BUSINESS | 2024/11/19

通信とAIの未来はどう進化していくのか?
通信各社が推進するAIのネットワーク活用の現在地と今後の展望

RISING2024が開催

文・取材・写真:カトウワタル(FINDERS編集部)

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超知性ネットワーキングに関する分野横断型研究会 (RISING2024) とは?

現在、機械学習などのAI関連技術を活用したネットワーキングに関する研究開発は活発化しており、国内外でさまざまな研究成果が発表されている。

そんな中、より高度な「Super-Intelligent Networking」を目指した研究について、有線/無線,上位/下位の枠を超えて議論する場の提供を目的に、通信ソサイエティの第三種研究会として2020年9月に設立されたのが、電子情報通信学会・通信ソサエティ会長の中尾彰宏教授(東京大学大学院工学系研究科)が委員長を務める19研専が横断的に協力して運営する 「超知性ネットワーキングに関する分野横断型研究会」 である。学生や企業の研究者を主役としてAIと情報通信の融合に向けた研究を加速することが想定されており数多くのパネル発表を短時間で実施しフィードバックを行うと同時に産学連携を加速する取組である。

本研究会では、通信ソサイエティのさまざまな通信技術分野を横断した活動に加え、ITU主催の全世界対象イベント5G AI/ML Global Challengeの日本開催分の運営を担当するなど、電子情報通信学会の枠を超えた活動も行っている。

今回開催された 「RISING2024」 は、第三種研究会になって4回目の研究会として開催されたもので、KDDI、NTT、ソフトバンクなど通信各社の技術責任者が揃って登壇、各社の取り組みについて講演するとともに、「通信とAIの将来」 をテーマにパネルディスカッションにて議論を交わした。

KDDI、NTT、Softbank ~通信各社によるプレゼンテーション

最初に登壇したのは、株式会社KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長、兼、先端技術研究所所長の小西 聡氏『通信とAIの融合によって高まるBeyond 5G/6G時代の「つなぐチカラ」』 と題し、講演を行った。

小西氏は、KDDIビジョン2030に向けAIと通信技術の進化を通じて社会をより良くする取り組み、特にネットワーク運用技術の向上のためにAIを活用し、自立型ネットワークの実現を目指していることが紹介された。

また今後の社会通信インフラの構築には業界全体で、若い力が必要性について語るととともに、「一緒にやっていきましょう。」と会場に呼びかけた。

KDDI総合研究所の小西聡氏

続いて登壇したのは、日本電信電話株式会社 NTTネットワークサービスシステム研究所 所長の安川正祥氏『NTTにおける、AIを活用したネットワークオペレーション技術開発チャレンジについて』 と題し、講演を行った。

KDDIの小西氏と同様に、安川氏もNTTがネットワークの知的化と自動化を進めるため、AI技術を積極的に活用する方針であることが明かされた。また具体的には、信頼性向上のための異常検知や故障復旧にAIを導入し、生成AIを活用したオペレーションの自動化を推進することで、強靱なネットワークの構築を目指すとともに、NTTが進めているIOWN構想への適用も今後進めていくと語った。

NTTネットワークサービスシステム研究所の安川正祥氏

そして最後に登場したのは、ソフトバンク株式会社 執行役員 先端技術研究所 所長 湧川隆次氏、『産業とAI-RAN』 と題し講演を行った。湧川氏もソフトバンクの技術開発とAI社会インフラに関する取り組みについて紹介。

特に、AIと通信の融合に焦点を当てた「AI-RAN」のコンセプトや、NVIDIAのGPU技術を活用したAI-RANの実現、自動運転の遠隔監視、6Gにおけるセンシング技術の活用などについて詳細に説明、ソフトバンクがAIを基盤とした社会インフラの構築を目指していることを強調した。

ソフトバンク先端技術研究所の湧川隆次氏

通信各社によるパネルディスカッション『通信とAIの将来』

通信各社の講演に続き、登壇者が再び登場、『通信とAIの将来』 と題し京都工芸繊維大学 情報工学・人間科学系 山本高至教授のモデレートによるパネルディスカッションが行われた。

中尾委員長の主眼は、学生が多く参加する学会にて、通信事業者で最先端の研究開発を推進している研究所長から招待講演とパネル議論で直接学生に、AIと通信の融合分野の重要性について語りかけていただくという狙いがあったという。

そのため、パネルディスカッションの冒頭でも京都工芸繊維大学の山本教授から、今回は普段呼べることが少ない各社の所長に来ていただいているので、技術的な話しではなく、戦略的な話しなど、ここでしか聞けないような質問を投げかけて欲しいという話があった。

KDDI、NTT、Softbank通信各社の研究所所長が出揃ったパネルディスカッション

その後学生からの「日本の給与体系は海外に比べると低い?」といった質問があり、各社とも優秀な人材には給与面も含め特別な制度があるが、高い成果が求められるなどハードルの高さなどが紹介された。

その中で、ソフトバンクの湧川氏からは、「日本のトップ企業でもグローバルではぜんぜん通用しない、プレイヤーとしては圧倒的に北米が強い。ただし、海外に行くことによって研究員としての勝ち筋はあるのでは?」と会場の学生たにち奮起を呼びかけた。また、NTTの安川氏も「自分の個性を磨き、自分の主張を通す意志の強さを持ち、世界を開拓する気概のある人と仕事がしたい。」と訴え、KDDIの小西氏は「苦労やそれを乗り越えた経験を積んで、自分で考えて行動できる人になってほしい。」と訴えつつ、「スキル的にも英語やファイナンス、アカウンティング、HRなどの知識があった方が良い。」とアドバイスを送った。

パネルディスカッション終了後は、企業紹介・交流セッションが行われたほか、会場では、ポスターセッションや企業紹介・交流セッション、ジュニア会員世代向けのAI-based Networkingジュニアチャレンジなどの取り組みが行われ、初日の開催後には会場をホテル札幌ガーデンパレスに移しての意見交換会も行われた。

本研究会では通信ソサイエティの様々な通信技術分野を横断した活動に加えて、本研究会(RISING 2024) は、電気通信に関する国際標準を策定するITU主催の全世界対象イベントにおいて、5G AI/ML Global Challengeの日本開催分の運営を担当するなど、今後も電子情報通信学会の枠を超え、通信ソサイエティのさまざまな通信技術分野を横断した活動を行っていくという。


超知性ネットワーキングに関する分野横断型研究会 (RISING)
https://www.ieice.org/cs/rising/jpn/

KDDI総合研究所
https://www.kddi-research.jp/

NTTネットワークサービスシステム研究所
https://www.rd.ntt/ns/

ソフトバンク 先端技術研究所
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/