理由5:知られていない中国製ワクチンの種類の多さ
中国製の新型コロナワクチンといえば、シノファーム、シノバック製が有名だが、実はそれだけではない。ワクチンは日本と同様中国国内でも多くの会社が開発を進めており、いくつかはすでに承認済みで接種も進められている
シノファーム、シノバック社製ワクチンは、従来のインフルエンザワクチンと同製法の不活化ワクチンだが、このタイプは他にも数社が提供しており、すでに市場に出回っている。また、アストラゼネカ社製と同製法のアデノウイルスベクターワクチンも承認され、カンシノバイオ社から提供されている。
加えて、1月28日にmRNAワクチンを開発している中国のワクチンメーカー「ワルバックス」は第3相臨床試験に必要な参加者をほとんど集め、薬事承認前の最終段階に駒を進めている。
これまで、一部地域ではワクチン接種者に対して抽選でiPhoneが当たるキャンペーンなども展開しつつ接種を進めた結果、必要回数のワクチン接種完了者は2021年末には12億人を突破。
医療関係者によると、シノファーム、シノバック社製ワクチンでも3回の接種で抗体レベルが上昇するとされており、現在は各地で3回目のブースター接種が進行中である。ちなみに西側メディアでは中国製ワクチンの効果を疑問視する報道も複数見受けられるが、一方でファイザー、モデルナ製の3回目接種であっても現在のオミクロン株感染を完全にシャットアウトできているわけではなく、どのワクチンであっても「抗体が増えるなど一定の効果は見込めるが、それで十分だと結論づけるにはまだ時間が必要」という状況にあるように感じる。
また、新型コロナの治療には、漢方薬に代表される中国医学と西洋医学を統合した治療が患者の症状を緩和させ、改善につながっているとの報道もある。伝統的な中国医学により普段から免疫力を高め、感染率を低下させる方法だ。
今後の中国の新型コロナ治療方策は、中国製ワクチンの3回目接種・中国製mRNAワクチンの登場・中国医学のバックアップが大きな柱になると思われる。
「中国だから」と何もかも無視してしまうのももったいない
中国はゼロコロナ政策をいつまで続けるのか。2月の北京五輪そして3月に開かれる「全人代」と呼ばれる中国共産党の重要会議は大きなターニングポイントとなり、中国国内のワクチン接種率や周辺諸国の状況も考慮に入れながら段階的に緩めていくのではないかと思われる。
新型コロナにより、私達は多くのことを学んだ。ゲノム解析によりワクチン製造のスピードは飛躍的に向上したが、それでも臨床試験をクリアするには1年くらいかかってしまうことも認知されるようになった。新たな未知のウイルスと戦っていくには、検査・隔離・封鎖といった地道な取り組みが必要だが、中国はリソースを惜しげもなく投入してこれらの作業を徹底してきた。
これらはものすごく貴重なデータである。中国が嫌いだからといって、彼らが身を持って公表してくれたデータを「ねつ造だ」と片付けるのは簡単だが、それではあまりにもったいない。
世界的な感染症の大流行は今後も起こる可能性がある。テクノロジーを駆使して一人も逃さない中国の姿勢をよく観察すれば、将来また出現するかもしれない新たなウイルスの脅威に今度はもっと賢く対応できるはずである。