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「SDGs」と「五輪支持」を掲げる矛盾。日本人と企業はSDGsにどのように取り組んでいくべきか
  • SUSTAINABLE
  • 2021.08.07
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「SDGs」と「五輪支持」を掲げる矛盾。日本人と企業はSDGsにどのように取り組んでいくべきか

Photo by Unsplash

「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉が盛んに飛び交うようになった昨今。最も強くコミットメントが求められるのは、言うまでもなく企業だろう。試しに「〇〇社 SDGs」などと検索してみると、だいたいの大企業は専用のランディングページを設けていることがわかる。しかし中を覗くと、聞いたことの無いスローガンと、どこか言い訳じみた”実績”がひっそりと掲載されているばかり。残念ながら、社会的なムード形成には程遠いと感じざるを得ない。

そこで本稿では、ニューヨーク在住のジャーナリスト・佐久間裕美子さんに、SDGsをうまく活用した企業の事例や、それに付随する消費心理の変化などをを交えながら「なぜ企業がSDGsへコミットする必要があるのか」を解説してもらう。

また、タイガー魔法瓶株式会社による取り組み「4つの約束」について、同社の取締役である浅見彰子氏へ訊いた、インタビュー記事「SNSで絶賛、競合と立場逆転、応募学生の変化…絶好調タイガー魔法瓶が徹底した「企業人格作り」とは」と同時公開となっている。企業の外と中。社会で起きている大きな流れと具体的な取り組み。2つの異なる視点から企業とSDGsの関係を見ることで、その意義についてより深く考えていくことができるはずだ。

佐久間裕美子

ニューヨーク在住ライター。在米期間は丸20年。イェール大学修士課程修了。著書に『ヒップな生活革命』〈朝日出版社〉、『ピンヒールははかない』〈幻冬舎〉、『My Little New York Times』〈NUMABOOKS〉、『真面目にマリファナの話をしよう』〈文藝春秋〉、2020年12月に『Weの生活革命』〈朝日出版社〉を刊行。

環境問題だけがSDGsじゃない

今、日本の大企業の多くが、2015年に国連サミットで採択されたSDGsに、遅ればせながらコミットするようになってきた。

SDGsという言葉を目にしない日はほとんどないし、スーツのラペルにSDGsバッジをつけるビジネスマンの姿を見かけることも増えてきた。とはいえ、現状では、SDGsを標榜する企業が有言実行になっているかとはいうと、残念ながら答えはノーだ。SDGsはより健全な社会を作るための「社会的持続性」も含まれる包括的な提案であり、それが網羅する17の分野は、地球環境の持続性とともに、「人権」「ジェンダー平等」も含まれている。日本の大企業の多くが事業計画や理念の中にSDGsを掲げながら、この2大分野が存在しないかのように振る舞っていることは由々しき問題だ。

たとえばSDGsを実施するための8つの優先課題の中のトップには「あらゆる人々の活躍の推進」が謳われていて、「あらゆる」の中には、女性、LGBTQのセクシャルマイノリティ、難民、移民といった社会的弱者が含まれている。

また17項目の達成目標には、「ジェンダー平等を実現する」「人や国の不平等をなくそう」「平和と公正をすべての人に」という文言が含まれている。それなのにSDGsを掲げている企業のトップの圧倒的過半数は、スーツ姿の男性であるし、進学や就職において、明白に不平等な扱いを受ける女性の多くが、いまだに「一般職」「派遣」というカテゴリーの中に押し込められて、同じスタート地点に立つことすらままならない。ウイグルで甚大なる人権侵害が今この瞬間も起きているのに、サプライチェーンにウイグルが入っている企業が一言も言葉を発しないという状況も起きている。

企業がSDGsへ取り組むのは慈善目的ではない

アメリカの大企業が社会責任やSDGsにコミットするのは、慈善的姿勢からではない。気候変動がさらに進むことがビジネスリスクであることをシビアに理解しているし、社会責任の追求が優秀な人材を獲得するためのアドバンテージになることも熟知している。エシカルな消費者は、自分が支援できる企業を常に探しているし、いったんコミットしたら忠誠心も高いからだ。

その良い例がパタゴニアだ。2017年に発足したトランプ政権が、前任のオバマ元大統領が敷いた環境規制を緩和し始めると同時に、トランプ抵抗勢力として政策に反対するキャンペーンを張ったり、阻止するための訴訟の原告に名を連ねるなど、それまで以上に政治に踏み込む方向にシフトした。環境破壊と自然保全をテーマにしたビデオ・キャンペーンを展開して、環境を守りたいという共通項で結びつく顧客層を動員することで反トランプ政権の抵抗運動の前線に立った。

フェアトレードを実践し、不要商品を回収したり、リペアして売り直す一方で、従業員には相場以上の給料と、潤沢な福利厚生や休暇を与えるなど、自らも矛盾のない姿勢で顧客の忠誠心を獲得し、今では時価総額10億ドル企業に成長した。真の倫理性を追求することが、強固な顧客ベースの構築につながるということに気がついている日本の企業はまだまだ少ないように見えるけれど、消費者たちのマインドには確実にシフトしている。この記事と同時にリリースされたタイガー魔法瓶社の浅見執行役員のインタビューは、私のこの考えを確信に変えたので、そちらも併せて読んでほしい。

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