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コロナ後の経済再開の最善策は日本の製造現場が知っている【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(4)
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  • 2020.05.18
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コロナ後の経済再開の最善策は日本の製造現場が知っている【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(4)

Photo by Shutterstock

今回の記事では、コロナ時代に経済再開するための最善策は、「日本の製造業では当たり前の“ある手法”」を応用することであるという話をします。

同時に、そうやって「自分たちの得意技」を利用してコロナ対策をしていくことで、日本はもう一度、「立場を超えて助け合える社会」へと変化していけるはずだ…という話もします。

前回記事の「ドラゴンボールで理解する、経済再開のために必要なコロナ対策」では、一刻もはやく経済再開し、もう二度と経済と止めずに済むようにする基本的な考え方として、日本の専門家会議が出しているこの図から、

5月1日に出た専門家会議の資料「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」より

今後

オレンジ色の線(クラスター対策で対処できる線)>新規感染者数の青い線

が成り立つ状態を維持することが大事なのだ、という話をしました。

つまりクラスター対策で処理できる能力の方が新規感染者数よりも大きい状態を維持できる見通しがたてば、経済が再開できるわけですね。

その視点から前回は、

私たちが工夫すべきことその1

・オレンジ色の線をもっと上にあげるにはどうしたらいいか?

→動きの遅い日本政府にクラスター対策能力(接触者追跡能力と検査キャパシティの増強)を働きかけることが大事だ

という話をしました。今回は、

私たちが工夫すべきことその2

・経済的ダメージを最小にしながら青い線を下げ続けるにはどうしたらいいか?

の具体策を話します。

倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。まずは「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、時にはカルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングプロジェクトのかたわら、「個人の人生戦略コンサルティング」の中で、当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成や、ニートの社会再参加、元小学校教員がはじめた塾がキャンセル待ちが続出する大盛況となるなど、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。アマゾンKDPより「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」、星海社新書より『21世紀の薩長同盟を結べ』、晶文社より『日本がアメリカに勝つ方法』発売中。

1:青い線を最小コストで下げ続けるために私たちにできること

では、「橙色の線を上げる」のではなく、「青い線を下げる」方法について私たちにできることを考えてみましょう。

「経済を止めてでもハンマーでぶっ叩いて感染者数を下げる」段階から「ダンスwithコロナ」の時代に移行するにあたって一番大事な数字はR(再生算数)です。

Rというのは一人の感染者が平均的に何人に感染させる状況にあるか?という指標で、単純に言うと「一人の感染者から芋づる式に増えていくならR>1だし、そこから減っていって収束するならR<1」です。

ドイツのメルケル首相が経済再開にあたってこの「R<1」がいかに大事か(1.1程度でも1より上ならかなり短期間ですぐにまた危機的状況になる)…という話をしていましたが、「ダンスwithコロナ」がちゃんと続けられてもう一回「ハンマー」しないで済むには、どうやってこのR<1を最小のコストで実現し続けられるか…が大事になってくるわけですね。

今完全に「シャットアウト」できたように見える国(中華文明圏や韓国、ニュージーランドなど)も、結局油断するとすぐに再発して大騒ぎになっていますし、そもそも永久に鎖国し続けることもできないので、結局は似たような状況に遅かれ早かれなります。

つまりここからは、

「できるだけ最小の社会的・経済的コストで、R<1を維持するゲーム」

をどの国も共通してプレイすることになるんですよ。

私は、こういう分野は本来非常に「日本の強み」を活かしやすい分野だと感じています。

そのために必要なのは、「インテリ世界とマイルドヤンキー世界のコラボレーション」を徹底的に活用していくことです。

日本において、いまだに世界一といって差し支えない数少ない分野に製造業の現場のブラッシュアップ文化があると思いますが、最近公開されたやたら写真撮られた私のウェブインタビューで述べたように、製造業って単にロボットみたいに言われたことをこなすだけの仕事じゃなくて、これはこれで非常にクリエイティブな知的作用が現場の隅々まで必要な分野なんですよね。

テスラ・モーターズのイーロン・マスクが、「自社工場において製造は全部自動化しようと思ってたけどやっぱり人の手を使うべき部分はまだまだ沢山あると気づいた。人間は過小評価されていた」…と語っていて話題になっていましたが、それは単に現在の「製造機械」には苦手なタイプの作業があるから手作業が必要だって話じゃないんですね。

日進月歩の製造技術を、この工程にはこのタイミングで採用すべき、とか、まだこの工程は古いタイプのやり方を維持すべきとか、そういう細部の意図決定を「現場に近い人」の工夫を大量に乗せていくことによってブラッシュアップし続ける必要があるわけです。

