EVENT | 2020/07/20

エンタメワーカーにエール!「メッセージブーケ」プロジェクトが始動。コロナ禍で生まれた、エンタメ産業を元気づけるための思い

全国で非常事態宣言が解除されてから1カ月以上が過ぎた現在、ワクチンが未だ開発されていない中で、人類と新型コロナウイルスと...

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全国で非常事態宣言が解除されてから1カ月以上が過ぎた現在、ワクチンが未だ開発されていない中で、人類と新型コロナウイルスとの戦いは続いている。

その影響でさまざまなビジネスが停滞する中、営業自粛を名指しされた飲食業界などと同様、大きなダメージが受けているのが、エンターテインメント業界やイベント業界だ。

このほど、その渦中にあるエンターテインメント業界とイベント業界の経営者2人がタッグを組み、エンタメワーカーにエールを送るプロジェクト「メッセージブーケ」が始動。

多くの著名なラジオDJなどが所属するFM BIRD代表取締役社長の長倉シュタッフ牧子氏、そして数々のビジネスイベント制作を手がける、総合クリエイティブエージェンシー「シー・エヌ・エス」代表取締役社長の加藤渉氏のお2人を直撃した。

取材・文・構成:庄司真美 聞き手:米田智彦 写真:神保勇揮

長倉シュタッフ牧子

株式会社FM BIRD 代表取締役社長

東京都生まれ。国際的舞台に通用する日本のバイリンガル・マルチリンガル司会者・ラジオパーソナリティ育成を行うスピーチエキスパート。ナレーターエージェントのパイオニア企業「FM BIRD」を創立。日本インバウンドビジネスの最先端を研究しコンサルタントを手がけるインバウンド実務主任者でもある。英国国立ウェールズ大学大学院環境学部修士課程修了。

加藤渉

株式会社シー・エヌ・エス 代表取締役

PR会社・広告会社勤務等を経て、2003年株式会社シー・エヌ・エスを設立。IT・通信・エンタメ・ファッション等さまざまな業種のイベントの企画・制作をはじめ、各種クリエイティブ・Web・映像などのプロデュースを手掛ける。

コロナ禍という苦境の中で生まれた「メッセージブーケ」

新型コロナウイルスの感染拡大により、さまざまなビジネスに影響が出ている現在、エンタメワーカーに向けた「メッセージブーケ」を発信するプロジェクトが始動した。

当座談会は、同プロジェクトの発起人であるFM BIRD 代表取締役社長の長倉シュタッフ牧子氏をお迎えし、共同制作をしたシー・エヌ・エス代表取締役の加藤渉氏、そしてFINDERS編集長の米田が同席のもと、実施した。

―― まずは、「メッセージブーケ」のプロジェクトを始めた経緯を教えて下さい。

長倉:私はラジオDJやMCが所属する会社でマネージメント事業をしていて、エンタメ業界の2次産業に従事しています。コロナの影響でイベントや国際会議、記者会見などが一気になくなってしまいました。

それに付随して、イベントを支える3次産業の方々の仕事もなくなり、中には廃業に追い込まれるケースも少なくありません。彼らは私たちの見えないところでさまざまなカルチャーを作ってきました。そういう方々をどうにか元気づけたいという気持ちから始めたのが、まずひとつ。

しかも廃業になった方々の中には、実はさまざまな助成金があることを知らなかったケースもあって、そういう情報も併せて伝えていきたいと考えました。

シー・エヌ・エス代表取締役・加藤渉氏。

加藤:コロナの影響であらゆるビジネスに影響が出て、特にエンタメ業界では仕事がない状態が続く一方、それ必要?というようなニュースも日々溢れています。マスコミはこういうときこそ、困っている人のために情報発信すべきだという思いがありました。

シー・エヌ・エスはさまざまなクライアント様のイベントや広告制作を行う会社なので、自らの考えや思いを発信することはあまりないのですが、今回、マスコミの仕事を担う長倉さんたちが強い思いを持っていることに共感し、一緒に制作することになりました。

米田:どの段階から動き始めたのですか?

