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「中国だから仕方ないよね」では済まされない。激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(6)
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  • 2020.07.15
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「中国だから仕方ないよね」では済まされない。激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(6)

激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?

「中国の経済や政治体制が崩壊するかも?」というのはここ20年ぐらい、特に日本のかなり保守的な言論グループの中から何度も言われてきたことですが、結局実現せずにきました。

しかし、ここ二週間ぐらい、もっと冷静な中国ウォッチャーや、国際政治学者さんなんかが、「本気で中国崩壊するかも?」というようなことをSNSで発信しているのを見るようになりました。

直接のきっかけは6月末に香港での反体制活動を禁じる「香港国家安全維持法」が公布されたことに関して欧米社会との対立が深まっていることですが、それ以前から、いわゆる中国の「戦狼外交」と呼ばれる全方位的に喧嘩を売っていく態度がここ最近止まらなくなっており、ある種の「恫喝中毒」みたいになってしまっていることがあります。

米中の覇権争いの結果としての米中冷戦が始まって、「国際協調」的な路線をとにかく敵視するトランプ大統領の強引な「アメリカ・ファースト」方針に欧米諸国では反発を感じる人も多いこともあって、中国は以下の絵のように、普通にしてれば国際協調の中心になることすら可能なように見えた時期もありました。

確かに武漢市における当初の新型コロナウィルス感染拡大を習近平政権は隠蔽しようとしたわけですが、民主主義社会でもこの種の問題に必ずしも機敏に対処できるわけではないことが全世界的に露呈してしまっている現在では、普通に謝って普通に振る舞っていれば、それほどの悪材料にはならなかったのではないかと思います。

新型コロナウィルスに対する学問研究的にもマスクや医療物資などの供給においても「普通に貢献」していれば、むしろものすごく株を上げるチャンスだったはず。

それが、火事場泥棒的に周辺諸国に軍事的圧力を加えまくったり、マスク供給と引き換えにファーウェイ製品を入れろと恫喝したり、「コロナウィルスはアメリカ由来だ」とか何言ってるんだコイツは的なことを言う外交官がいたり、感染対策に悪戦苦闘する各国政府を悪し様に批判したりしているうちに…。

いつの間にか、米中対立は決定的な制裁モードですし、カナダなどもかなり対中姿勢を悪化させており、アメリカほどではなかった欧州諸国もそれに続きつつあります。

新型コロナ禍が世界的に拡大していった当初、日本と中国が支援物資に漢詩を添付してワチャワチャと親善していた頃には、想像もできなかった状況になりつつあるわけですが、この状況下で、日本は国としてどういう態度を取っていくことで、この東アジアを中心とした世界の混乱を収めることができ、日本にとっての国益をちゃんと確保することができるのか?という記事を書きます。

そのためには、この種の問題が混乱に繋がる根本原因としての「制度間の利ザヤ取り問題」という視点を考えてみる必要があります。

倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。まずは「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、時にはカルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングプロジェクトのかたわら、「個人の人生戦略コンサルティング」の中で、当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成や、ニートの社会再参加、元小学校教員がはじめた塾がキャンセル待ちが続出する大盛況となるなど、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。アマゾンKDPより「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」、星海社新書より『21世紀の薩長同盟を結べ』、晶文社より『日本がアメリカに勝つ方法』発売中。

1:20世紀からのリベラル派の病=自国政府のどんな小さな問題も許せないが、強烈に抑圧的な外国はむしろ賛美してしまう問題

「制度間の利ザヤ取り」とは、中国ウォッチャーのジャーナリスト、福島香織さんが翻訳された、何清漣『中国の大プロパガンダ』(扶桑社)という本に出てくる概念です。

「利ザヤ取り(アービトラージ取引)」とは、例えば同じ株式の東京市場とニューヨーク市場での価格に差があれば、その間を右から左に転売することで利益を得ることです。

つまり「制度間の利ザヤ取り」とは、徹底的に言論の自由が抑圧されている外国社会における美化された理想を持ってきて、果てしなく自国の政権をぶん殴り続ける言論と政治運動だと言えるでしょう。

単純にいうと、

「先進国内のリベラル派は、自国内の政権のものすごく細かい問題までを徹底的に嫌う一方で 、外国政府の抑圧的な体制には無頓着であり、むしろ称賛する傾向すらある」

という問題です。

これは歴史的にありとあらゆるところで、特に20世紀以降繰り返されてきた問題で、日本においても中国の文化大革命を称賛したり、北朝鮮が地上の楽園だと喧伝したりするムーブメントに大新聞が積極的に関わっていた時代がありましたね。

考えてみてほしいのですが、20世紀後半頃の中国や北朝鮮なら、「ムカつく自国政府を思う存分叩くためのネタ」としてユートピア幻想を引き受けてもらっても「無害」だったかもしれません(実際にその国に住んでいる人たちにとっては災厄そのものでしょうが)。

しかし現代は、すでに今後10年か20年で世界一の経済大国になるかもしれない国と、実際に核ミサイルを配備していつでも発射できる国になってしまっているわけですよね。

そうなると、先進国内のリベラル派による「甘やかし」が、「自由と民主主義世界」の存続を根底的に脅かしてしまう可能性が出てくるわけです。

「自由主義社会の中の自国政府を叩きたいために、別の強烈に抑圧的な体制の外国政府を称賛する」を繰り返しているうちに、その「強烈に抑圧的な体制の政府」自体が、「自由主義社会」全体を凌駕し、征服しにくる可能性すら出てきているわけですからね。

日本におけるリベラル派は香港問題が激化するにいたって“やっと”非難の声を出すようにはなりましたが、すぐに「まあ、安倍だって似たようなことやっているしな」というような論調に戻ってしまいます。

しかし、普通に考えてネット上に安倍氏への批判(だけでなく悪口雑言)が溢れまくっている我が国と、習近平に似ているオジサンが普通に歌う無害な動画とか、習近平に似ているくまのプーさんの画像をアップするだけでアカウントが止められる国と、

「似たようなことが起きている」

と考えるのはかなり無理があります。

もちろん、そのような「笑える」ネット規制だけでなく、政府に批判的な言論をした知識人が連行されたり行方不明になったり、不審死したりという例も中国では普通にあります。

私たちはそういう問題に「なれっこ」になっていて、「中国ならまあ仕方ないね」で済ませてきているわけですが、中国が今まさに世界最大の経済になるかならないかという時代には、その「なれっこ」にしてしまっている問題をそのままにしておくわけにはいかなくなってくるわけですよね。

国家間は、特に国境を接している隣国の場合常に「パワーバランス」的な競争関係にあるために、「まあ、習近平のやってることも安倍がやっていることも同じようなものだろう」という主張はかなり「制度間の利ザヤ取り」的問題があるわけですね。

そういう「アンフェア」な態度は逆に、対抗の必要性から、保守派の過激化や国家間の問題とはあまり関係がない中国人個人へのヘイト意識の醸成などに繋がってしまいます。

つまり、21世紀において国際平和のために私たちが考えなくてはいけないことは、

・「党派性で敵・味方を分けて、敵には果てしなく厳しく、味方には果てしなく甘い」

態度を取ることではなくて、

・「ちゃんと同じ秤(はかり)で測られるようなフェアネスを意識すること」

なんですね。

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