FINDERS

元・三木道三が手がけたソフトウェア、写真から音楽を生成する「PhotoMusic2.0」
  • CULTURE
  • 2018.06.22
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • はてブ!

元・三木道三が手がけたソフトウェア、写真から音楽を生成する「PhotoMusic2.0」

「写真から音楽を作るソフトを開発してみました。俺は音楽生成のアルゴリズムを考案して、全てのビートを作成しました。音楽が好きな人 レゲエが好きな人アートが好きな人 AIに注目してる人 三木道三死んだと思ってた人 俺の新しい挑戦を応援してくれる人などなど、はリツイートして下さい!」という目を疑ってしまうツイートを見かけたのは、今年2月頃。

驚くことに、写真から音楽を生成するソフト「PhotoMusic2.0」をリリースしたのは、日本のレゲエ史上初のミリオンセラーとなった「Lifetime Respect」を手掛けた三木道三。90年代から日本のレゲエ・シーンを盛り上げてきた彼は、現在はDOZAN11と改名して音楽活動の他にソフトウェアの開発にも携わっていた。

初めて対面するDOZAN11は、喋りだしたら止まらない謎の怪紳士という印象。対話を続けていくと、自らの探究心によって自然と体が動いてしまう生粋のアーティストということが伺いしれた。レゲエという枠組みだけに収まらない、今までと違ったジャンルへの挑戦について詳細を聞いた。

聞き手・文:高岡謙太郎 写真:寺沢美遊

写真から「音楽を作る体験」をしてもらいたい

―― まず、どういった経緯があってPhotoMusicを作られましたか?

DOZAN11:昔、弟がソフト販売の会社に勤めていた時に、色を解析するソフトを作って企業に結構売れたらしいんです。弟とは兄弟ですから興味や関心が似ていて、そういうの俺もやりたいよ、という話を前からしていました。で、彼が写真の色から音楽を作るソフトを作りたいと相談をしてきたので、よしやろう、となって始めました。色の研究を更に進めていた弟がソフトの基本となるアイデアを出して、音楽生成は僕が膨らませました。それとプログラムをしてくれる方がいて3人で作りました。

―― 仕組みとしては、写真から音楽のシーケンスを作っていくかたちですよね?

DOZAN11:簡単に言うと、写真がシーケンスソフトのMIDI画面のようになるんですよ。横軸が時間で、色がMIDIノートになって楽器が割り当てられます。写真をソフトに入れるとモザイク状に解析されて、モザイクが7色に割り振られて、色のひとつひとつに楽器を割り当てる。デフォルトの割り当てパターンは、暖色は前に感じて寒色は後ろに感じるという色彩遠近法と、オーケストラの配置を参考にしています。前に来る赤はビオラで、緑や青はフルートやリコーダーという感じで。これらは自分で変更出来ます。

DOZAN11:このソフトは、一部の人だけ持っている“共感覚”という、音に色がついて見えたりする知覚現象があって、それも参考にしたんです。また、弟の最初のアイデアはアンビエントミュージック的でビートがなかったので、ポップス的じゃなかった。そこで僕がプリセット用のビートを作って、演奏方法のアレンジを工夫したりして意見交換しながら進めました。

―― ユーザー層はどんなところを想定しましたか?

DOZAN11:まず最初の想定は、ビジュアルアーティストや写真家さん。写真家さんって、良い写真をいっぱい撮って、展示ではスライドショーになるらしいんですけど、そこで無音はしんどいじゃないですか。適切な音楽を見つけてくるのはDJや音響さんなどのプロじゃないと難しいし、また誰か他のクリエイターの音楽作品が混ざってしまうと、写真家一人の創造物や著作物ではなくなってしまう。自分で音楽を作れればいいんですけれど、音楽を作るのはすごく難しい。だから、ある程度プリセットで音楽に生成されるようにして、その限られた選択肢の中で、音楽の構造が分からない人に写真を土台にして音楽を作るという経験をしてほしいと思いました。最初、僕自身も音楽の構造を分からずに音楽をやっていたのが、だんだんだん分かって出来るようになってくるのが楽しかったので。

