かつてスペイン風邪によるパンデミックが起きた100年前、世界人口の3分の1が感染。多くの命が犠牲になり、文化や経済は停滞し、ダメージを受けた後に復興を遂げた。
疫病の流行後は新時代にシフトし、世界的なイノベーションが起きることは、これまで歴史が証明してきた通りだ。
そこでFINDERSでは、ワクチンの開発が待たれるWithコロナ時代に突入した現在、今後のビジネスチャンスを浮き彫りにすべく、「FINDERS SESSION ONLINE」を開催した。
当日は時代の流れを読み、イノベーションの担い手であるフロントランナーであり、FINDERSの連載陣でもある3名をゲストに、東京・大阪・ニューヨークの3拠点をオンラインで結び、ライブ中継。
Withコロナ時代に、「個人」「組織」、そして「ビジネス」はどう変わるのか? 当日のトークセッションの模様を抜粋の上、レポートしたい。
取材・文・構成:庄司真美
倉貫義人
株式会社ソニックガーデン代表取締役
大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。著書に『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』『管理ゼロで成果はあがる』『「納品」をなくせばうまくいく』など。
角 勝
株式会社フィラメント 代表取締役CEO
1972年生まれ。公務員(大阪市役所)出身で、「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、共創による新規事業開発と組織開発・人材開発を行う株式会社フィラメントを設立。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点The DECKの立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイキングや活性化にもアドバイザリーを提供している。
清水幹太
BASSDRUM テクニカルディレクター
東京都生まれ。東京大学法学部中退。バーテンダー・トロンボーン吹き・DTPオペレーター・デザイナーなどを経て、独学でプログラマーに。2005年12月より株式会社イメージソース/ノングリッドに参加し、本格的にインタラクティブ動画制作に転身、クリエイティブディレクター /テクニカルディレクターとしてウェブサービス・システム構築から体験展示までさまざまな分野のコンテンツ企画・制作に関わる。2011年4月より株式会社PARTYチーフ・テクノロジー・オフィサーに就任。2013年9月、PARTY NYを設立。2018年、テクニカルディレクター・コレクティブ「BASSDRUM」を設立。
これまでリアルトークイベントとして開催してきた「FINDERS SESSION」は、グループ会社である株式会社シー・エヌ・エスがサービスサポートを行う「Cisco Webex Events」を利用したオンラインイベントとして実施。
新しい働き方を体現する、FINDERSの連載陣。上から時計回りに/フィラメント代表取締役CEOの角勝氏、BASSDRUM Tech Directorの清水幹太氏、ソニックガーデン代表取締役の倉貫義人氏。左/FINDERS編集長・米田智彦。
「個人」の生き方が変わる!大変革の時代がすぐそこに
Withコロナ時代の「個人」の変容について、編集長・米田智彦が真っ先に水を向けたのは、7年間ニューヨークに在住し、なんと現地で新型コロナウイルスに感染し、すでに治癒している清水幹太氏。ご本人によるコロナ闘病記は過去記事を読んでいただくとして、感染を経て、個人的な心境の変化について清水氏が口火を切った。
清水:コロナによって、今後10年くらいで起こるはずだったことが、たった数カ月に凝縮されて起きました。変わった認識は、「時間>空間」ということ。すでにビジネスが止まっている状況下(5/14時点)、ニューヨークにいても東京にいてもあまり変わりなく、「空間にいる」という物理的な意味がないなと実感しています。
また、家でついダラけしてしまいがちな「Stay Home」期間中の工夫について清水氏は、「あえて囚人のように数分刻みできっちりスケジュールを立てている」とのこと。「空間の縛りが全体的になくなっているからこそ、これからは時間の価値がすごく大きくなる」と語る。
米田:『時間資本主義の到来』という本にも、今は多くの人が「物」よりも「時間」にお金を使う時代になり、洗濯機のように効率を追求した技術が今後も加速度的に進むと思ったら、そうではなかったということが書かれていますね。
それにしても、清水さんのカレンダーには本当にスケジュールがみっちり入っていますね(笑)。これってどんな心境でこなしているんですか?
清水:僕は受注型の人間で、制約を課された方が楽なタイプ。なので、日々タスクをひとつずつこなしていくことが気持ちいいし、楽しいですね。
一方、角氏は、Withコロナ時代に必要とされる個人の能力について、「磁力」のある人だとした上で、私見を述べた。
角:「磁力」とは離れていても人とつながる力があることを指します。これからますますリモートワークリテラシーが高まって、そうした磁力のある人が増えるでしょう。磁力のある人は人を惹きつけることができるので、リモートでも信頼を勝ち得ることができるわけです。
米田:コロナによってリモートワークができることが世界的に実証されましたが、倉貫さんの会社「ソニックガーデン」ではすでに何年も前から全社員がリモートワークをしています。個人と組織を結ぶ磁力をどのように発揮したのですか?
倉貫:社員は19都道府県に在住していますが、みんなとつながっていて、ネットは磁力を伝えられるというのが実感としてあります。
コロナ禍の今でこそソーシャルディスタンスが標準化していますが、これまでメディアで取り上げられると、「ちょっと変わった会社」という扱いで、リモートワークはマイノリティでした。自分たちはオンラインで普通に仕事しているのに、世間からは、「なぜかいつも家にいるお父さん」に見られがち(笑)。でも、このご時世になってリモートワークがやっと社会的に許容されるようになりました。
さらに、最近広がっている「オンライン飲み会」についても、ソニックガーデンは先駆けだ。
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倉貫:うちでは恒例の「リモート飲み会」をマスコミに紹介された時、ツイッターなどで、「あんなのないわ」などと酷評されましたが、今は掌を返されたように評価が違っています(笑)。これを機に、多様性を許容できるやさしい社会になるといいなと思います。
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ここで、在宅だけにダラダラと続きがちな「オンライン飲み」の上手な切り上げ方のヒントを角氏が提案。
角:長引くオンライン飲みって疲れませんか? 終了時間に合わせて「蛍の光」をかけるのがおすすめです(笑)。
週5ペースでオンライン飲みをしていて、その気軽さを実感する米田からは、「アフターコロナの時代も、飲食店での通常飲みとオンラインが共存するのでは?」という意見も出た。
当日は、4者が同じ「ザ・コーヒーショップ」のコーヒーをシェアしながらトークを展開。