CULTURE | 2025/09/21

東洋一の繁華街・歌舞伎町が再びアートで覚醒 「BENTEN 2 Art Night」 の開催が決定

歌舞伎町で行われる3日間の回遊型アートイベント

FINDERS編集部

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「都市の再野生化」をテーマに街を横断する夜の芸術体験

2024年に初開催され、国内外で注目を集めた回遊型アートイベント 「BENTEN 2024」 が、今年は「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」として11月1日(土)から3日(月・祝)まで歌舞伎町で開催される。東洋一の繁華街と呼ばれるこの街を舞台に、三夜連続でアーティストの作品やパフォーマンスが交錯する。

今回のテーマは「都市の再野生化」。再開発によって均質化が進む東京の中で、歌舞伎町は矛盾や混沌を抱え込みながらも独自のエネルギーを維持してきた。制度や管理の網目からこぼれ落ちる「野生」を、アートの実践を通じて可視化しようという試みである。

メインアーティストには、ジェンダーや老い、生死をテーマに国際的に活躍するやなぎみわが参加する。王城ビルでは木製投てき機を用いた「ムネーメー」を展示、新宿歌舞伎町能舞台では神話を翻案した特別公演「黄泉平坂~排斥と遊戯~」を上演する。また同会場では写真やスケッチ、能楽映像を通じて神話を再構築する「黄泉平坂 よもつひらさか」も展開される予定だ。

王城ビル
「ムネーメー」
髑髏を投げ続ける、木製の「投てき機」は、ハムレットの墓掘りのシーンのための道具であり、実際に2019年のやなぎの個展「神話機械」のパフォーマンスで使用された。ムネーメーは、ギリシャ神話の三姉妹のひとりで「記憶」を司る女神。他の2人の姉妹は、それぞれアオイデー「歌」、メレテー「演出」である。
「黄泉平坂 ~排斥と遊戯~」
たわわに桃の実った黄泉平坂(よもつひらさか)で、女神と男神が対峙する舞台である。『古事記』によれば、火の神を生んだ火傷がもとで亡くなった女神、イザナミを追い、あの世に向かった男神、イザナギは、変わり果てた妻の姿に驚いて逃げ出してしまい、追っ手を払うため桃の実を投げつけたという。万物を産み、最後に火や鉱物を産み出した女神は、死の国へ追いやられることになる。黄泉平坂は、男神と女神を、それぞれ生死の領域に分かつ場所となった。 この奇妙な「神話」が誰によって語られたのかは不明だが、今回の舞台では、排斥された女神イザナミが、本来の姿を現して男神に対する姿が見どころとなる。男神イザナギを下掛宝生流ワキの名手である安田登が、これまでにイザナミを演じてきた琵琶奏者、金沢霞と、特異な身体表現者である渡邉尚が、2人で女神イザナミを演じる。
「黄泉平坂 よもつひらさか」
深夜の果樹園を大型カメラで写し取った写真作品「女神と男神が桜の木の下で分かれる」をはじめ、女神イザナミの新たな姿を描いたスケッチや立体作品、能舞台上では、能楽師による実演の映像が展示される。

さらに王城ビルでは批評家・多木浩二の思考とアーカイブを交差させる演劇的展示「生きられた新宿『状況』劇場」が開催され、唐組や稲荷卓央らが出演する。宇川直宏が主宰するDOMMUNEは「DOMMUNE KABUKICHO」をオープンし、連日ライブ配信やパフォーマンスを繰り広げる。東京砂漠では会田誠ゆかりのアートサロン「芸術公民館」が期間限定で復活し、世代やジャンルを超えた交流の場を提供する。

生きられた新宿 「状況」 劇場 
1975年にMoMAで開催された「新宿」展を起点に、3会場で展開される「生きられた新宿」展の一会場として、批評家・多木浩二の考察と新宿で生起したアクションのアーカイブを交差させる演劇的展示を行う。唐十郎率いる「状況劇場」のタイトルを再解釈し、唐組『紙芝居の絵の町で』で用いられたセットを中心に構成。パフォーマンス的空間を創出しつつ、新宿という都市を状況の舞台と捉え、その劇場性を可視化する。
DOMMUNE KABUKICHO
現代日本のアートシーンの中でもエクストリームな存在感を放つ宇川直宏が、ソーソャルストリームの時代を見据えた新たな文化の発信拠点として、2010年に開局させた日本初のライブストリーミングスタジオ「DOMMUNE」!! 宇川はスタジオで日々産み出される番組の、撮影行為、配信行為、記録行為を、自らの"現在美術作品"と位置づけ、ライフログアートを全うしている。開局以来、世界各国から様々なゲストが来日のたびに出演する唯一無二の文化プラットフォームとして存在し続けるそんなDOMMUNEが、渋谷PARCO9Fの基地「SUPERDOMMUNE」から拠点を飛び出し、17箇所目のサテライトスタジオ「DOMMUNE KABUKICHO」を昨年に続き王城ビルの地下一階にOPEN!!! 「BENTEN 2025」会期中連日ここに籠城し、サイトスペシフィック・コアなプログラムの数々をお見舞いする!!!!!
限定復活「芸術公民館」
「芸術公民館」は、現在「東京砂漠」が営業している場所において2010年から2012年にかけて、現代美術作家の会田誠が主に若手芸術家に向けて構えたアートサロン・バーでした。時を経て2025年現在に至るまで、会田と縁のある有志が営業形態を変えながら芸術公民館の灯火を受け継いでいます。 このたび、BENTEN2にあわせて期間限定で芸術公民館を復活いたします。若手作家からベテランまで、さらには有象無象の美術関係者とともに、歌舞伎町のディープなスポットをお楽しみください。

主催は歌舞伎町アートナイト実行委員会。キュレーションはChim↑Pom from Smappa!Groupを中心に行われ、関連企画「歌舞伎超祭2025」「歌舞伎町EXPANDED」「生きられた新宿」と連動する。アーツカウンシル東京の助成を受け、新宿区や観光振興協会も後援に名を連ねる。

夜の街を歩き、空間を行き来しながら体験するこのイベントは、完成された作品以上に都市・身体・制度の境界で生まれる相互作用そのものを観客に投げかける。歌舞伎町の混沌を再び「野生」として立ち上げる「BENTEN 2」は、都市と芸術の関係をあらためて問い直す三夜になるだろう。


BENTEN 2 Art Night Kabukicho
会期:2025年11月1日(土) 15:00–5:00/2日(日) 15:00–5:00/3日(月・祝) 15:00–23:00
会場:歌舞伎町一帯(王城ビル/新宿歌舞伎町能舞台/デカメロン/WHITEHOUSE/東京砂漠)
主催:歌舞伎町アートナイト実行委員会
後援:新宿区、一般社団法人新宿観光振興協会
協賛:歌舞伎町商店街振興組合、遠山正道
助成:アーツカウンシル東京 「芸術文化魅力創出助成」
連携イベント: 「歌舞伎超祭2025」 「歌舞伎町EXPANDED」 「生きられた新宿」

公式サイト
http://benten-kabukicho.com

Instagram
https://www.instagram.com/benten2024_kabukicho

チケット: ArtSticker にて前売中
https://artsticker.app/events/94416