人がよりクリエイティブになれるテクノロジーを目指す

―― ソフトを公開した際の反響も大きかったですよね。

DOZAN11:俗に言う“ちょっとバズった”という状況でしたね(笑)。もともと近年のテクノロジーに対して思うところがあって。 iPhone 登場からガラッと色々変わったでしょう? 未来が来たというようなムードになって、これはすごいぞ!便利だぞ!と。ただ「アプリだけで何でも出来ちゃったら、色んな仕事を駆逐してしまうやん!」と思ったんです。アプリの登場で、音楽関係のハードウェアがかなり要らなくなりましたからね。「アプリを使う方は安くなるけど、それらを売ってた人は仕事を失って、音楽を買うお金もなくなるやん」とか、「これってデフレの要因にもなってるんじゃないか」とか考えるようになって。AI(人工知能)に対しても危機感を持っている人もいますよね。機械に仕事を奪われたらいきなり転身できないですからね。

テクノロジーの開発者っていうのは、人を楽チンにさせる競争してるわけじゃないですか。昔、脱穀作業をするための千歯扱きという道具があって。その当時は夫を失った後家さんが担う仕事だったんですが、その道具が登場した時は(仕事を奪うので)後家殺しと呼ばれていました。つまり技術の進歩はそういうことの繰り返しじゃないですか。

テクノロジーの競争は、軍事目的か人を便利にさせていく競争が多い。そして人間は楽になると衰えるじゃないですか。たとえば、ケータイで電話番号を登録できるようになってから自分の番号以外は覚えなくなったでしょ? それで脳が劣化したと思わないけれど、僕は人の能力を奪うテクノロジーではなく、教育を補完するパートナーになってクリエイティブになるテクノロジーがどんどん生まれていって欲しい。

そして、一人でひたすら勉強できるようになればいい。ただ、一人で全部出来るわけではないから、教師やコーチは勉強方法の最適解を見つけてセッションの相手になればいい。未来のテクノロジーのファンとしては、そんな風に学習しやすい状況がテクノロジーで出来ればいいなと思う。普段からそんなことを考えているので、僕らのソフトは音楽作成も教育ソフトとしてもまだまだの段階ですけど、ポップスの基本構造が見えるようにしてユーザーが使用してるうちに理解出来たらいいなという想いでデザインしました。

―― なるほど。写真を好きな人が音楽を理解するためのソフトとしても使えるわけですね。

DOZAN11:最初はブラックボックス化して「写真を読み込む→音楽が生成される」という流れだけにしようかとも思っていたんですけれど、写真家さん達にモニタリングしてもらった結果、もっと自分で操作したいという意見が多くて、より仕組みが見えて音楽のアレンジに関与出来るようにしていきました。本人の撮った写真には才能と想いが入ってるから、この写真にこの音楽は合わないという違和感を覚えることができる。その違和感から離れる作業として、メロディや音源を変えて音楽を作る作業を体験してもらう。元々ある曲からマッチングさせるのではなく、色と楽器のマッチングを選んで楽曲を生成するんです。

―― レゲエの人がテクノロジーを使った作品を発表するのは珍しく思えますが。

Dozan11:いやいや、レゲエアーティストのテクノロジーへの影響は大きいんじゃないですかね。過剰なエフェクトを掛ける手法のダブを発明したキング・タビーしかり。元々レゲエは最先端だったんですよ。 

リハビリの末に「教科書作り」に向かう

―― DOZAN11さんは日本語のレゲエをインディペンデントから普及させた功績は大きいですが、どういった経緯で音楽を始めたんですか?

DOZAN11:レゲエは友人の車から流れていたのを聴いたのが最初です。25年以上前です。その後、日本語のも知って、自分にも出来ると思って始めました。でもバンドがやりたかったわけでもなく芸能人になりたかったわけでもなく、レゲエだったからやれると思ったしやりたかった。7インチのレコードの裏面にあるインストに合わせて歌えばいいだけだったから、相対音感があって歌詞を書く素養さえあれば出来た。僕は相対音感もあやふやでしたけど(笑)。子供の頃から喋るのが好きで、レゲエは会話のようにBPMに合わせて喋っていたら歌が出来る感じでもあるので、デビュー前からずっとコードもキーもよく分からずにやっていました。

インディーズデビューの経緯は、その前にLAからラスベガスに旅する途中で交通事故に遭って大怪我をしてしまったんです。医者に「このケースだと8割死んでるから」と言われ、いつ死ぬか分からないもんなんだと思って、音楽活動を加速させようと思いました。そして松葉杖のままジャマイカに寄ったら、デビューさせてくれたプロデューサーさんに出会ってキャリアが始まりました。

