EVENT | 2020/10/27

ニューノーマル時代のオンラインスポーツコーチング【連載】Road to 2020 スポーツ×テックがもたらす未来(6)

2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、テクノロジーの進化により著しく変化しているスポーツを取り巻く環...

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港北オンラインラジオ体操

港北区役所の関係者の皆さまとお話しさせていただいている中で、子供たちの夏休みの生活リズム維持や地域コミュニティ形成につながる地域での夏のラジオ体操が、今年は新型コロナウイルスの影響で中止されることが多いと耳にしました。そこから発想を得て、港北区内の小学生の生徒とその保護者を主な対象としたオンラインの早朝運動プログラムを設計し、不特定多数の参加者を対象としたイベント「港北オンラインラジオ体操」として、8月上旬に10回にわたり実施しました。横浜市港北区と慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科が主催、慶應KPAがプログラム設計と運営の協力をしました。

港北オンラインラジオ体操チラシ(画像提供:慶應キッズパフォーマンスアカデミー)

夏の地域のラジオ体操と同じく朝の6時半開始とし、ラジオ体操第一・第二と、慶應KPAが開発したオリジナル体操を行う約20分ほどのオンラインプログラムとしました。毎回港北区や横浜市にゆかりのある方々がゲスト参加して一緒に体操を行い、ラジオ体操とオリジナル体操の間にはゲストや健康に関するクイズを出題するなど、参加者が横浜市・港北区や健康に関する理解を深めることも狙いました。また、ラジオ体操カードの代わりとして、毎回1つずつ発表されるひらがなを10個集め、並べ替えてできる言葉を当てる「ひらがなラリー」イベントを実施。正解者の中から抽選で20名にオリジナルのグッズをプレゼントしました。

オンラインラジオ体操の様子(画像提供:慶應キッズパフォーマンスアカデミー)

参加方法は、クイズやチャットなど双方向のやり取りが可能なZoomと、視聴するのみのYouTubeを選択できるようにしました。毎回平均すると、Zoomを通して約150家族、YouTubeを通して約150家族が参加。各家庭、親子や兄弟姉妹で参加していることを考えると、毎回少なくとも600名以上に参加いただきました。

自宅でラジオ体操をするだけであれば、ラジオ体操の動画をみながら各家庭取り組むこともできます。それにもかかわらず、毎回参加者が600名を超える盛況なイベントとなったのは、画面を通した参加者同士の一体感に加え、ゲストやクイズ、ひらがなラリーなど参加者の興味を喚起する工夫があり、参加者それぞれの状況や好みの参加方法に応じて楽しめる内容で、かつ夏の生活リズム維持や運動不足解消につながるというメリットがあったからと考えています。終了後に実施したアンケートでは、「とても満足」が60.4%、「満足」が28.5%と、全体の90%近くの方に満足いただく結果となりました。また、全10回のうち、何回参加したか聞いたところ、アンケートにお答えいただいた子供たちの80%以上が9回以上参加。保護者は64%以上が9回以上参加と、特に子供たちの高い参加率が目立ちました。その理由として、毎回のひらがなラリーでひらがなを集めることを楽しみに参加していた、というフィードバックが多く、それを裏付ける形で、280名を超える参加者から、ひらがなラリープレゼントへの抽選応募をいただききました。それ以外にも、身支度を気にせず家で気軽に参加できた、猛暑の中、外でやるより涼しい家で良かった、帰省中の実家から参加しました、など、オンラインの長所を確認できる声もありました。もっと続けて欲しかった、来年もやって欲しいなどの意見も多くいただきました。

今回の取り組みを通して、ブロードキャスト型オンラインコーチングの可能性に触れることができましたので、今後はオンラインラジオ体操のような子供から大人までの運動不足解消・生活リズム改善・家族のコミュニケーション増加につながる取り組みや、トップレベルのコーチングを全国どこにいても受講できる取り組みなどに繋げていきたいと考えています。

コロナ禍の影響でグラウンドでの活動に制限が出たために取り組み始めたオンラインコーチングですが、実施した全てのプログラムに共通してポジティブなフィードバックを多く得ることができ、また、グラウンドでのプログラムは参加が難しい地域にお住まいの方々も多数参加いただきました。特定人数を対象としたインタラクティブ型運動プログラムでは、オンライン指導と動画の個別フィードバックを通したコーチングにより動作改善が見られ、不特定多数を対象にしたブロードキャスト型の取り組みでは、子供から大人まで生活リズム維持や運動不足解消、地域コミュニティ形成に貢献できました。「禍を転じて福と為す」ことができるように、慶應KPAは今後オンラインクラスの新規開設、慶應義塾内外へのプログラム提供やコーチング提供などを視野に入れながら、オンラインプログラムをグランドプログラムと並ぶ柱と位置づけ、より効果的なオンラインコーチングの研究やオンラインコーチの育成、グラウンドプログラムと組み合わせなど、ニューノーマル時代に対応した取り組みを進めて行きたいと考えています。


慶應キッズパフォーマンスアカデミー

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