組織のあり方はどう変わるべきか?
話題は「個人」から「組織」のあり方へ。「会社や組織など人が集まる場所の変容」について3者の見解を聞いた。
清水:Withコロナやアフターコロナに向けて、既存の組織のスタイルがなくなり、出勤や勤務時間の枠がなくなれば、あとは時間の使い方だけに。そうなれば、2時間はこの会社に、残りは何をするというふうに働く人がコントロールできるし、会社に対する帰属意識が薄くなるのでは?
角:これから組織で求められる働き方は、組織の中で忠実に働く「蟻型」から「コヨーテ型」へ移行するのではないでしょうか。コヨーテは地球上でもっとも適応力のある動物で、生活する場所にも縛られません。ちゃんと発信力もある一方で、群れの力も強い。組織というグループで生きていくには個人の力がないと生き残れません。
つまり、人に置き換えると、ビジネス環境の激変が起きる今、個の力をちゃんと発揮できて、プロジェクト型で動けることが重要です。コロナ禍において、リモートワークをしながらパフォーマンスを上げることは、文字が読めることと同じくらい普通のリテラシーになりました。
倉貫:これまでの資本主義社会では、雇う人がカルチャーを作ってきましたが、組織にとってカルチャーがより重要になるのでは? たとえばイーロン・マスク率いるPayPalに所属していたスタッフが、その遺伝子を受け継ぎほかでも活躍するみたいなことが起きると思うんです。
ソニックガーデンでは「遊ぶように働く」が理念にあり、そこに共感する社員が集まっていますが、それができるのは、「自律と信頼関係」があるからです。
お互いの顔が見えないリモートワーク下では、信頼するしかありません。これまでオフィスではそれがなくてもなんとかなっても、リモートワーク下ではそれが必須です。
ビジネスの流れはどう変わっていくのか?
外出自粛によって事業継続できない企業や商店が増えて、社会基盤さえ揺るがされる状況下で、世界中で新しいビジネスの手法が模索されている。話題は今後の新しいビジネスの方向へ。
清水:インタラクティブ動画制作を手がける仕事柄、世の中がデジタル化していくことは既定路線という認識です。ただし、10年がかりで進むだろうと思っていたものが、たった数カ月で進んでしまい、いよいよインターネットの最終形態に向かうのでは?
実はインターネットの普及率を世界平均で見ると58.7%とそう多くはありません。これからコロナの第2波や南米・アフリカなどで蔓延していく中で、もっと途上国にもネットが広がっていくでしょう。
実はSNSも成熟しているとは言えず、現状ではフォロワー数の多い人の意見が強い影響力を持つ時点で、マスメディアと変わりません。それは時代の徒花としてここ数年で終わり、まだSNSがニュートラルだった2005年頃に回帰して、あらゆる生活シーンに広がるのが最終形態ではないかと考えています。
それから教育現場では場所を選ばずオンライン化が進み、知識・社会・地域の格差がなくなって平坦化していくのでは。インターネットが世界中で標準になれば、社会的な価値観も変化し、ビジネスの目指す方向も変わるでしょう。
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一方、角氏はWithコロナ時代の経済活動を川の流れにたとえて説明。「水量(経済活動)は減るが流れは速まる」として、コロナによって既存のビジネスがせき止められる一方で、短期間でデジタルシフトの流れが増水し、加速しているという(角氏の次回連載にて今後、詳しく紹介)。
役所や自治体はどう変わる?
コロナ禍で今注目されるのは、給付金や事業の持続化給付金のスピーディーな手続きについて。かつて役所に勤務していた角氏が、今後の役所のデジタル化について意見を述べた。
角:どんなにリモートワークが普及しても、一方でハンコを押すために出社する人が一定数いると聞きます。給付金関連の手続きでは、マイナンバーを持っていない人がいかに多く、窓口での手作業がいかに効率悪く、コストがかかり、リスクがあるかということを再認識させられました。
日本は、誰かが取り残されたら待ってあげるやさしい文化があるんですよね。でも、コロナによって初めて社会正義イコール、デジタルとなったことで、今後はもっとデジタル化が進むでしょう。
倉貫:今後はもっと物やサービスの自動化が進み、合理化されていく中で、ハンコ問題もITで合理的に解決すると思います。すると人に残るのは考えたり企画したりする仕事です。本質的な仕事の成果とは何かということを改めて追求した先に、とるべき手段も変わってくるのではないでしょうか。
コロナがきっかけの大きな意識変容が、未来を創る
ライブ中継時には、視聴者からTwitterなどを通じ、多くの意見や質問が寄せられた。視聴者からの質問は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れている地方は、今後どうなるか?」。清水氏、角氏が実感を込めて回答した。
清水:長年ニューヨークに住んできて、パンデミックによって人口密度の高いところで暮らすリスクに直面しました。それは東京も同じだと思います。本来、コストを下げるために都市に集まっているのに、集中すれば逆にリスクがあるし、そもそも家賃も高い。都市で暮らすメリットが薄れると、国内外問わず、中都市がたくさんできて平坦化していくのではないでしょうか。
角:大阪に住んでいて思うのは、日々の業務の中で、テキストチャットやビデオ会議で十分東京の人とも仕事できるということ。インターネットがどこでもドアを実現してしまった以上、そうしたデジタルの恩恵は、地方の人こそもっと知るべきだと思います。
米田:最後になりますが、2020年は10年後、どんな年だったと言われると思いますか?
清水: Stay Homeな状況があったことは歴史に記録されても、それを機にどうビジネスが変容したかということは、何もなかったことになると思います。なぜならイノベーションは喉元すぎれば忘れられるものだからです。
角:10年後に今の状況を振り返った時に、「その変化がすべて1年で起きたの?」と驚かれると思います。だって未知の疫病のせいでみんな一歩も外に出られなくなり、世界中のビジネスが止まったなんて、半年前の自分に教えても絶対信じませんよね(笑)。
倉貫:歴史的に見ても、かつてペストで4人に1人が死んだ時代、農業が衰退して従事者の地位が高まりました。そんなことは当時もまったく予測できなかったはず。今でさえ、最近の漫画を読むだけでも誰もマスクもしてないし、学校や社会が身近にあって三密の状況だなと感じるほど。時代劇ならまだしも、現在の状況とのギャップを感じるなんてすごいなと思います。
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最後に米田は、「今回飛び出した多彩な内容のトークをぜひ若い人にも見ていただき、自分なりに咀嚼して自分たちの時代を作っていってほしいですね。そのために我々はメディアを作っています」と視聴者にメッセージを込めて締めた。
今後もFINDERSでは、Withコロナ時代をみんなで乗り越えていくための智慧や情報を記事や「FINDERS SESSION」などを通じて発信していきます。ご期待ください。
本イベントはグループ会社であるCNSのオンラインイベントサービスを利用して配信しました。
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