CULTURE | 2024/04/01

キース・ヘリングの反戦・反核活動をたどり、平和と自由へのメッセージを紐解く展覧会「Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか」開催

中村キース・ヘリング美術館(山梨県・小淵沢)にて6月1日(土)から2025年5月18日(日)

FINDERS編集部

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中村キース・ヘリング美術館(山梨県・小淵沢)は、来年戦後80年を迎える今、キース・ヘリングの反戦・反核を訴える取り組みを辿り、作品に込められた「平和」と「自由」へのメッセージを、改めて現代の視点から紐解く展覧会「Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか」(期間:2024年6月1日(土)から2025年5月18日(日))を開催する。

1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト、キース・ヘリング(1958-1990)は、明るく軽快な作風で知られる一方、彼の作品の根底には社会を鋭く洞察する眼差しがあったと言われている。ヘリングは、時にユーモラスに、時に辛辣に社会を描写し、平和や自由へのメッセージを送り続けた。

本展の副題は、ヘリングが広島平和記念資料館を訪れた際に日記に残した「誰が再び望むのだろうか?誰に対して?(原文:Who could ever want this to happen again? To anyone?)」という言葉に着想を得ている。一瞬で街を焼け野原にした原子爆弾。今なお世界には1万2000にのぼる核弾頭が存在し、絶え間なく戦争が続くなか、来年には第二次世界大戦の終結から80年の節目を迎えようとしている。本展は、ヘリングの眼差しを通して世界が抱える課題に向き合い、現代における「平和」や「自由」の意味について考えることを目的としている。

反戦・反核を訴える作品群

1980年代、激化する冷戦を背景に、世界はかつてない数の核を保有していた。ヘリングは、アートを媒体に多様な手法で社会に向けて反戦・反核のメッセージを投げかけた。 ニューヨークで行われた史上最大規模といわれる反核デモのために制作し、セントラルパークで無料配布を行った「核放棄のためのポスター」(1982年)、チェックポイント・チャーリー博物館の依頼を受けベルリンの壁に描いた壁画(1986年)のドキュメント写真、ウィリアム・S・バロウズ(1914-1997)の10篇の詩に併せてヘリングが混沌とした世界を描き出した版画シリーズ《アポカリプス》(1988年)といった作品群からは、核の脅威にさらされる一人の若者の恐怖が垣間見えると同時に、不安や絶望に抗い未来への警告を試みたアーティストの姿が伺える。

平和・自由へのメッセージ

ヘリングが生涯一貫して希求した「平和」と「自由」という主題には、アメリカの歴史や80年代当時の世界情勢が色濃く反映されている。本展では、1987年に東京都多摩市の複合文化施設「パルテノン多摩」の開館に際して招聘されたヘリングが、500人の子どもたちと制作した《平和I-IV》、《マイ・タウン》、《サウンド・ツリー》など、子どもたちのために制作された数々に作品を通して、制作から40年近くの年月が過ぎようとする現在、これらの作品に込められたメッセージについて考える場としたい。

キース・ヘリングと広島

1988年、ヘリングは、広島で行われた原爆養護ホーム建設のためのチャリティコンサート「HIROSHIMA ’88」のメインイメージを手がけたことをきっかけに、広島を訪れた。原爆ドームや広島平和記念資料館へ足を運び、戦争の惨さを目の当たりにしたヘリングは、平和への思いを形にすべく壁画制作を申し出た。しかし、このプロジェクトは実現することはなかったが、本展では、調査のなされてこなかったヘリングの広島訪問の経緯を辿り、その足跡を紹介する。


開催概要

Keith Haring: Into 2025 誰がそれをのぞむのか

会期:2024年6月1日(土)~2025年5月18日(日)
開館時間:9:00-17:00 (最終入館16:30)
休館日:なし ※冬季休館 2025年2月3日(月)~2月16日(日)
観覧料:大人1,500円/学生800円/障がい者手帳をお持ちの方600円/15歳以下無料
主催:中村キース・ヘリング美術館
後援:米国大使館、山梨県、山梨県教育委員会、北杜市、北杜市教育委員会
協力:キース・ヘリング財団、シティキッズ財団、シミックホールディングス株式会社

公式サイト:https://www.nakamura-haring.com/