EVENT | 2020/08/12

「仕事が上手くいかないのは、方向性が間違っているからだ」が誤りな理由【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(6)

早稲田ビジネススクールの講義「深圳の産業集積とハードウェアのマスイノベーション」。紫のシャツを着た中央の女性がゲスト講義...

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勢い=モメンタムが質を生む

Jie Qiによる講義の模様

僕の授業でゲスト講義をしてくれたJie Qiは、キャリアについて僕と似た考え方を持っていると思います。それを「モメンタム」(勢い・流れ)という言葉で明快に説明していました。彼女は10歳の時に両親に連れられて中国からアメリカに来た中国系アメリカ人で、コロンビア大学で応用化学と工学を学び、その後MITメディアラボでアートの分野で博士号を取得しています。在学中に知育ツールのスタートアップ、Chibitronicsを起業し、知的財産について啓蒙するプロジェクト「Patent Panda」を立ち上げるなど、複数の分野で活動をしている研究者です。2019年からは東京大学川原研究室に所属しているので、活動する国もこれで3カ国目になります。

スタートアップ、研究、アート、知財と幅広いキャリアを築いている彼女の講義でも、MBAコースの学生(ほぼ全員が社会人)からキャリアについての質問が出ましたが、回答するJieが「モメンタム」という言葉を使っていたのが印象的でした。

博士論文を書く過程で自分のアイデアである知育玩具を量産したのも、その延長でChibitronicsを起業したのも、「アートとサイエンスの間で新しいものを作ることがやりたくて、その間のモメンタムで必要な人たちと一緒に仕事をすることになり、クラウドファンディングや起業をすることになった」と説明していました。

Jie QiがMITメディアラボ在籍時に共同創業したスタートアップ、Chibitrnonics

僕自身は、キャリアや仕事で一番大事なのはスカラー、スカラーを生むのはモメンタムで、ベクトルは結果だと思っています。僕の本業は新規事業開発なので、大きさはともかく新しいことをやることに傾くため、まだ注目している人が少ない分野に手を出すことが多いです。Jie Qiは未知を知に変えるのが仕事の研究者なので、そこは似ている部分があります。どの分野が正しいかはしばらく進めてみないとわからないので、まずはじめてみて勢い、モメンタムを生んでいくことが大事だと考えています。


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