ただ、その数年後、Lifetimeの後の全国ツアーの頃には、足が曲がらないし肩は上がらないしあちこち痛い。これはやばい、手術し直したりちゃんと体を治したい、ということもあって一度歌手活動を引退して。その直後、ブラジルに行ったらまた激しい腰痛で、2カ月ぐらいブラジルで寝たきりみたいになってました。その後、何年もアチコチ体調が悪くなるので、おかしいと思って色々訪ねて回ると、ブラジルで2人、日本で1人の霊能力者に、「生き霊が憑いている」と言われました。僕には見えないのでよくわからないんですけどお祓いしたりしましたね。 

―― ブラジルには何をしに?

DOZAN11:横浜でワールドカップのブラジル優勝の試合を見て感動して行ったんですが、手術をやり直したら筋肉が細くなるから、それに備えるためにブラジルで筋トレを毎日しようと思ってました。しかし急にガンガンしたら腰に激痛が走って動けなくなって、医者に行ったらヘルニアだと言われました。通っていた理学療法の先生から、ロナウドが膝靭帯手術とリハビリで彼を復活させたドクターと一緒にリハビリ施設を作ったと聞いて、一度帰国してまた行き直して、そこに3カ月通いました。リハビリはマイナスから普通に戻す作業ですが、ブラジルでリハビリをしていたら、ポルトガル語も覚えられるしサッカーもサンバもある。体を治しながら他の学習ができるから。リハビリだけじゃつまらないし……。ロナウドにも一回会えましたよ(笑)。

―― それから体調は良くなったんですか?

DOZAN11:今は時間が経ってまたガタガタです(笑)。ブラジルの次に、イチロー選手がトレーニングしていた鳥取のトレーニング施設に通って、それで足、腰、肩はかなり整えられました。体のケガは完治する場合だけじゃないですし、生き霊のせいか知らないですが、逆流性食道炎や自律神経の不調やら色んなことが時期をまたいで起こってましたから、体調が悪い時期が多かったですね。さてもう一回ステージに立とうかなというのも何回かそれで阻まれました。

―― 体調のせいで音楽活動が出来ていなかったんですね?

DOZAN11:他の人が歌う曲はずっと作ってますよ。で、作詞やプロデュースなど他人の作品を作るようになって、曲を作るにもスタジオ作業でももっと音楽理論を分かってないといけないと思って勉強するようになったんですよ。そこで学んだことがこのソフトにも活かされています。

僕はロジカルだけど頭が硬くて、勉強しようと思い立ってから、まず「自分のための教科書作り」に興味がいっちゃうんです。 例えば、コード進行っていうモノが、どういうモノかも分からなかったんですけれど、何が分かっていないかが、分からないという状況だったので、表を作っていったんですよ。データを見せてあげましょうか。

1,000のシートを駆使するエクセルマニア

楽曲のコード進行を細かく色付けして分類したエクセルのシートを見せてくれた。DOZAN11のノートPCには、さまざまな情報を整理したシートが1,000近く保存されている。極度の勉強家なのだ。

―― すごいですね。エクセルのシートでここまで。デジタルでやってしまうところが。

DOZAN11:作詞も曲の分析も全部エクセルです。エクセル大好きなんですよ。パソコンの中を検索するとこれだけあります。

―― ざっと見た感じ1,000個はありますね。すごい量……。主に何があるんですか?

DOZAN11:異常な量でしょう(笑)。自分で歌うためのコード進行とか。毎回覚えやすくするために色を塗っているんですよ。パッと見て色々わかるでしょ。コードを7色に割り当てていて遠くから見てもわかる。 

―― いつごろからパソコンなどデジタル機器を使いこなすようになってきたんですか?

DOZAN11:2004年ぐらいにMacを使い出した頃からかな。

―― それは曲がヒットして新しいことをやってみたくなったからですか?

DOZAN11:ガハハハハ。それは全然関係ない(笑)。なんで笑っちゃうかと言うと、マスコミ関係の人は、曲のヒットによる人生の変動で〜〜とか分かりやすい物語を作りたがるから。結構カタにハメようとしてくるんですよね。お金や暮らしの話で、こういう物語にしたいんだろうなという。またか!と思ってガハハと笑ってしまうんですよ。ただ、表現に関しては色々喋りたいですけどね。

ブライアン・イーノのアプリに影響を受ける

―― では、DOZAN11さんが注目されているアーティストはいらっしゃいますか?

