに見てたんですけど、華やかな女の子が後ろでどれくらい頑張っているのかを見て衝撃を受けました。ポールダンスって澄ました顔して軽々こなしてるように見えて、めちゃくちゃ難しいんですよ。みんなハードにやりすぎて軟骨がすり減ってます。20代の女の子がカフェでアサイーボウルを頼みながら、いいコンドロイチンの情報交換をしています。

―― ポールダンスってそんな大変なんですね。

きょうこ:その頃、友達のイベントでショーの手伝いをしたんですが、演出のため衣装や小道具を自分で作ったりしていて、私はこっちの方が向いているなと思ったんです。

当時は周りに電子工作を教えてくれる人が誰もいなく、インターネットにもそこまで情報がなかったので、とりあえず百均の光るものを分解するところからスタートしました。子ども用のステッキとかライトとかの中がどうなっているのか調べたり、他のところに使ったり。そう、ストリートで電子工作。

―― 電子工作の専門学校に通ってたんじゃないんですね。

きょうこ:そうです。その頃、メイカーズ・ムーブメントに関する記事とかをウェブ媒体で書いていたのですが、その時感じたのは日本のストリートにはテクノロジーが足りないと。欧米だと、電子工作とサブカルチャーが近い位置にあり、楽器を自分で作る人もいます。

私の最初のビジョンは、ポールダンサーやダンサーがショーに出る前の格好で、楽屋で電飾を直すというのをイメージしていました。くわえタバコとハンダゴテを持つ不良少女を想像して、めっちゃクールじゃんと思って。

―― それはパフォーマーとかアーティスト集団といった存在でしょうか?

きょうこ:どちらかというとドラァグクイーンに近いと思います。自分がパーティーを楽しんだり盛り上げたりするために一番派手な格好をするみたいな。パーティーでイケるための電子工作です。

だけどダンサーはダンスが忙しいので誰も電子工作に乗ってくれず、一番インパクトが強いのは何だろうと考えて、そこでギャルが出てきました。このままギャルが絶滅するのは惜しいなと思って。ギャルカルチャーってめちゃくちゃ面白くて、変じゃないですか。

まお:私もずっとギャルが大好きだったのに、渋谷に行ったら誰もいなくて、私もみんなに染まって金髪から濃いピンクみたいにして、ギャル魂が減ってたんです。

メンヘラっぽいデバイスをプレゼン

―― そしてどのようにお2人が出会われたんですか?

まお:2016年の夏に、知人に「多分まお、きょうこと一緒にやったらいいと思うよ」って紹介されて。だけどその時見たきょうこの写真がめちゃくちゃ遊び人みたいな感じで、すごく嫌だったんですけど。

きょうこ:ポールダンスのショーの時の写真だったんです。

まお:絶対一緒にやりたくないと思ったんですが、Skypeで初めて話したら、全然そんなこともなく、むしろ話しやすくて。

―― 結成してまずどのような活動をしたのでしょうか?

きょうこ:まおがその時にインターンに行っていた企業が毎月メイカー系のプレゼンをするイベントをやっていて、ギャルが電子工作をして作ったグッズということで持っていったんです。

まお:ギャルといったらオフショルしかないと思って、ビクビクしながら着ていって。

きょうこ:最初のプレゼンはloTがテーマで、「会いたくて震えるデバイス」を作って持っていきました。パンダのぬいぐるみの中に機工を入れて、ブラウザ越しに操作して震えさせるというものでした。

ある時期から若い女の子がメンヘラっぽいことを言うのがSNSでポップなカルチャーとして流行っていたので、それも含めて若い女の子の情念みたいなものでテクノロジーを作ると、こんな酷い目に遭うというディストピア味を出してみました。

―― プレゼンした結果はどうでしたか?

