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BUSINESS | 2026/03/19

微生物の制御と利用で持続可能な社会へ
筑波大学 微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS)

連載:最先端研究×産学融合で日本を変える!「Jイノベ」の挑戦

筑波大学 微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS)

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経済産業省では、長期的・持続的な日本経済の発展のため、大学や高等専門学校等の機関を中心とした研究拠点の中から、企業ネットワークのハブとして活躍している産学連携拠点を評価・選抜(国際展開型と地域貢献型の2類型)する 「J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜事業」 を令和2年度より行っている。また、令和5年度より「地域の中核大学の産学融合拠点の整備」についての補助事業終了後から新たにプラットフォーム型としての選抜も始まっている。

令和7年度についても、令和7年7月18日から8月27日までの間、公募期間が設けられ、第7回目となるJイノベ 地域オープンイノベーション拠点として、国際展開型3拠点、地域貢献型4拠点が選抜された。

本連載では、新たに選抜された拠点の取り組みを紹介する。

Jイノベ 地域オープンイノベーション拠点選抜制度

J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜制度 国際展開型拠点~筑波大学 微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS)

微生物は、地球上の動植物に密接に関わっており、環境・食・健康にとって重要な鍵となる生き物である。人間の生活や産業活動とも深く結びついており、土壌や水環境の維持、食料生産、発酵食品の生成、さらには医療や創薬など、さまざまな分野で大きな役割を担っている。しかし、その一方で、地球上に存在する微生物の大半はいまだ未解明のままであり、その多様性や機能、相互作用については未知の領域が広く残されている。こうした未解明の微生物の可能性を解き明かし、社会課題の解決へとつなげていくことが、現代の微生物研究に求められている。

筑波大学微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS:Microbiology Research Center for Sustainability)は、21世紀の環境・食・健康に貢献するため、微生物の制御あるいは利用を推進することを目的として創設された研究拠点である。MiCSには、基礎から応用まで、サイエンスからテクノロジーまでを専門にするさまざまな微生物研究者が所属しており、分野横断的な研究体制を構築している。センターは「次世代微生物制御部門」「次世代微生物利用部門」「国際・産学研究推進部門」の3部門と8つの研究グループで構成され、医学・理学・工学・農学・環境といった多様な分野にまたがる微生物研究を統合的に推進している。

さらにMiCSでは、国内外の研究者との学際融合研究にも積極的に取り組んでおり、分野や国境を越えた研究ネットワークの形成を進めている。こうした取り組みを通じて、微生物から見える俯瞰的な視野と国際性をもつ人材の育成にも貢献しており、次世代の研究者や技術者を育てる拠点としての役割も担っている。微生物研究の新たな知見を社会に還元し、持続可能な社会の実現に向けた学術的・技術的基盤を築くことが、MiCSの大きな使命となっている。

筑波大学微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS:Microbiology Research Center for Sustainability)の研究室の様子

オープンファシリティによる研究設備・技術の提供

応用研究のみならず基礎研究を進める上でも、技術開発は極めて重要であり、サイエンスとテクノロジーの両輪で研究を進めていくことが重要である。MiCSでは、こうした観点から独自開発された先端的なイメージング・解析技術を含むさまざまな機器・技術を整備し、オープンファシリティとして学内外の研究者に広く提供している。

とりわけMiCSでは、微生物の構造や挙動を詳細に捉えるためのイメージング技術に力を入れている。培養しながらのタイムラプス観察が可能なインキュベーター付きの顕微鏡をはじめ、立体的な観察が可能な共焦点顕微鏡(正立、倒立、スピニングディスク)、高分解能で細胞内部の構造を可視化できる超解像顕微鏡、さらにコロニーなどのマクロな観察が可能なズーム顕微鏡など、多様な顕微鏡装置を有している。これらの装置により、微生物の細胞レベルから集団レベルまで、さまざまなスケールでの観察と解析が可能となっている。

