CULTURE | 2023/03/29

実は一番身近な「世紀の大発明」!? ものづくりの歴史を紡ぐ「ティッシュペーパー」

連載「高橋晋平のアイデア分解入門」2回目となります。普段はおもちゃやゲーム、遊びを作り出す仕事をしてる私、高橋晋平が、身...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

連載「高橋晋平のアイデア分解入門」2回目となります。普段はおもちゃやゲーム、遊びを作り出す仕事をしてる私、高橋晋平が、身の回りにある物から、アイデアや工夫、発想の種を見つけ出そうという試みです。

今回のテーマは「ティッシュペーパー」。私たちが生活の中でもっとも多く触れる「紙」かもしれません。少しずつ読み解いていくことで、ものづくりに関するたくさんの工夫、そして私たちの仕事やものづくりそのものの意義を感じさせてくれるものなんです。

高橋 晋平 (たかはし しんぺい)

undefined

おもちゃクリエーター、アイデア発想ファシリテーター。秋田県生まれ。2004年に株式会社バンダイに入社。第1回 日本おもちゃ大賞を受賞し、発売初年度に国内外累計335万個を販売した「∞(むげん)プチプチ」など、イノベイティブトイの開発に約10年間携わる。14年に株式会社ウサギを設立。玩具・ゲームの考え方を活かした事業を企業と共同開発し、企画アイデアの発想セミナーやワークショップを全国で実施している。得意なのは笑い・遊びのある企画を作り、話題にし、販売につなげること。TEDxTokyoでのスピーチは累計200万回再生。近著『1日1アイデア』(KADOKAWA)など、著書多数。

実は理にかなった「2枚重ね」の理由

ティッシュペーパーって「世紀の大発明」だと思うんです。

花粉症や風邪をひいたときに手放せないのはもちろん、日常の些細な場面でもたくさん使いますよね。ティッシュが無い世界、ってなかなか想像できなくないですか?

ティッシュペーパーって実は歴史のなかで徐々に進化していったものなんです。もともとは第一次世界大戦中に、アメリカで医療用の綿が足りなくなったことで、代用品として開発された「セルコットン」という素材がベースになっているそうです。これを応用して1924年に作られたのがティッシュペーパーです。ちなみに開発したのは、みなさんおなじみ「クリネックス」で知られるキンバリークラーク社です。

ティッシュペーパーって2枚重ねじゃないですか。当たり前すぎて疑問にも思わないですが、あれって結構理にかなってるんですよね。

コピー用紙でもティッシュペーパーでも、紙には必ず裏表があることをご存知でしょうか。片面はキメが細かくサラサラ・つるつるですが、もう片面は必ずザラザラしています。ティッシュペーパーは、ザラザラな面同士をあわせて2枚組にすることで、分解しない限りは常にサラサラな面が表に来るようになっているんです。

もう一つの理由は水を吸いやすくすること。1枚の紙だと全く吸わないわけですが、2枚重ねしていることで紙と紙の隙間で水を吸い取るそうです。

注目すべきは紙だけではありません。ボックスタイプのティッシュを語る上で欠かせないのが、1枚を取った瞬間に次の1枚が用意されている「ポップアップ方式」。これ、おもちゃといってもいいレベルの機構だと思うんです。それぐらい感覚として楽しいし便利。

Photo by Diana Polekhina on Unsplash

このポップアップ方式は、ボックスティッシュを作る過程で生み出されたわけではなく、1921年にアメリカの発明家であるアンドリュー・オルセンさんが独自に開発したとのこと。それに目に留めたキンバリークラーク社が特許を買い取って現在のように広く商品に使われるようになっていったそうです。

ティッシュペーパーが教えてくれる、今やるべきこと、そして「未来へのバトン」

こうして見ると、ティッシュペーパーって「人類のものづくりの歴史」を体現している、とさえ言えるかもしれません。

そして、僕たちもまたこの“歴史”の中にあることを思い出させてくれるんです。

例えば僕のような、ものづくりや企画、アイデアを考える仕事もそうですが、動画や音楽、このウェブ記事のようなコンテンツ制作、あるいは働き方、サービス、生活の中の工夫まで、誰か一人が完璧なものを作るのはありえないと思うんです。

自分も先人がつくったものを受け取って、「もうちょっと便利にしたい」という感性を頼りにバージョンアップさせてきました。その流れを意識しながら、“あとは誰かに頼む”という感覚でアウトプットしていく。

そうして今の自分にできる精一杯を世の中に送り出していくことで、それを受け取った誰かが全く違うことを思いつくかもしれない。少しずつ未来にバトンを渡していくことで、社会は進歩していくと思うんです。

だから「完璧」じゃないから何も行動しないのはもったいない。まずは小さくできることからやってみる。形になっていなくても誰かに思いついたアイデアを話してみる。すると誰かが思いついて形にしてくれるかもしれない。

そうやってアイデアがみんなのものとして世の中に出ていき、社会の中で大きい役割を果たしていく。これこそが「仕事」なんだなと思うんです。無駄なことなんて一つもない。ティッシュペーパーはいつもそんな気づきを与えてくれます。


【お知らせ】

高橋さんの著書『1日1アイデア 1分で読めて、悩みの種が片付いていく』が発売中です。世界中の事例や高橋さんの経験から「人生を楽しくラクにするアイデア」を1日1つずつ、日付入りで365個紹介。すぐに試せるものから仕事のスキルを上げるものまで、日々の生活の中でアイデアの種を探す人は是非手にとってみてください。