CULTURE | 2020/07/03

「物売るってレベルじゃねぇぞ!」ネットの歴史に名を刻んだ局地的人気者をここで一旦振り返ろう【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(13)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
1997年に博報堂に入社し、CC局(コーポレート...

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「チャリで来た」とプリクラに書いた理由

「チャリで来た」の4人組の少年も人気がある。あどけない表情を浮かべる中学1年生のヤンキー風少年がメンチを切りながらプリクラに向かってガッツポーズを取っている。そこに「チャリで来た」と脈絡のない言葉が書かれているのだ。「オレらの友情」といった言葉だったがここまで話題にはならなかったと思われる。この画像はネットの公共財産的になり、いつしか「この4人+何らかのアホな一言」で大喜利をするような文化も誕生した。右上の少年はそれから10年後、テレビに登場し、なぜ「チャリで来た」という言葉を書いたのかを解説したが、特に書くことがなかったからだという。この「チャリで来た」の一言とガッツポーズは芸能人も真似するようになった。

「チェーンソー男」もしみじみとする人物である。彼は長年YouTuberをやっていたのだが、ある時代引きで宅配便を注文。しかし、父親が「そんなの聞いてない」と支払いを拒否。これに男は激怒し、宅配業者を脅す動画をYouTubeに公開したのだ。上半身裸で太鼓腹でチェーンソーを動かす動画を公開し、そして実際に宅配業者まで詰めかける様子も公開。結果的に彼は逮捕され、後に謝罪動画を出すこととなる。この時の「YouTuberなめんなよ!」というセリフは一瞬だけネットをざわめかせた。

こうした実況系で人々をイライラさせたのは、ゲーム実況をする男性だ。オイルマッチという火がつけにくい器具を使ってタバコに火を点けようとするのだがなかなかつかない。ところが、なぜかゴミ箱に火のついたオイルマッチを捨ててしまい、そこから火災発生。段ボールで火を消そうとしたり、桶に入れた少量の水で火を消そうとするものの、結局火事は広がってしまった。対応がいちいち悪手になっており、「お前、そこでそれやるかよ!」といった気持ちにさせる動画である。この件は海外のニュースでも取り上げられ、アナウンサーが苦笑する一幕もあった。

こうして書いていると際限なくなってくるが、コンビニに強盗が押し入った際、「僕、アルバイトォォ!」と叫んでカウンターを軽やかに越えた55歳男性も人気になったし、インドネシアに住む2歳のニコチン中毒の子供があまりにもでっぷりとしていてタバコの煙を吐き出す様が「アニキ!」的で人気となった。

色々と逸材は登場したものの、初期の頃に仰天したのは「ネットアイドル」を名乗る「てるみ」である(1999年)。当時中学生と思われる彼女は自分自身の美貌に自信があるのか自撮り写真を多数公開。その中でもなぜか「紅イモチップス」を加えた写真は局地的な人気を誇った。雑誌でも特集されるほか、2008年、23歳になった時にはコスプレをするてるみが発掘され、本人かどうかの確認が盛り上がったことがある。

ネットで人気になるタイプの人物はどこかスキがあったり、哀愁が漂うほか、「我が道を行く」感がプンプン感じられる場合が多い。決して他人に忖度することなく、自分の感情を一気に出す。そこにお仕着せ的な側面はなく、周りがどう思おうが自分のやりたいことをする。そんなところに私は惹かれていたのかもしれない(ってこんなこと真面目に書いてどうするんだ)。


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