さらに、MiCSでは独自の観察・解析技術の開発にも取り組んでいる。例えば、無処理・非染色のままで微生物集団の立体構造を観察することが可能なCOCRM(Continuous-Optimizing Confocal Reflection Microscopy)や、自家蛍光を用いた細胞解析技術であるCRIF(Confocal reflection microscopy-assisted single-cell innate fluorescence analysis、日米欧特許技術)を活用することで、細胞の種類や状態を無処理、非染色、非破壊のまま観察することが可能となっている。これにより、従来の染色や処理によって細胞状態が変化してしまうといった課題を避けながら、より自然に近い状態で微生物の振る舞いを捉えることができる。

また、MiCSではイメージングに加え、細胞や分子の解析を支える多様な分析技術も提供している。セルソーターによる細胞解析・分取や、Nanosightによるナノ粒子の分析、LC-MSによる代謝産物解析など、微生物研究を支えるさまざまな装置・解析技術を整備しており、研究者が基礎から応用まで幅広い研究を進められる環境を整えている。

多様な顕微鏡装置を備えるMiCSの研究設備

研究技術の社会実装

MiCSでは、オープンファシリティとして機器・技術を提供するにとどまらず、研究成果の社会実装にも注力している。大学で生まれた研究成果を学術的な知見として蓄積するだけでなく、産業や社会の現場で活用される技術へと展開していくことを重要な使命として位置づけている。

その取り組みの一例として、2023年には、微生物を活用した発酵および生産物精製、これらのスケールアップ、さらにはバイオものづくりに関するコンサルティングを担うBioPhenolics社が創業された。微生物の持つ機能を産業利用へと結びつけることで、研究成果を実際の生産プロセスや新たな製品開発へとつなげることを目指している。

さらに2024年には、牛肉や豚肉などの動物性食肉、大豆などを原料とする植物性代替肉に次ぐ「第三の肉」として、日本の発酵文化において古くから利用されてきた麹菌を活用した代替肉の研究開発を行う麹ラボが設立された。麹菌という日本独自の発酵資源を活かし、持続可能な食料生産の新しい可能性を切り拓く試みとして注目されている。

MiCSはこのように、持続可能な社会の実現に向けて、研究成果をスタートアップの創出を通じて社会実装へと展開している。大学発の技術を産業界へと橋渡しすることで、微生物研究の成果を環境・食・健康といった幅広い分野で社会に還元する取り組みを進めている。

微生物研究の可能性を伝え、持続可能な社会を拓く

MiCSでは、研究成果や微生物研究の魅力をより多くの人に伝えるため、クリエイティブ集団の株式会社アラレグミの協力のもとで「mics magazine」を発行している。専門的な研究内容をそのまま伝えるだけでなく、微生物研究の背景や研究者の視点、微生物が私たちの生活とどのように関わっているのかといった点にも光を当てている。学術的な内容だけでなく、身近な微生物の存在を感じとってもらうため、読者が楽しみながら微生物の世界に親しむことができるようなコンテンツとなっている。

mics magazine
https://micsmagazine.com/

株式会社アラレグミの協力のもとに発行しているMiCSの研究成果を紹介する「mics magazine」

MiCSの野村暢彦センター長は、今後の展開に向けて次のように意気込みを語っている。

「微生物の可能性を探究し、そこから得られる知見を社会に生かしていくことが、本センターの使命です。微生物は地球環境と、地球上のあらゆる生命の営みに深く関わり、環境・食・健康をはじめとする私たちの暮らしの基盤を支える存在です。本センターでは、こうした微生物を対象に、基礎から応用までを見据えた先端研究を推進するとともに、分野横断的な研究体制のもとで微生物に関する知を集約し、その理解をより深めていきます。

そのうえで、得られた成果を微生物の制御や利用に関する新たな技術の創出へとつなげ、地球規模のさまざまな課題の解決に貢献することを目指します。さらに、産官学が協働する開かれた拠点として幅広い連携を促進し、持続可能な社会の構築に貢献していきます。」

筑波大学 生命環境系 微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS) センター長の野村 暢彦氏

筑波大学 微生物サステイナビリティ研究センター(MiCS)
https://www.mics.tsukuba.ac.jp/

Jイノベ選抜拠点の記事一覧はこちら
https://finders.me/series/kqJTU6YwMDMwNTU