LIFE STYLE | 2021/09/10

中国の「一帯一路」アフガニスタン編〜鉱物資源の宝庫アフガンと中国を結ぶ交易ルートは?古代シルクロードと一帯一路の違い【連載】中国ウォッチ・ナウ!(1)

Photo by Shutterstock
今や世界情勢を語る上で欠かせない中国という存在。
日本人にとって近くて遠...

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辺境の地域「ワハーン回廊」

かつては交易が盛んで、マルコ・ポーロや『西遊記』三蔵法師のモデルとなった玄奘三蔵も通ったと伝えられるアフガニスタン側のシルクロードはどうなっているのか?

アフガニスタンと中国をつなぐ細長いエリアは「ワハーン回廊」と呼ばれており、ワフジール峠が中国との接続ポイントとなっているが、現在は中国軍により封鎖されているため、いわば「袋小路」の状態である。孤立されたゆえに訪れる人も少なく辺境の地域となっている。

ワハーン回廊をドローン撮影した動画

このワハーン回廊、古代は旅人の回廊として利用されており、1883年までは独立した公国だった。その後大英帝国とロシア帝国の協定で北側と南側の川を互いの国境とし、その中間地帯をアフガニスタンの一部とすることで、両勢力の緩衝地帯としての役割を果たすようになった。

その後、ワハーン回廊内にはキルギスの羊飼いたちが騒乱から逃げ込んでくる。毛沢東時代になると中国はこのキャラバンルートを封鎖する。現在、このワハーン回廊の居住者はワハン人約1万2,000人、キルギス人遊牧民約1,100人。このエリアは中央アジアで最もフォトジェニックな場所と言われている通り景色が非常に美しくアフガニスタンの騒乱とは一線を画しているが、アヘン密輸ルートとなった過去もあり、今もアヘンが「大量に」使用されていて中毒者が多数存在する。

中国にとってアフガンの地下資源はとても魅力的だ。とはいえ国境封鎖を解除してアヘンを持ち込まれたら困る。また、新疆ウイグル自治区と接するエリアでテロリストが侵入されるのも困る。こうした点は報道されているのでご存知の方も多いと思うが、上述の背景を知ると彼らの気持ちもよく分かる。

中国―アフガン貨物列車「中亜班列」

ワハーン回廊の開放が期待できない中、2019年に運行開始したのが「中亜班列」と呼ばれるルートの一部である、中国―アフガン貨物列車。

中国―アフガン貨物列車。中国国営テレビ局CGTN YouTubeチャンネルによる報道

この中国―アフガン貨物列車は、中国とアフガニスタンを結ぶ初の鉄道貨物サービスで両国の貿易促進のための重要なルート。アフガニスタンのハイーラターンから上海の隣にある江蘇省の南通市までをつなぐ路線で、カザフスタンを迂回するルートとはいえわずか14日で目的地まで到着することになり大きな話題を呼んだ。

今後の展開は?

他にもイランからアフガニスタンを経由してキルギスの国境を通り中国に入る高速鉄道「五カ国鉄道回廊」や、ウズベキスタンとパキスタンを結ぶ鉄道プロジェクトなどが計画中だが、情勢や地形による難易度の高さから進捗は停滞している。しかし政権を掌握したタリバンはインフラ建設に前向きでパキスタンと中国を結ぶルートに加わることを望んでおり、状況次第ではプロジェクトが一気に進行する可能性もある。

鉱物資源の宝庫アフガニスタンの将来を左右する中国の一帯一路政策。周辺国と連携して古代シルクロードのように活発な交易ができる日は意外に早く来るのかもしれない。


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