EVENT | 2020/09/23

コロナ第3波に備えて今やるべき3つのこと。首都圏と地方のテレワーク格差を埋めるには?【連載】令和時代のオープンイノベーション概論(5)

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コロナ禍によりテレワークが急速に普及し始めた首都圏に対し、地方でのテレワー...

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コロナ禍によりテレワークが急速に普及し始めた首都圏に対し、地方でのテレワークの普及はまだ遠いようだ。

引き続き対面営業をメインとしている地方の実情、そして、首都圏の特殊性について、事業開発アイディエーションファーム、フィラメントCEOの角勝氏に解説いただいた。

コロナ第3波に向けて、今こそテレワーク未導入の企業や地方の企業がとるべき備えとは? 

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO

1972年生まれ。2015年より、新規事業開発支援のスペシャリストして、主に大企業において、事業開発の適任者の発掘、事業アイデア創発から事業化までを一気通貫でサポートしている。前職(公務員)時代から培った、さまざまな産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、必要な情報の注入やキーマンの紹介などを適切なタイミングで実行し、事業案のバリューと担当者のモチベーションを高め、事業成功率を向上させる独自の手法を確立。オープンイノベーションを目的化せず、事業開発を進めるための手法として実践、追求している。 

コロナ禍でのテレワーク事情について、首都圏と地方のギャップをどのように見ていますか?

そもそも東京は2020年にオリンピックが開催される予定だったため、交通渋滞緩和などを見越して、数年前から国をあげてテレワークを推奨してきました。そのため、コロナ禍に際してもすでにテレワークの準備が進んでいた企業が多かったわけです。

その一方で、地方ではまったくと言っていい程、テレワーク導入の動きがこれまで進んでいなかったのが実情だと思います。

パーソル総合研究所が4月に実施した公開データをみても、地方はテレワーク実施率が低く、3月から4月にかけてテレワークの実施率がやはり低下していることがわかります。

そもそも地方の方がテレワークがしにくい業種・業態の比率も高いでしょうし、車通勤が主流だと通勤中の感染リスクが低いので、電車中心の東京ほど徹底する必要性が薄かったことも一因としてあるのかもしれません。

ステイホーム期間後の首都圏と地方のテレワーク事情は?

大阪に住んでいての実感としては、夜の街に出かけたり、会食や飲みに行ったりするのを控えるビジネスパーソンは多いものの、5月のステイホーム期間後は出勤が元どおりになっているところがほとんどであるように感じます。

対して首都圏では、テレワークや輪番出社などが一般化しています。オリンピック対策としてのテレワークが、コロナ対応にも効果を発揮し、さらにそこから業種を超えてのコンタクトレス対応や印鑑の電子化などさらなるリモート業務の拡充に投資が進んでいます。

一方、地方ではそもそもテレワークへの設備投資がなく、コロナ禍で緊急対応をしたものの、終わったから元に戻したところがほとんどです。

「緊急対応として仕方なく」テレワークとしただけであり、その必要がなくなった今、完全にビジネスは対面スタイルに戻り、テレワークやリモートに対しての投資意欲も低調に見えます。

実際、今、大阪で電車に乗ると、コロナ前とほぼ同様の混み具合だと感じます。地方とは言え日本でも有数の都会である大阪ですらそうなのですから、他の地方でも元のスタイルへ戻そうという復元力が強く働いていると思います。

次ページ:デジタル化社会の格差とテレワークを上手に取り入れる3ステップ

Q.DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する会社としない会社が二分した先に生まれる格差は?

コロナ禍でも、元々お付き合いがあった企業同士であれば、ある程度関係性は維持され、受発注も継続するでしょう。でも、新しい出会いは生まれにくくなくなっています。

たとえば、これまでは優れた技術を持つ地方の会社は、幕張メッセや東京ビッグサイトなどで開催される展示会を活用して自分たちの商材や技術をアピールしてきました。そうした場に来ている来場者を実物の魅力で惹きつけ、見込み顧客として取り込んでいたわけです。

しかし今ではそうした場がコロナの影響で激減してしまい、未来の仕事につながる出会いの機会が作れなくなっているのです。

新たな出会いが得られないことの打撃に即効性はないものの、ボディブローのように後でじわじわ効いてきます。

継続してお付き合いのある顧客がいても、それがずっと続くとは限りません。普通の会社では、ある程度年月が経てばお客さんのうちいくらかは離れていくでしょうし、それを新規のお客さんが埋めてくれる。でも今は、そんな顧客の新陳代謝サイクルが寸断されている状態なのです。

