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「百貨店に来る若者が減った」。バーチャル伊勢丹は未来の顧客を掴む打開策となりうるか|三越伊勢丹 仲田朝彦(前編)
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  • 2021.06.09
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「百貨店に来る若者が減った」。バーチャル伊勢丹は未来の顧客を掴む打開策となりうるか|三越伊勢丹 仲田朝彦(前編)

日本を代表する百貨店の伊勢丹がデジタルの世界へと打って出た。昨年4月から5月にかけて開催された世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット4」にて仮想伊勢丹新宿店を出店。伊勢丹新宿本店を模した「バーチャル伊勢丹」がVR空間上に出現し、なんと店内では実際に接客をしてもらいながら買い物までできるという完成度の高さから、大きく話題を呼んだ。

デジタル空間上に現れた「バーチャル伊勢丹」

この型破りな事業を実現してみせたのが、株式会社三越伊勢丹オンラインクリエーショングループ デジタル事業運営部の仲田朝彦氏。入社した2008年当時、GoogleEarthを通じてiPhoneの画面に立体的に映しだされたワシントンD.C.の町並みを見て以来、デジタル"空間"上の伊勢丹建設を目論むこと足掛け13年。ついに実現となった。

一見、注目を集めるための飛び道具にも思えたが、話を聞いていくにつれて印象が変わった「バーチャル伊勢丹」の全貌について、前編では、会社の中での立ち回りや、事業から派生する新たな価値づくりについて話を訊いた。

後編はこちら

聞き手・文:赤井大祐 画像提供:株式会社三越伊勢丹

仲田 朝彦(なかだ ともひこ)

1984年4月3日生まれ。東京都多摩市出身。早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒業。2008年株式会社伊勢丹(当時)に入社後、紳士服担当として店頭・バイヤー業務を経験。2019年三越伊勢丹 MD統括部 シームレス推進部、2020年三越伊勢丹ホールディングス チーフオフィサー室 関連事業推進部を経て、2021年より三越伊勢丹オンラインクリエイショングループ デジタル事業運営部(現職)。

百貨店の課題と服飾学生の悩み

――仲田さんが伊勢丹のバーチャル化を意識し始めたのは、GoogleEarthに触れて以来とのことですね。

仲田:ちょうどiPhoneが発表されて、デジタル上に実際の街や建物が立体的に表示されているのを目の当たりにして、「いつかこの世界に伊勢丹を建てたい」と思ったのが入社1年目の時です。それ以来やりたいことをずっと手帳に書き貯めていましたが、基本的に構想にとどまるものでした。

入社7年目頃に、ファッションデザイナーを目指す文化服装学院の学生さんたちとお話をする機会がありました。その時に、「百貨店はなるべく在庫を抱えたくないので、『売れる物』を仕入れたいが、その結果デザイナーは『売れる物』を作らなければならなくなってしまい、新しいデザインに挑戦しづらい状況がある」という相談をされました。頭の中には次世代的なデザインがあっても世に出てくるのは旧来的なものになってしまう。そこで、今まで考えていたデジタル上の店舗と話がつながりました。つまり「頭の中のデザインを、在庫リスクなくローンチができるのがバーチャルだ」と。バーチャル伊勢丹を「やりたい」じゃなくて「やる」と決めたのがその時でした。

――なるほど、元々仲田さんが持っていた思いと、百貨店やその周りで起きているリアルな問題がつながっていったのですね。

仲田:在庫リスクについてもう少し詳しくお話をすると、バブル期と比べて日本の百貨店市場は厳しくなっており、当時9兆円ほどあった市場規模は今や6兆円弱です(2019年度、日本百貨店協会調べ)。そして百貨店業の営業利益率はだいたい1〜3%でずっと変わっていません。市場が落ち込んでいるのに対し利益率が変わっていないということは、在庫リスクがさらに大きくなったということです。そしてこの問題を含めて、百貨店には3つ大きな課題があると個人的に考えています。

――はい。

仲田:1つは場所と時間の問題です。百貨店業はリアルの土地の上にお店を出すというビジネスモデルが主なので、必然的に店舗に対して集客できるエリアは半径数十kmに限られてきます。そして営業時間も朝10時から夜8時まで、というように制限がある。

――ECはその課題を解決したわけですね。

仲田:まさにそうですね。後ほどお話ししますが、今回の取り組みはその上にどういった価値を乗せていけるかという挑戦になると思います。そして、もう1つは百貨店として、次世代、つまり若年層のお客さまとの接点が減っていると個人的に強く感じています。僕は入社14年目になりますが、14年前と現在とで、お客さまの年齢層はだいたい10歳ぐらい上がっていると感じています。

僕が学生の頃はちょっと背伸びして伊勢丹に行く、なんてこともありましたし、それ自体そこまで珍しいことではなかったと思います。でも今は明らかに若い人が減っているように感じます。今若手の私が還暦を迎えた時に、会社にとって中心の顧客が若い方々なのか、ご高齢の方なのかというのはすごく重要な話だと思います。百貨店として次世代のお客さまと接点を持つ方法や、商圏や時間に依存しないデジタルトランスフォーメーションのあり方を模索した結果として、今回、バーチャル伊勢丹を立ち上げました。

次ページ:バーチャルの「土地」にコンテンツを乗せる

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