文:赤井大祐(FINDERS編集部)
英・テックブランドのNothingは7月12日に、同ブランド2世代目にあたるスマートフォン「Phone(2)」を発表した。本稿では本機のスペックなどを紹介しつつも、キーノートで語られたNothingの思想・ブランドとしての側面についても触れていく。
と言っても「まず頑丈さが大切」
Phone(2)の見た目は第一世代にあたる「Phone(1)」からほとんど変化はない。Phone(1)時代からの大きな特徴である、背面のGlyphインターフェイスをアイコンに据えた強固なブランドを構築するためだとCEOのカール・ペイは語る。
Phone(1)はオウム、Phone(2)はタコがメインビジュアルに採用された。
ボディのフレームはアルミニウム。ディスプレイと背面にはゴリラガラスを採用。手に触れる部分にプラスチック素材は一切使われていない。特徴的な機能よりも「まず頑丈さが大切」であり、それこそが「良い経験をもたらす」とカールは強調する。
そうした基本は抑えたうえで、カールはやはり、現在のテック業界は「退屈」だと真っ向から批判。その一方で「Nothigはスマホとヘッドフォンしか作っていない」とユーザーから嘆息が漏れていることもちゃんと理解しており、しかしこのフェイズこそが「再びイノベーションを起こす」ために「重要な一歩」だと話す。
相変わらずのビッグマウスぶりではあるが、根拠や信頼性に欠けるかと言えばそうでもない。Nothingは第一号プロダクトとして、スケルトンボディを特徴とした完全ワイヤレスイヤホン「ear(1)」を2021年7月に発売したがその影響は大きかった。
JBLの「TUNE FLEX」(2022年10月発売)にはじまり、Apple傘下のBeats by Dr.Dreの「Beats Studio Buds+」(2023年6月発売)や、ファミリーマートが発売したFACETASM・落合宏理監修によるモバイル充電器「PD20W コンセント充電器」(2023年6月発売)など、わかりやすいまでにスケルトンデザインを取り入れたテック製品は増えている。
ear(1)
JBL TUNE FLEX
Beats Studio Buds+
PD20W コンセント充電器
特徴であるGlyphインターフェイスはスマホとの距離感を問い直す
Nothing Phoneシリーズの特徴であり、今回の「Phone(2)」においても特別な要素であるGlyphインターフェイスは通知の際に光るだけでなく、例えば直感的なタイマーとして機能したり、Uber Eatsの配達員があとどれぐらいで到着するか、といったことも線形ライトの点灯具合によって確認できるとカールは話す。
このGlyphインターフェイスが果たす役割は明確である。「スマートフォンの価値」ではなく、「生活の価値」を高めることにある。タイマーにしてもUberにしてもいちいちスマホの画面を見る必要がなくなるわけだが、なぜそれが重要なのか。我々はスマホの画面に触れた瞬間、TwitterやInstagram、YouTubeといった特に用事のないアプリを開き時間を浪費するからだ。私たちの体はこの10年ほどで「そうなってしまった」と誰もが身に沁みてわかっているだろう。
カールやNothingのスタッフたちは、今回のプレゼンを通して「意識的にスマートフォンを使うこと」を強く強調していた。大企業が提供するサービスを無意識・習慣的に使い続けるのではない。スマホは意図や目的のもと使うべきであり、それ以外のタイミングではできるだけ距離を置くべき、という思想だ。故にGlyphインターフェイスはユーザーとスマホを隔てる「ハードル」として設けられた。
ディスプレイは6.7インチ・2412*1080pxのOLED。フロントカメラは真ん中に位置するように設計された。1〜120Hzまで自動的に可変するアダプティブ・リフレッシュレート機能が搭載されたことで、常時表示ディスプレイでのスリープ状態、アクションゲームをプレイする際など、状況に応じてリフレッシュレートが変わることで電力消費を抑えるという。
背面は薄さを際立たせる3Dガラスを用い、レンズ周りには黒いベゼルを採用することでカメラを強調する高級感のあるデザインとなった。
プロセッサには、Snapdragon 8+ Gen 1を搭載。バッテリーは4500mAhから4700mAhに増やしたことで、パフォーマンスはPhone(1)から80%もアップ。アプリを開く速度も2倍になった。
カメラの進化も強調。リアカメラはソニーのIMX890センサーを搭載した、50MPのメインカメラと同じく 50MPの超広角カメラによるデュアル式。ソフトウェア面では、AdvancedHDR機能を搭載。同時に8枚の異なる露出のRAWデータを撮影し、それを統合することで、3倍ものデータ量を持つ、より忠実な写りを再現するということだ。
NothingOSも2.0にアップグレード。OSに対して真に「NothingのDNAを注入」するのはこれが初めてとのことで、モノクロ+赤による統一感のあるウィジェットを強調したデザインとなっている。
カールは、これまでのスマホのホーム画面はまるで「広告のためのキャンバスのようだった」と話す。確かにホーム画面はそれぞれのアプリが主張し合う、統一感のないごちゃごちゃとした空間になりがち。それをデザインによって整理することで、「アプリから権力の一部を取り除き、それを消費者に返す」のだという。ホーム画面はあくまでユーザーのものであるべきだし、Nothing OS2.0のインターフェイスはそのユーザーの良きパートナーであろう、というスタンスだ。
その他、ロック解除は顔認証、指紋認証の両方に対応。防水・防塵性能はIP54規格。デュアルSIMも対応だ。モデルはグレーとホワイトの2色に加え、メモリとストレージの組み合わせ及び価格は以下の通り。日本での予約開始日時はまだ発表されていない。
RAM8GB+ストレージ128GB 7万9800円
RAM12GB+ストレージ256GB 9万9800円
RAM12GB+ストレージ512GB 10万9800円
日本のスマホ市場は依然としてiPhoneの一強状態。シンプルで安定しており使いやすい。これ以上なにを求めようか。しかし、「SNS疲れ」「通知疲れ」といった問題も残る。あるとき、ふと自身の生活とスマートフォンの関係を今一度問い直したい、というタイミングがやってくるかもしれない。そんなとき、迷わず選ぶべきスマートフォンだろう。
画像は以下ウェブサイトから引用