文:滝水瞳
家族との時間はかけがえのないものだが、中には事情により長い期間会えずにいる人もいる。
ある予期せぬ小さな出逢いがきっかけで、20年ぶりに家族と再会できたという奇跡が今、SNSで話題となっている。
「みんな私を見るだけ」ホームレスの言葉がきっかけに
米カリフォルニア州ロサンゼルスに住むランディ・エマンズさん(33歳)が犬の散歩をしようと自宅マンションを出ると、路上に座った1人の男性のつぶやく声が聞こえた。「みんな私を見るだけだ……」。男性はきちんとした教育を受けてきたにも関わらず、通り過ぎる人々は彼のことを「家がなく電話をかける相手もいない(ホームレスの)人間としか見ていない」と言っていた。その言葉に衝撃を受けたランディさんは、すぐにボーイフレンドのジョーン・スアゾさん(34歳)に相談。2人で男性へ近寄り、声をかけた。
ペドロ・リードと名乗ったこの男性は、真剣に話を聞いてくれる2人の姿勢を見て、今まで誰にも話しかけられたことがなかったことを打ち明け、嬉しそうに身の内を語り始めた。『The Washington Post』によれば、ペドロさん(54歳)はサウスカロライナ州チャールストン出身で、1999年に家族のもとを離れ、ロサンゼルスで叔母と暮らし始めた。しかし気付けば薬物とアルコール依存症を発症。1年後にはホームレスになっていたという。その後、約20年にわたって路上での暮らしを続けていると涙ながらに打ち明けた。
日頃からホームレスの支援活動を行っていたランディさんは、車に常備していた食料品や水、毛布などが入ったリュックサックをペドロさんに手渡した。さらに「何が一番欲しい?」と聞いたところ、「寝るところ」と答えた。リュックサックだけでは足りないと感じたランディさんたちはさっそくFacebookにペドロさんの状況を投稿。寄付を募ったところ、数日分のホテルの宿泊費と食費をすぐに賄うことができた。寄付金は72時間で6500ドル(約70万円)にまで増額。ペドロさんは久しぶりに屋根のある場所で寝られることに幸せを感じ、「部屋の明かりをつけるのが楽しみで仕方がない」とあふれる思いを口にした。