長倉:まず3月初めに、加藤さんに弊社の業務にかなり支障が出ていることを伝えました。その後、3月末までにかなりエンタメ業界全体のダメージが進んだので、加藤さんにこれはなんとか声を上げていかないといけないということを伝えました。

ですので具体的なアクションとしては3月末からですが、自身の構想としては3月頭からです。

エンタメ業界は9000億円産業と言われていますが、5月末までにコロナの影響で77%の仕事がキャンセルまたは延期に追い込まれています。私たちのような2次産業、それから3次産業はほぼ仕事がない状況となりました。

エンタメ業界が持つクリエイティビティや技術、カルチャーは一度途絶えてしまうと、そこから復活するのは難しいものです。それを絶やさないための方法をみんなで情報共有していく必要があると考えました。

FM BIRD 代表取締役社長・長倉シュタッフ牧子氏。

「うちも困っています」と声を上げることは悪いことではありません。むしろ弱っているのに言わない方が、問題です。「実は大変なんですね」などとお互いに情報共有することが、次に再始動する時にかならず役に立つと思うのです。

今は仕事の現場を失ってしまっても、そうした横のつながりや絆が、再スタートした時に力になるはずです。絆の力を絶やしたくないという思いを込めて始めました。

―― YouTubeで動画の配信をスタートしていますが、反響はいかがですか?

長倉:本当にまだ始めたばかりなので、様子見ですね。現在、放送業界での収録をはじめ、イベントやライブのほか、夏の風物詩の青森ねぶた祭までコロナの影響で中止となっています。

青森ねぶた祭にしても、毎年夏の1週間の祭のために1年がかりで準備しているわけです。来年、再来年と中止が続けば、ねぶた師になるために何年も修業してきた人の技術も途絶えてしまいます。

そうした状況を見て心を痛めつつ、みなさんに少しでもお役に立てるコンテンツを提供できたらいいなと考えているところです。

FM BIRDのオフィシャルチャンネル。

仕事の現場があるという「当たり前」がそうではなくなった

―― J-WAVEでもおなじみの秀島史香さんをはじめとする、御社所属のパフォーマーさんたちはこの状況をどのように捉えていますか?

長倉:たとえばシー・エヌ・エスさんとイベントのお仕事をさせていただくこともありましたが、現場のスタッフのみなさんがいないとイベントが成り立たないということをパフォーマーたちはよく理解しています。

パフォーマーたちがイベントなどの現場で本番をこなす部分は、全体の工程から見たら1割くらい。準備の段階で打ち合わせをしたり、台本の読み合わせをしたり、いろんな場面で支えて下さるのが、イベント会社のみなさんです。

本番前に弁当を持ってきて下さったり、照明さんが舞台の明るさを最適化して下さったり。そうしたこと全部合わせて現場なんだということをあらためて実感しているようです。

オンラインでももちろん放送はやっていますが、それだけだとやはりつまらないもので、現場のみなさんと実際に会って力を合わせて舞台を作るからこそ、放送は楽しいものなんです。

FINDERS編集長・米田智彦。

―― 今までの当たり前のありがたみを再確認しているわけですね。

長倉:そういう意味ではいいきっかけだったのかもしれません。当たり前のように現場の人が支えてくれて、現場に行けば台本ができていて、照明さんがいて、録音してくれて……といったことは当たり前ではなかったということです。

加藤:鈴木ゆかりさんの動画を拝見したり、秀島史香さんのお話を聞いたりして感じたのですが、特に御社所属のタレントさんは、制作との距離が近い現場が多い印象があります。

長倉:弊社は大半がラジオDJで、ラジオの場合、DJは半分制作者の役割を担うところがあります

加藤:そうですよね。テレビの場合、台本通りに収録が進んで、そこで演者の方々がどれだけアドリブを入れるかという感じですもんね。ラジオの現場はチームもミニマルなのですか?

長倉:ラジオの場合は、パーソナリティのほか、ディレクター、アシスタントディレクター、構成者、ミキサー、プロデューサーを入れてもせいぜい10数人体制です。テレビの現場に比べたら10分1くらい。そういう意味でも、スタッフさんとの距離は近いですね。

一方、イベントの現場って不思議なんですけど、スタッフが10人でも100人でも、すごく一体感がありますよね。

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