CULTURE | 2022/01/11

令和になってもコロナ禍でもバカにされ続ける「氷河期こどおじ」の絶望【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(31)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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コロナ関連補助の大盤振る舞いができたのに、なぜ氷河期世代を救えなかったのか

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こうした社会分析的な見立ては一旦置いといて、なぜ、「子供部屋おじさん」がここまでバカにされるのかについてここでは考察してみたい。私自身、「子供部屋おじさん」の誕生には、現在の40代の「氷河期世代」が影響していると思っている。

私は1973年生まれで、この年は第二次ベビーブーム世代では最多の209万人が生まれている。大学受験は厳しかったし、就活期にさしかかる1994年には「氷河期世代」が流行語大賞で審査員特選造語賞に選ばれた。大卒者であっても、数年前のバブル入社組が入れたであろういわゆる「一流企業」への内定獲得はかなり難しかった。

「あと数年早く生まれていれば……」といった怨嗟が我々世代にはあったが、本当に就職活動は厳しかった。早稲田や慶應といった就職に強い大学の学生でも「一流企業」への就職は難しかったのである。

そういったところから我々の世代は正社員になることが難しく、結果的に非正規雇用が激増した。こうした働き方の人はキャリアを積み重ねるのは難しく、その後我々世代の正社員が少なかったことから発生した年下世代の正規雇用の増加により、我々世代は約10歳年下の正社員たちから顎で使われる立場になった。

もう、こうなったら挽回はできない。我々世代は一生非正規雇用・使われる人生に突入である。

幸いなことに、私も含めた同世代はインターネットの波が2000年代前半~中盤に訪れたため、この時に30歳前後の好奇心旺盛だった者の中には、インターネットの波に乗れ、ある程度の成功を収めることができた例もある。ただし、それは藤田晋氏や堀江貴文氏といった一部の起業家とベンチャー社員だけである。あとは、津田大介氏や私のような、「ネットに活路を見出した」モノカキ界隈の者もある程度はその波に乗ることができた。

一方、「大企業に入れば安泰!」と言われて家電メーカーに入るなどした同世代は、40代に入ってからは早期退職を促されるだけだ。結局、自分よりも年下で人数が少ない世代にこき使われるだけの人生に突入したのが「子供部屋おじさん」世代の人々なのだ。

さて、こうした人々を今後救うことはできるのだろうか?

まぁ、無理だろう。学校を卒業してからもう約30年が経過した。そんな人間がこれから類まれなる才能を発揮し、大金を稼ぐのはほぼ無理だ。多くの我々世代は「子供部屋おじさん」と揶揄され続け、何らかの犯罪を犯した場合は「無職の男(57)」などと書かれて終わりである。

とことん思うのが、人口のボリューム世代である第二次ベビーブーム世代をもう少し多く正規雇用の従業員にするような資金補助を時の政府がすべきだった、ということである。この2年間にコロナ関連の補助として使われた莫大な税金を目の当たりにして「こんな大盤振る舞いができるなら、その少しでも氷河期救済に使ってくれよ!」と思った人は少なくないのではなかろうか。

このカネを約30年前に使っていれば、今、もう少しまともな日本になっていたのではないかとしみじみと思う。自分の感覚から言えば、我々世代は案外優秀な人間が多かったと思う。それは、“優秀率”なるものがあった場合、それは世代によって異なるものではなく、各世代においてそれなりの割合がいるわけだから、我々のような人口の多い世代に投資しておけば、「優秀人口」の絶対数が多くなっていたはずからだ。

さぁ、政府よ。票田である高齢者を優遇しまくったこの30年間、我々を見捨てたツケはいずれくるよ。そして日本は衰退国まっしぐら。正直、「見捨てられた世代」である自分としては「ざまーみろ、バカ日本」としか思えない。後はなんとかしてくださいね。


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