社会課題に関心はあるが取り組みの遅さに失望
―― なるほど。では先ほどおっしゃっていた「上の世代に対する強い疑念、諦観を持っている」についてはどのような傾向があるのでしょうか。
上坂:日本は他国よりも若者の数が少なく、企業は上の世代向けに商品を作るし政治も同様。自分たちの発信で世界が変わるような経験はほとんどの人がしていないんです。当社が行ったインタビューでも、SDGsに関する質問をした際、以下のようなコメントがあったことが印象的でした。
「関心はあるのだが、日本の社会問題への取り組みの遅さに失望を超えて無関心になってきた。自分が動こうとするとストレスで病みそうになるので、何もやる気が起きなくなってしまう」(男性・17歳)
「SDGsという言葉が、メディアであまりにも記号的に消費されることに疲れてしまった。(SDGsに)興味がない人に対しても、『そりゃ興味持たないよね、普通だよね』と思う」(男性・22歳)
この2人は比較的社会問題に興味を持っている層の発言です。上の世代に対する諦観もあるし、自分たちの世代にも成功体験がない。だから他人と違ってもそれが当たり前であり、考えを強要することはしないのだと思います。
「他人と違って当たり前」「大人世代に対する疑念・諦観」
上坂:ここまでの傾向は私自身も共感できることばかりだったのですが、自分は違うかなと思ったのは「SNSで人を傷つけるべきじゃない」という価値観です。調査では「他人を不快にさせないよう気をつけることよりも、自分自身をどのように表現するか自由であることのほうが重要」という質問にイエスと答えたのが日本だと42%だったんですが、これは平均の59%から見ても大きく下回ります。「知人に対する批判を書いたことがある」という質問にイエスと答えたのも5%で、世界平均と比べてこれまた非常に低い結果でした。
またインタビューにおいて「SNSにおける正しい/かっこいい振る舞いとは何だと思いますか?」という質問をしたところ、こんな答えが返ってきました。
「反論しないこと。人の考えは違うものだから、わかり合うことなんて無理なので、批判には反応しないほうが賢いと思う」(女性・17歳)
「ネガティブな投稿を見ると嫌な気持ちになるので、SNSでは見る人の気持ちを考えて、誰も傷つけないよう綺麗な投稿を並べるべきだと思う」(女性・19歳)
これはZ世代が思春期のほとんどをスマホ、SNSとともに過ごしてきた世代であり、数多くの炎上や誹謗中傷を見てきたことも関係しているかもしれません。
―― 「他人を不快にさせないよう〜」の質問に関しては、各国の文化の違いとして「どんな行動・言動が不快とされるか」の水準が違うことも関係していそうですね。日本は比較的高い水準を求められるというか。
上坂:そうだと思います。外国だと、そうした風潮に対して若者たちがノーと言える環境に少しずつなっていると思うのですが、日本は若者の力が弱くて全然そうなっていない。大きな抑圧を感じている世代なのだなと感じました。
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