CULTURE | 2020/07/28

誰ともつながらない時間にこそ価値がある。SNS時代の「孤独」のマネジメント【連載】青木真也の物語の作り方〜ライフ・イズ・コンテンツ(9)

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15年以上もの間、世界トップクラスの総合格闘家として、国内外のリングに上り続けてきた青木真也。現在...

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自分自身と向き合うとアイデアが湧いてくる

では、あえて孤独を維持することのメリットとは何か? 僕が日頃から感じているのは、自分自身と向き合う時間が増えれば、それだけアイデアが得られる機会が増すということだ。

現代社会はただでさえ、スマホやパソコンで常に誰かとつながり続けることができてしまうから、本当の意味で自分だけの時間を持つことは難しい。逆にいえば、誰ともつながらない時間には、一定の価値があると言っていいだろう。

僕がたびたびパソコン持参でサウナへ行くのもそのためで、サウナの中で思考を巡らせ、そこで思いついたアイデアをすぐに休憩スペースでまとめるようにしている。そして体のほてりが冷めたら再びサウナへ向かい、アイデアを探す。その繰り返しだ。

自宅に独りでいるときでも、ついスマホに手を伸ばし、SNSなどをだらだら見てしまうのは、現代人にとっていかにもありがちなこと。それは真の孤独とは言えないだろう。だったら、スーパー銭湯にでも場を移して、独りの時間はわざわざ作る工夫をするのが有意義だ。

自転車もいい。30分や1時間ほどの移動時間があるとすれば、ハンドルを握っている間はスマホをいじるわけにもいかず、ただ流れ行く風景を眺めながら頭をフリーにして働かせることができる。

何も交友関係をシャットアウトすべきだと言っているわけではない。僕自身、日頃から経営者や医者、格闘家仲間など、幅広い人々と付き合っているし、そこから得る学びは非常に多い。

大切なのはバランスで、格闘技の世界の人間だけと付き合っていると、どうしても視点や考え方が偏ってしまうから、できるだけ多彩な立場の人の意見に触れるよう心掛けている。

それと同様に、他人の意見にばかり揉まれるのもまた不健全で、ときには他人と一切つながらず、自分自身とじっくり向き合うことで見えてくるものだってあるはずなのだ。

そのための手段は、サウナでも自転車でも、何でも構わない。できるだけ毎日、1時間でも2時間でも、意識的に孤独を確保することで、時間の使い方は大きく変わってくるに違いない。

SNS全盛の中で迎えたコロナ禍は、本当の意味での孤独について再考する、いい機会なのではないかと僕は思う。


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