アメリカみたいに、アカデミックに物凄く勉強できる人だけの工夫しか吸い上げらない社会の仕組みだと実現できないことがあるわけですね。

そのためには、「インテリ世界とマイルドヤンキー世界のコラボレーション」が大事で、日本が未だに維持している強みの源泉がここにあります。

2:世界一の日本の製造業の考え方を「新しい生活様式」に応用する

今回、読者のあなたに覚えて帰ってほしい日本の製造業の標語が2つあって、それは
・品質は工程で作り込む
・気遣い作業をゼロにする
です。

たとえば、ある製造ラインで100回に1個不良品が出る(実際の製造工程でこんな比率だったら大問題ですがとりあえずたとえ話として聞いてください)とする。欧米人はそれを「統計的」にとらえて、まあそれぐらいの「確率」で問題は起きるだろう…と考える。

しかし日本は禅の精神というか、「美しい花がある、花の美しさという様なものはない」の国なので、「その99回の作業と、1回の作業では、全く違った現象が起きているはずだ」と考えます。

だからその「1回の真実の瞬間」がなぜ起きるのかを検証し、その「真因」を潰す…ということをやるんですね。

そこで、ビジネスパーソンはみんな知ってる「なぜ?と五回問う」プロセスが始まります。

たとえば、配線の組み合わせをミスしたり、あるいはちゃんと「完全にハメる」ところまで行かなかった不良があったとする。

その時に、「そりゃ1%の確率でそういうこともあるよね」的に「検査で弾けばいい」で終わらせるのではなくて、たとえば

・「そもそも間違った場所にはハマらない設計にする」
・「完全にハマりきってないとすぐに外れてしまう設計にする」

…といった対策が取られます。

そうすることで、その「100回に1回のミスが起きる “真実の瞬間”」がそもそも起きないような「工程」に作り込むんですね。

そうすれば「気遣い作業」をしなくてもよいようになります。

「ちゃんと正しいところに完全にハメられてるかな?」と「気遣い」する必要がなく、意識をそこに向けなくても不良が発生しないように「設計」段階で考えておくわけですね。

こういうのは、単に「アカデミックなインテリ」だけじゃなくて、「マイルドヤンキー的現場人材」との間の密な相互作用が必要であり、欧米みたいに前者をエンパワーしすぎて後者が本当に無力感の渦に叩き込まれている社会にはできない可能性が眠っているわけです。

R<1を最小のコストで実現する

ためには、こういう「学問的知性と現場的人材の連動」を実現し、どんどん細部まで「新しい生活様式」をブラッシュアップしていく作業が必要になるでしょう。

…というのも、ウィルスが伝播する時というのは明らかにそういう「真実の瞬間」があるからです。

たまたま隣にいても喋ることもなく飛沫感染対策も接触感染対策もしておけば感染ったりしません。

感染したとすれば、「一緒にいた」ことが原因ではなくて、「伝染る瞬間」に「伝染る行動」をしたことが原因だということになります。

経済を止めて「感染者数をハンマーでぶっ叩いて減らす」段階には出来るだけリスクを避けて「そもそも会わない・外出しない」対策をする必要がありましたが、それだと人々の生活が不自由になりますし経済も止まってしまいます。

大事なのは「そもそも会わない・外出しない」的にザツに一緒くたな対処をするのではなく、

「会う必要があるなら会ってもいい」「外出する必要があるなら外出してもいい」
けれども、
「ウィルスが伝播する真実の瞬間」だけを選び取って、「それがそもそも起きづらくするクセ付け(行動変容)」を出来るだけローコストな形で工夫していくこと
です。

これって大変なことのようですが、真夏に物凄い高温多湿になる気候で生きてきた日本人が、毎日風呂入るとかご飯の前に手洗いするとか玄関で靴を脱ぐとかいう「習慣」を発達させてきたプロセスそのものだと考えたら、そんな大変なことじゃないはずです。

それに、日本は数少ない「スーパーで売っている生卵をそのまま食べられる国」らしいですが、そうやって日常に溶け込んで「気遣い作業」が不要になっている高度なシステムのブラッシュアップを、つまり「日本人のいつものやり方」をやるだけだ…と言えるでしょう。

そのためには、日進月歩で進歩するこのウィルスに対する「学問知」と、「現場レベルの人々の知恵」を常に徹底的に相互作用して「新しい生活様式」を磨き上げていくことが必要になります。

日本の専門家会議の人たちは、「自分たちが提示した “新しい生活様式”は単なる例であって、日本中の知恵を集めてもっと磨き上げていってほしい」というメッセージを折に触れて出しています。

彼らを孤立無援にしてしまうことなく、「元気玉」的サポートを、「日本の賢い現場」レベルから「学問知」の世界へちゃんと返していってあげましょう。

(次ページ:3:ウィルスに対する学問知と、現場的人材との相互作用を!)

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