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コロナ禍だからこそできること 森山未來・満島ひかりらの協力を得て生まれた梅田哲也 イン 別府『O滞』【連載】「ビジネス」としての地域×アート。BEPPU PROJECT解体新書(11)
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  • 2021.01.21
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コロナ禍だからこそできること 森山未來・満島ひかりらの協力を得て生まれた梅田哲也 イン 別府『O滞』【連載】「ビジネス」としての地域×アート。BEPPU PROJECT解体新書(11)

Photo by Yuko AMANO

過去の連載はこちら

構成:田島怜子(BEPPU PROJECT)

山出淳也

NPO法人 BEPPU PROJECT 代表理事 / アーティスト

国内外でのアーティストとしての活動を経て、2005年に地域や多様な団体との連携による国際展開催を目指しBEPPU PROJECTを立ち上げる。別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」総合プロデューサー(2009、2012、2015年)、「国東半島芸術祭」総合ディレクター(2014年)、「in BEPPU」総合プロデューサー(2016年~)、文化庁 第14期~16期文化政策部会 文化審議会委員、グッドデザイン賞審査委員・フォーカス・イシューディレクター (2019年~)。
平成20年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(芸術振興部門)。

「想像力の源泉を枯れさせない」

2020年8月15日に大分合同新聞に掲載した広告

2020年、これまでの価値感を見つめ直し、それを延長していくことの是非について思い悩んだ人は少なくないでしょう。

我々の活動する大分県別府市においては、観光地としてこれまで当たり前だと思っていた「人に来てもらう」ということが悪であるようにも感じられ、オンラインの取り組みや密にならないあり方を試行錯誤してきました。

BEPPU PROJECTも去年5月にはリモートワークを実施し、その後も状況を鑑みて会合や会食、移動の機会を慎重に選びながら今を迎えています。

一体この状況がいつまで続くのか、もしも自分が感染してしまったらどれだけの人に迷惑をかけることになるのだろうかと不安が膨らみ、いつからか考えても答えの出ない問題について考えることを止め、目の前のやるべきことに集中しながら日々を過ごしてきたように感じています。

しかし、その生活の中で自分自身に大きく欠落してしまったものに気づきました。

それは想像力です。

イノベーションは「こんなことができたらいいな」「こんな未来があったら素敵だな」と、想像することから始まります。「鳥のように空を飛んでみたい」という願いが、何世代にもわたって引き継がれた末に飛行機が発明されたように、その発端には便利さの追求だけでなく、もっと根源的な衝動もあるのかもしれません。

アーティストは効率や経済効果にとらわれず、自由な想像力で世界や社会を感じ、その作品を通じて人間にとって大切だと思うことを発信し続けています。それを見た我々は、観念や常識から解き放たれた、異なる角度からの視点や自由なものの見方に気づかされるのです。

アーティストは課題を解決するのではなく、我々が当たり前だと思っているこの世界に対して問題を提起します。アーティストが社会に直接的に働きかけることはなくても、その作品は人が人らしく生きていくための栄養になり得ると信じています。

僕らは2020年8月15日の終戦の日に、地元の大分合同新聞に「想像力の源泉を枯れさせない」というキャッチコピーを大きく掲げた広告を出稿しました。

この広告は、僕らが何を大切にしているかを地域の方々に伝えるとともに、この状況においても活動を続けるための指針となるもので、スタッフたちと丁寧に言葉を紡いでいきました。

この広告を出したことで、これまで10年間の活動をご支援いただいた皆さまに感謝を伝えるとともに、この火を絶やさずに更なる一歩を踏み出そうという決意を共有し、新たなスタートが切れたように感じています。

どのような状況であっても、その状況に適したやり方を見つけて、必ず展覧会を開催しよう

2020年度、個展形式の芸術祭『in BEPPU』ではアーティストの梅田哲也さんを招聘しています。

梅田哲也さん Photo by Bea Borgers

梅田さんには2年前(2018年)に芸術祭への参加を打診し、会期1年前には彼の代表的な作風とも言える大規模なインスタレーション作品を含む展覧会を構想していました。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大し、生活や価値観が大きく変化するのを感じ、2020年3月に方向性を見直すことにしました。

そこで僕らは大切なことを1つ共有しました。

それは、どのような状況であっても、その状況に適したやり方を見つけて、必ず展覧会を開催しようということです。

この連載の8回目に、「アートに今、何ができるのか、それを発明しようと思います」と書きました。「発明」とまでは言えないかもしれませんが、今年の『in BEPPU』の大きなチャレンジは「場所や時間の概念から自由になる」ということです。2020年から、オンラインでの会議や打ち合わせが当たり前になり、旅行やワークショップなど、さまざまな体験も得られるようになってきました。全国各地の芸術祭も、今年はオンライン開催に踏み切った例が多く見られました。

しかし、『in BEPPU』はリアルな場所での体験を大きな方針として掲げています。オンラインという手法のみを選択するということはありませんでした。

次ページ:新たな芸術祭の発明

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