EVENT | 2022/04/15

誰もが憧れるプロスポーツチームだけど、売上高は中小企業並み?応援よりも投資が救うスポーツビジネスのこれから

聞き手・文・構成:赤井大祐(FINDERS編集部)
夏季・冬季が連続で続いた狂乱のオリンピックシーズンも終わりを告げ、...

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ホットなマーケットに、ホットなモノを落としたら、そりゃホットな反応がくる

Photo by Tim Trad on Unsplash

―― 先程お話に出た「エンタメ度」ですが、これはチームの強さやスター選手の存在なんかとはまた別の話になるのでしょうか?

平地:おっしゃるとおりです。スポーツにおける「エンタメ」というと試合そのものについてばかり目がいきますが、例えば会場で流れている音楽に一貫性があるか、照明をうまく活用できているかといったことも非常に重要です。要はワクワクするような非日常感を演出できているかどうかです。

―― 毎年全米で最も視聴率を稼ぐと言われる、NFLのスーパーボウルのハーフタイムショーはその極北かもしれませんね。

平地:いくらスター選手がいても、怪我をしてしまったら試合には出られないわけです。それに次の年も必ず成績が良いとは限らないし、別のチームへ移籍する可能性だってある。選手はもちろん大事なんですが、選手を軸にプロモーションを考えていくと絶対にどこかでしんどくなってしまう。

僕らは「戦えるチーム」と言っているんですが、強くなくても試合ごとにしっかりと力を出して、観に来た人たちが最後まで応援したくなるようなチームであることも「エンタメ」度合いという指標としてひとつ重要だと思います。

――チームの強さがある種のビジネスに直結するのはスポーツならではですが、強さとは別に「応援したくなるチーム」が価値を生むのはSNSやYouTubeにおける個人の在り方と似ているかもしれません。

平地:ただ、エンタメ化できてるようなクラブって実際強かったりもするんですよ。クラブ全体で頑張ってるから集客も出来てるしスポンサーも取れている。だからチームに対して予算もかけられる好循環にあります。Bリーグで言えば千葉ジェッツは試合前の演出や、SNSの活用が非常に上手い。会場にいるときはジェッツの試合が楽しいし、会場の外でもSNSを通じてジェッツというチームを感じられる。代表レベルのスター選手が多く集まっているのでレベルが高いというのもありますが、試合以外の部分でも丁寧な運用をしているからこそと感じます。

あとは琉球ゴールデンキングス。演出もアメリカに近いようなレベルですし、比較的他の地域との行き来がしづらい沖縄にあって、入場収入や物販の売り上げはリーグの中でも上位。そしてやっぱりチームも強く、今シーズンは2位のジェッツを抑えてリーグ首位を独走しています。他にも川崎ブレイブサンダース、宇都宮ブレックスなんかも「エンタメ化」をうまくできているように感じます。

―― 例えばInstagramではサッカーのUEFA Champions Leagueが9140万人、バスケットボールのNBAは6537万人ものフォロワーを抱えており、毎日のように試合のハイライトなどをアップし、比較的個人が強いSNSにおいて存在感を放っています。試合会場の外にも魅力を伝えるSNSは言うまでもなく欠かせない要素ですね。

平地:そうですね。映像の質で言えば、もちろん僕らが撮影するときはプロのクオリティで映しますが、全部が全部そうである必要はなくて、それこそiPhoneでも十分きれいに撮れちゃうわけじゃないですか。

スポーツって「モメンタム」と言われる勢いや盛り上がりがすごく重要で、試合に勝った直後に、「勝ちました!今日活躍した◯◯選手の最高のプレーをご覧ください!」ってツイートしたら、やっぱり盛り上がるんですよ。でも、いくらクオリティの高い映像でもそれを翌日に投稿したってたいして盛り上がらないわけです。

―― いまでこそウェブコンテンツの花形とも言える「実況」の文化をスポーツはずっとやってきたわけですもんね。

平地:だからスポーツとSNSってほんとうに相性しかないはずです。しかもクラブチームのSNSをフォローしてくれてる人たちってファンなんですよ。チームや所属選手が好きでフォローしてるんです。ホットなマーケットに、ホットなモノを落としたら、そりゃホットな反応がくるでしょっていう話ですよ。だってみんな好きなんだから。

でも、SNSはあくまでコンテンツを配信するためのものであって、そういったコンテンツを作るためにも、先程お話をした現場におけるエンタメとしての魅力が大切なんです。これも業界全体でまだまだ改善していける部分だと思っています。

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