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任天堂の「資料館計画」が天才的すぎる理由を、産官学の立場から解説したい【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(7)
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  • 2021.06.09
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任天堂の「資料館計画」が天才的すぎる理由を、産官学の立場から解説したい【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(7)

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任天堂IP戦略の要としての「聖地化」

このように、資料館はゲーム好きなら妄想が止まらなくなる施設だが、ここには任天堂と京都の「聖地化」に向けた合理的な思惑が見て取れる。

まず任天堂が近年、明らかに力を入れているのがIP戦略だ。近年、ゲーム開発費が年々高騰しており、SIEワールドワイド・スタジオ(SIEWWS)の元会長、ショーン・レイデンはゲームの開発費に約80億~150億円近くかかっていることを説明し、発売したゲームがある程度売れても、開発費を回収することも難しくなりつつあると指摘する。

そこで、一度作ったゲームの世界観を応用し、映画化やコミカライズ、またグッズ販売などで収益の積み増しを図ることが、ゲーム企業に近年問われるようになった。

事実、任天堂の古川社長は株主・投資家向けのリリースにて「任天堂IPに触れる人口の拡大」を基本戦略として掲げることを発表するなど、ゲームソフトやゲーム機に限らない手広くコンテンツビジネスを拡張している。その実績として、2019年に「Nintendo TOKYO」を、2021年3月には大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン内に「スーパー・ニンテンドー・ワールド」を作り上げた。変わり種ではLEGOと協力してアメリカ版ファミコン(NES)のレゴセットを販売するなど他社とのコラボにも意欲的だ。

『TitleMax』によれば任天堂のマリオブランドはこれまでに約3兆6000億円の収益(マルチメディアで展開するキャラクターコンテンツの中では世界8位)を上げているが、うち関連グッズの販売によるものは4000億円ほど。今後はさらに伸びる期待が持てる。

任天堂の思惑は、この資料館とテーマパークをあわせて関西を「任天堂の聖地」として構築することで、任天堂のIPを家庭内だけでなく外の世界にも根付かせることだ。

USJのあるユニバーサルシティ駅から小倉駅までは早くて1時間半程度で到着するため、1日目はUSJで思い切り遊び、2日目は資料館でじっくり鑑賞という計画も組める。また任天堂ブランドではないが、下京区の任天堂旧本社ビルをホテルとして改装する計画もあり、聖地巡礼の宿泊地にもってこいだ。

特に外国のゲームファンからのグッズ販売や入場費の収益はかなり期待できるといえるだろう。

次ページ:ポストコロナ時代の京都再生への期待

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