CULTURE | 2020/07/01

「骨折り&中指」のおかげで注目度アップ?コロナ禍で加速するネット炎上の解決策【連載】青木真也の物語の作り方〜ライフ・イズ・コンテンツ(8)

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15年以上もの間、世界トップクラスの総合格闘家として、国内外のリングに上り続けてきた青木真也。現在...

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あらゆる炎上騒ぎは時間が解決してくれる

振り返ってみれば、僕が最も世間から批判を浴びたのは、やはり2009年の大晦日、「Dynamite!!」で廣田瑞人と戦った時だろう。

この試合、1ラウンドの2分過ぎ頃に僕のハンマーロックが極まったが、廣田はタップアウトすることはなく、結果として僕は彼の右腕を骨折させている。これがその後の中指も含めて大いにファンの反感を買ったようで、ネットは荒れに荒れた。

当時はまだ炎上ビギナーであった僕は、正直、これほど燃えるものなのかという戸惑いがなかったわけではないし、アンチコメントのひとつひとつにしっかり腹を立ててもいた。ところが、そのうち肌感覚で理解することになる。アンチというのはいくらでも無限に湧いてくるもので、まともに相手にするのは無駄であるということを。そして、それは正月休みなど皆が暇しているタイミングであればなおさらなのだ、と。

しかし他方では、こうして騒がれたおかげで僕の存在を知った人も、決して少なくはなかった。まさに炎上商法の図式がそこにある。

これを機に注目度が上がったせいか、僕はその後もたびたびSNSを中心にちょっとした炎上にさらされることになる。しかし、廣田戦の大火事を経験しているおかげで、すっかり肝が据わってしまった感がある。最近はネット上で少々批判されたところで、「おお、燃えてるな」と涼しい顔をしていられるほどだ。

また、ネット上である程度の注目度や影響力を持つようになると、自分の意見を主張するたびに一定の批判や避難が集まってくるのは避けられない。これはいわば税金のようなものだろう。

現在のようにリモート中心の生活になると、どうしても人々は時間に余裕ができるから、ことさら炎上しやすい土壌があると言える。しかしだからといって、それを恐れてディフェンシブな発言ばかりするようになると、途端につまらない人間に思われ、やがて世間は興味を失うに違いない。つまり、人気商売である格闘技や芸事の世界に身を置く者であれば、炎上を過剰に恐れるのもまた問題だ。

大炎上を経験した立場から言わせてもらえば、こうした騒ぎはどれだけバッシングが拡大したところで、間違いなく時間が解決してくれる。わざわざ薪をくべるような言動さえ謹んでいれば、世間は必ず忘れてしまうものだ。

だからあまり気にする必要はない――などと言えば、これもまた批判の対象になるのかもしれないが。

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