CULTURE | 2021/09/07

野球ファンとサッカーファンの舌戦はネットの伝統芸? 究極の不毛な議論を論点整理してみた【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(27)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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松井vsイチローの議論に降臨した大谷翔平

とはいっても、同じスポーツであっても内ゲバは発生する。「松井秀喜派vsイチロー派」と「本田圭佑派vs香川慎司派」というものもあった。一体彼らが何を主張していたかを見てみよう。

【松井秀喜派の主張】

・イチローは単打が多過ぎる。MLBでは本塁打の方が重視されている
・松井はワールドシリーズ優勝を経験している
・しかも2009年のワールドシリーズではMVPを獲得している
・イチローはゴキブリのようにシャカシャカと走って内野安打を稼ぐゴキブリのような「ゴキロー」
・松井はMLB屈指の名門・ヤンキースの主軸で、イチローはより自由にプレイができるマリナーズ所属
・イチローは暗い。松井は明るい。記者対応も松井の方が感じがいい
・松井は名門・ヤンキース所属だがイチローは西海岸の注目されないマリナーズ所属である

【イチロー派の主張】

・松井はイチローのように首位打者を獲得したり、MLB史上に残る記録を残していない
・イチローは新人王とMVPを取っている
・松井は焼肉が好き過ぎる。記者を焼肉接待して提灯記事を書かせている
・松井はAVが好き過ぎる
・松井とイチロー、どちらが若手選手から尊敬されているかといえば圧倒的にイチローである

いずれもどうでもいい論争だが、今年はここに大谷が加わり、グチャグチャ状態になった。今年の大谷の活躍については、松井秀喜が持つMLB日本人最高本塁打数である31本を抜かれた時に松井派は「グヌヌヌ」と悔しがった。もはや「ワールドシリーズ優勝」「ワールドシリーズMVP」しか松井派には心の支えは残っていない。しかし、大谷派は「このシーズンをもって松井はヤンキースから放出されたよなw」と挑発の手を緩めない。

そして、サッカーにおける本田派vs香川派の不毛な主張も見てみよう。

【本田圭佑派の主張】

・本田はACミランの「10番」を背負った
・香川は単にアディダスの広告塔ということで、日本代表に呼ばれているだけ
・本田は海外の選手相手にもオラオラ感を出せる類まれなる日本人
・香川はイギリスの名門・マンチェスター・ユナイテッドで結果を出せていない

【香川慎司派の主張】

・本田は足が遅い
・香川の方が圧倒的に欧州リーグでの得点数は多い
・本田が所属したチームはミランを除き、ショボいチームばかり
・本田はミランでもたいして活躍していない
・2011-12年、ボルシア・ドルトムントがブンデスリーガで優勝した原動力の一人が香川

ここまで「サカ豚vs焼き豚」「イチロー派vs松井派」「本田派vs香川派」、そして大谷翔平に関する場外での罵り合いを見てきたが、改めてこれらを文字にしてみるとバカバカし過ぎる。

とはいっても、過去にも「ジャイアント馬場とアントニオ猪木はどちらが強いのか」といったテーマでプロレス雑誌の投書欄は盛り上がったし、プロレスファンにとっても永遠のテーマである。