まお:めちゃくちゃウケたんです!おじさんたちから怒られるかと思ったら(笑)。

ストリートコンピューティング

ヒョウ柄のハンダゴテで電子工作

―― 電子工作をすることでパリピにモテるっていうのは、よくおっしゃってますよね。

まお:光ると目立つ。目立つとモテる。朝方4時くらいに、渋谷で光り物に寄ってきた若者から「何やってんの?」と声掛けられて「電子工作、知ってる?」と言うと、「知ってる、インターネット」って言われて。なので大体会話にはなってないです。

ギャル電は難しいことは何もやっていなくて、本当に海外の人たちが作ってシェアしてくれたプログラムをそのまま使っていたり、技術的な部分もみんなが目に見える技術を使ってるんです。

きょうこ:最初は頑張って調べてIoTとか頑張ってやって、インターネット越しに光り方を変えるみたいなやつをやってたんですが、途中で気付いたんです。イケているクラブは大体Wi-Fiが通らないということに。Wi-Fiは弱い上、電池を無駄に使うんです。

パリピは別にそんなにインタラクションみたいなものを全然求めていなくて、道端でパソコンから直にプログラムを書き換えて、光り方をその場で変えればいいという方針になりました。

まお:ストリートコンピューティング。

国内になかったイケてるテクノロジーの作例

―― 先程、日本のストリートにはテクノロジーが足りないとの話がありましたが、日本の電子工作って海外と比較するといかがでしょうか。

まお:日本の人たちは、ちょっと賢そうなものじゃないと発表するのが恥ずかしいと思ってるように感じます。見えないところでもグルーガンでベチャって留めたらキレイじゃないとか。本当はそんなこと関係なくて、どんどんみんなやったらいいと思います。

きょうこ:あと電子工作をするとどんどん進化したものを期待されることが、問題だと私は思っていて。「Lチカ」という概念があるのですが、電子工作始めた人はまずサンプルプログラムで回路を組んで、LEDを1個光らせるんです。この入門レベルと、自作でキュウリを仕分けるAIを搭載した電子機構を作るといった高いレベルとの間のものが、全然ないんです。

私たちはクラブに遊びに行くのに使えるテクノロジー、簡単でイケてる光ものが作れるテクノロジーが欲しかったのに、その作例はほとんどありませんでした。

まお:海外では靴に光り物を付けてみたり、ジャケットを光らせてみたりというものが結構あるんです。専門的な知識がない人でも、プログラムをバンバンコピペして、やってみたら出来たみたいな。そういうノリの電子工作が、日本ではあまりなくて。それでギャルが自分で作れるものを作っていくっていうのをアピールしてます。

「サード・サマー・オブ・ラブ」の波に乗る

―― 今のクラブカルチャーに対してギャル電さんはどのように見ていますか?

まお:今またレイヴカルチャーが流行ってきている印象があって、まだ雰囲気だけですけど「セカンド・サマー・オブ・ラブ」くらいのやつが現実になると最近思っています。逆にクラブは敷居が高くなっていくんじゃないかなと。これからは、もっとDIYのパーティーが増えていくと思います。なので、私はすごく楽しみというか、これからまたもう一回その世代が戻るのを見たいというのはあります。

きょうこ:90年代のカルチャーを振り返ると、今よりも景気も良かったし、お金もあったなと。若い世代と話すと、ずっとパワーがあるカルチャーじゃないところで育ってきたと思うんです。当時のギャルって、口も悪いし態度も悪いしコンプラぶっちぎりだったじゃないですか。今のギャルは人に気を使ういい子が多いですがその分、めちゃくちゃなパワーがないのかなと。だから、今の世代にDIYでやらせてあげたいです。

―― そこでこそギャル電がウケるんじゃないかってことですね。

まお:まさにそうですね。ギャル電をレイヴで流行らせたい。次の「サード・サマー・オブ・ラブ」で。

正しい道から外れたチームがトップに躍り出る

―― ギャル電の最終目標として、シンギュラリティを加速させるとよくおっしゃっていますが、その真意はなんでしょうか?

きょうこ:賢い人がちゃんと使う正当なテクノロジーの進化は、多分正しいものだとは思うんです。だけど、何かワンチャンあってその正しい道から外れたチームがトップに躍り出ることがあると思います。

ギャルカルチャーはメインストリームとは違う流れにあり、やたら現実主義で地に足付いています。マジックでアイライン書こうみたいな、生命力というかサバイバル力があるイメージです。

普通に考えて誰もやらないことを、とりあえずやってみるというパワーがギャルカルチャーにはあるので、それをテクノロジーでやったらほとんどは酷いことにはなるだろうけど、その中にはみんなが考えなかったものが生まれる可能性があると思います。それを短く言うと、ギャルが電子工作を始めたらシンギュラリティを加速させるということです。


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