中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
1997年に博報堂に入社し、CC局(コーポレートコミュニケーション局=現PR戦略局)に配属され企業のPR業務を担当。2001年に退社した後、無職、フリーライターや『TV Bros.』のフリー編集者、企業のPR業務下請け業などを経てウェブ編集者に。『NEWSポストセブン』などをはじめ、さまざまなネットニュースサイトの編集に携わる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)など。
始まりはいつもテレビ報道や街頭インタビュー
この20年、「伝説のネット局地的人気者」といった存在が多数登場した。多くはテレビに映った一般人がネットで注目されるというパターンなのだが、その後テレビ画面のキャプチャー画面が次々と拡散し、AA(アスキーアート=文字を組み合わせて作った絵)も登場することとなる。
私がもっとも好きなのが「レベル男」である。2006年11月11日に発売されたPS3を買うために東京・有楽町のビックカメラに並んでいたエスパー伊東似の男性のことである。午前4時、1000人が商品を買おうと押し寄せ、大混乱の怒号が飛び交う中、この男性が「もう、物売るってレベルじゃねーぞ、オイ!」と怒りを露わに。日本テレビのニュースでは「物売るっていうレベルじゃねぇぞ!」のテロップがつき、この男性は全国デビュー。以後、「○○ってレベルじゃねぇぞ!」はネット流行語の一つとなった。
テレビの報道や街頭インタビューはこの手のネタの宝庫であり、一体どこの誰がこうした画像を収集し、律儀にネットにばら撒いているのか。それをやっているヤツに話を聞きたいほどである。モチベーションがわからねぇってレベルじゃねぇよ!
見た目と言動のギャップのある人物も人気者になる。毎度iPhoneの新作が出るたびにショップに並ぶ「ビッグウェーブ男」がその筆頭だろう。サングラス、モヒカン刈り、刺青という『北斗の拳』か『マッドマックス』に出てきそうな見た目なのだが、「乗るしかないですね、このビッグウェーブに」という名言を出し、一気にネット上のスターとなった。しかも、iPhoneでまず電話をかけた相手は地元・栃木県に住む自身の祖母だという点も「おばあちゃん思いの優しい青年」といった捉えられ方をされた。彼は「BUTCH」という名前でタレント活動を行っている。
そして、もう一人が奇遇なのだが、この男性も栃木の男性だ。「日本一影が薄い県」に認定されたことから栃木で街頭インタビューをしたところ、金髪リーゼントの男性が「ないんだな、それが」と満面の笑顔で答えたのだ。しかも彼はかなりのイケメンで、一気にネット民の心をわしづかみにした。「それがないんだな」でなく「ないんだな、それが」と強調する話法は実に説得力があり胸キュンポイントである。