しかし目線を変えれば、ピンチをチャンスに変えることもできるかもしれません。一例として、DXによりオフラインに縛られない出会いの場を作り、そちらを経由した顧客獲得を図っていくことを考えてみましょう。

具体的には、たとえば優れた技術を持つ地方のモノ作りの会社が展示会などの発表の場をオンライン化することができれば、低コストで広範囲に届く自社の魅力をアピールする機会を得ることもできるかもしれません。

展示会に参加するのはとてもコストが高い作業です。短い会期の中で交通費・宿泊費・設営コストをかけた上で、人材も配備するわけです。しかも展示期間は365日中のたった数日のみで、出会える人も限られます。

その点、自社製品の発表を映像化してオンライン上に埋め込むことができれば、365日訴求し続けることができるのです。映像やコンテンツを通じてチャットボットなどのタッチポイントに誘導すれば、人材配備なしで新規顧客の獲得につなげられるかもしれません。

Q.地方がこれからテレワークを上手に取り入れる具体的な方法は?

企業戦略的に、ポイントは3つあります。

⑴事業家精神を持つこと

僕は島根でプロパンボンベなどを扱うガス屋の息子ですが、地方の経営者ほど、2代目以降になると「うちは××屋だから」と事業内容を固定化してしまいがち。すると今まで自分たちがやってきたこと、専門とすること以外はやらないマインドになってしまいがちですが、これはすごくもったいないことです。

事業環境が変化した時、自社の事業の価値を維持する、あるいはピンチをチャンスに変えて以前よりも価値を高めていくためには、必要なことを何でもやらなければなりません。事業環境が変わったことを嘆くのではなく、今までやったことがないことをどんどんやってみて、そこから貪欲に学びを得て活かしていく。そんな事業家精神を持ち続けることが大事なのです。

⑵入口戦略を再構築して人材を整備する

コロナ禍により、事業環境に大きな変化が生じた現在では、首都圏と地方のコミュニケーションのとり方がまったく違ったものになっているのが現状です。ZoomやTeamsなどがミーティングのスタンダードになりつつある東京に対して、そうしたツールを使ったこともなければ、オンライン飲み会さえやったことがない人が多いのが地方の現状でしょう。

このまま東京とのコミュニケーションがうまくとれない状態が続けば、上述したように新規顧客が得られない上に、既存顧客とのお付き合いの密度も下がる一方です。そのような未来を回避するためには、入口戦略を再構築すること、そしてそれができる人材育成や体制作りが必要です。

⑶デジタルシフトしていく

前提として、デジタルシフトを目的にしても、成果は出ません。「入口戦略の再構築をしないと新しい売上につながらなくなった」という環境変化に対応するための戦略が必要であり、その実現手段としてデジタルシフトしかなければならないと考える必要があります。

結果的に、デジタルシフトに対応できる社員が育てば、第3波にも備えられるし、お客さんとの接点を絶やすこともなくなります。そうした成果が出れば、それ以外の部分にもデジタルシフトは自ずと加速していくはずです。

僕は、地方のデジタルシフトが進めば、東京と足並みが揃い、双方が便益を得られるようになると考えています。これまで対面営業で移動などのコストがかかっていたのであれば、その時間コストも不要になります。

Q.テレワークは押し寄せるグローバル化に立ち向かう武器になりますか?

テレワークが日本全体に広がれば、生産性は間違いなく上がるでしょう。たとえば、これまで営業回りのために丸1日つぶれていた時よりも、はるかに生産的な時間が増えてきます。

実際に地方にある技術に優れた企業が、自分たちの持ち味をすべてオンライン上に埋め込めるようになったとしたら、技術を探す側の多く人たちも当たり前のようにオンライン上でリサーチするようになります。

今まで出会ったことがない新たな企業や技術に出会える機会が増えて、知と知、人と人の組み合わせがオンライン上でたくさん生まれる可能性も出てきます。言うなればオープンイノベーションの民主化です。そうなれば、今よりも圧倒的にイノベーションが生まれる機会が増えるのではないかと思っています。