DOZAN11:有名なアーティストでソフトを作っている人では、Brian Enoという人がいるんです。アンビエントミュージックというジャンルで有名なアーティストで、iPhoneが出た時もすぐに音楽生成アプリを作っていて早かった。今はVRなどもやっているので、自分と比べるのはとてもとても......ただ、ポップスのアーティストでソフト開発を表現のひとつとして手掛けているのはBrian Enoか僕しか知らないですね(笑)。彼のはモロに作品で、僕のは作ったソフトを通じて他の人が作品を作るというものなのでちょっと違いますけど。

それと(メディアアーティストの)落合陽一さんは面白いなと思いますね。日本を良くしようと国単位でITを考えていて。他には(DJ/プロデューサーの)Diploのユニット、Major Lazerがレゲエをもう1回メインストリームに持ってきて、ダンスホールやルーツも電子系に刷新して素晴らしい。日本もジャマイカもちょっと停滞していたところをネクストレベルに持っていった。僕は彼らのことをEDMだと思っていたんですけれど、来日した時にライヴを観たら「レゲエ好きなやつは手を挙げろ!」と煽っていて、「彼らはレゲエだと思ってやっていたのか、なるほど!」と感銘を受けました。おかげでレゲエの枠組みが広がりましたね。もともと僕にとってレゲエの魅力は「新しさ」にあったんですよ。クラシック感ではなく、毎回新譜に刷新感があった。それがなくなっていったのは関心が薄れていった理由のひとつでしたね。 

おもむろにショルダーキーボードのように改造したMIDIコントローラーを取り出して、パソコンに接続して演奏を開始。手慣れた手付きで鼻歌を交えながら急遽ライヴを披露してくれた。インタビュー中にもかかわらずサービス精神旺盛だ。

ちなみに昨日は幕張メッセで建設職人甲子園という団体のイベントでライヴをしました。彼らのテーマ曲を作ったから。2002年で引退して2014年に復帰したんですが、時間が開いていたので世間の客層もジャンルも変わっていて、ステージの勘がなかなか戻らないからまだリハビリ中で色んなところでやってみています。

僕のInstagramを見てください。4ヶ国語でソフトを紹介しています。ソフトなので、日本語の歌より国境を越えやすいし、色んな国の人に届いて欲しいと思って、色々な言語の紹介動画を作ってみました。“世界のDOZAN11”になるのは難しくても、“世界のPhotoMusic”になることはできるかもしれない。僕が現地に行かなくても済むしね。

言語にはすごく興味があるんですが、難しいですね。エクセルで冠詞の表を作ったりしましたね。もう表にせずにいられないんですよ。 聖書にどういうバージョンが存在してるのかまとめたり、国ごとのアルファベットがどうなってるかとか、ひたすら作っちゃうんですよね。

―― 自分で歌詞を書いてるから作っちゃうんですかね。

DOZAN11:どうやったら教えられるかを考えていますね。教育や学習に興味あるんですよ。 

―― これだけファイルがあると次の制作に向けて色々活かせそうですね。

DOZAN11:そうですね〜。言語のソフトは後々、出来るもんならやりたいかな。でも、まずはPhotoMusicを次の段階にしたい。出来るならアプリ化したいですね。宣伝や開発費を考えてクラウンドファンディングを考えてもいいかもしれません。

この後も、レゲエからサンバやソカに音楽の興味が移った話から、作詞論、そして伊勢神宮でライヴを奉納した逸話などが続き、ノンストップで合計3時間近く会話が繰り広げられた。なにより、DOZAN11本人の常に新しい物事に興味を持ち続けるバイタリティと関心の幅の広さに驚かされた。まずは新境地での第一歩目となる作品が公開されたが、今後も予想しない活動で私たちを驚かせてくれるはずだ。


  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • はてブ!
  • kintone_plug-in
  • スターリンの葬送狂騒曲

SERIES

  • 遊ぶように働く
  • 世界の都市をパチリ
  • オランダ発スロージャーナリズム
  • 旅する技術屋
  • Road to 2020 スポーツ×テックがもたらす未来
  • FINDERSビジネス法律相談所