EVENT | 2021/06/09

「百貨店に来る若者が減った」。バーチャル伊勢丹は未来の顧客を掴む打開策となりうるか|三越伊勢丹 仲田朝彦(前編)

日本を代表する百貨店の伊勢丹がデジタルの世界へと打って出た。昨年4月から5月にかけて開催された世界最大のVRイベント「バ...

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バーチャルの「土地」にコンテンツを乗せる

「REV WORDS」内の風景

――バーチャル伊勢丹の運用は、自社で開発されたスマホアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」内で行っているとのことですね。

仲田: はい。以前は「バーチャルマーケット」のプラットフォームにもなっていた「VRChat」など、他社プラットフォームに展開することも考えていました。ですが、今後やりたいことをスクラッチでどんどん作っていくのであれば、自社でアプリを開発した方が汎用性が高いと思いました。

――それにVRではなく、通常のスマホアプリというのも意外でした。

仲田:やはり一番VRに馴染みがあるであろうVRChatユーザーだけでなく、もっと広いお客さまにバーチャル世界というものを体験してほしいなと思いました。

HMD(ヘッドマウントディスプレイ)は体験価値が高く、個人的にはとても好きです。本当は全ユーザーにHMDで体験してほしいぐらいです。でもバーチャルマーケットに出店した際に、「やってみたいけど、デバイスを持っていなかったのでできなかった」という声をたくさんいただきました。そういった点で、まずはスマホアプリのバーチャルワールドだというところで絞ってみました。

――REV WORLDSはどのようなコンセプトで作られているのでしょう?

仲田:「REV」には「回転」という意味があって、例えば「”Rev”olution(革命)」も、なにかがひっくり返るというニュアンスだと思います。僕が作りたいバーチャル世界は地球と同じ球体なのですが、特にバーチャル世界に慣れしていない多くのユーザーにとっては「リアル世界とバーチャル世界を連動させること」で、2つの世界をつなげてみることができると思います。イベントや売っている物など、ここが密接にシンクロすることが重要になってくる。さらに言えば、時間や季節、天候の変化もシンクロしていくとより良いわけです。そのために、僕が目指しているバーチャル世界は地球と同じく自転するものを考えています。

加えて、球体でありながら土地の上にコンテンツを乗せていきたいと思っています。例えば「歌舞伎町方面に行けばゲームがある」であったり「代々木方面に行けばカメラ買える」など。バーチャル空間上でも土地に役割を持たせて、方向感覚を作りたい。都市をぐるぐる回ってほしいという思いが「REV」にあります。

――ちなみにデジタルの土地の上にコンテンツを乗せる、という考え方はなにか参考にした事例があるのでしょうか?『Second Life』とかもたくさんの企業が参入していましたし、考え方は近そうです。

仲田:小学校の頃からやっていた『シムシティ』の影響はとても強く残っています。『Second Life』については、似ているねという声も結構ありました。ちなみに三越も出店していたということを去年ぐらいに知りましてびっくりしました。

――おお、先人が挑戦していたんですね。

仲田:当時の担当者がまだ誰だか分からないのですが、ぜひ一度会ってみたいです。

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