大量の痛み止め薬がすべて不要に
写真左は「バッズ」と呼ばれる花穂を乾燥させたもので、これをタバコの葉に混ぜたり、あるいはそのまま紙で巻いたりして吸引する。アメリカではこうした密閉性の高い容器に入れられているが、カナダではジップロックのような簡素な入れ物に入っているという
―― なるほど。日本で処方された薬と大麻の両方を試してみて、どんな違いがあったのでしょうか?
工藤:日本で処方された痛み止めだと、服用後30分ぐらいで痛みが取れてくるイメージです。ところが大麻だと吸って30秒~5分ぐらいで痛みが気にならなくなる。就寝前に吸っておけば翌日ずっと痛みがありません。最初はかなりびっくりしました(笑)。
―― 今はもうヘルニアが治ったのでしょうか?
工藤:まだ治っていませんが、日本で使っていた痛み止めは飲んでおらず大麻のみです。本当に辛い時だけ湿布を使っていますが、それも2~3カ月に1回ぐらいですね。
―― 大麻は医学的にどこまで「効く」と言われているのでしょうか。
工藤:私は医療の専門家ではないので断言は避けますが、「大麻が医学的・科学的に効果がありそうだ」という論文は世界各国で出てきていますし、科学的な成果が徐々に現れ始めているということは感じています。個人的な感想としては、「完治」ではなく「緩和」として作用するという印象を受けました。
ちなみに大麻使用後に日本の病院で検査を受けたところ、「ヘルニアは改善したと思われる」ということは言われましたが、大麻が直接的に影響しているのかどうかはわからないということでした。ただ書籍にも書いたのですが、最初にラスベガスに行った際に1週間で1~2本ほど、毎日少しずつ大麻を吸って帰国したところ、手術で切除する予定だった大腸の悪性ポリープが何故かなくなっていたということはありました。
―― ちなみに工藤さんはどのように大麻の品種を選んでいたんですか?
工藤:私は嗜好目的で楽しみたいというよりは「これがヘルニアの痛みに効くのかどうか」をメインに選んでいました。最初はとにかくいろいろ買って試してみて、慣れてくると「この匂いは自分に効く品種のはずだ」ということが結構わかってくるものです。ワイン通のフリをしてテイスティングで決めるみたいな話ですが(笑)、個々人で好みが分かれるビール銘柄の好き嫌いぐらいのものをイメージしてもらえると良いと思います。
唯一危ないのはホームレスが売っているものですね。よくわからないものを混ぜていたり、育ちきっていないものを売っていたりだとか。国もかなり摘発を進めていますが、ショップより安いので観光客が買っちゃっていますね。
―― 現在、工藤さんはカナダ在住で大麻関連ではないお仕事に就いていらっしゃるということですが、カナダの大麻事情はビジネス含めどのようになっているのでしょうか。
工藤:カナダは2018年10月に完全合法化が実現しましたが、2019年にはバンクーバー市内であれば400軒ほどあったショップが激減してしまいました。
バンクーバーのサンセットビーチで、毎年4月20日の4時(16時)20時分に一斉に大麻に火を付けるという大規模イベント「420(フォートゥエンティー)」の模様(2019年に撮影)
―― 一体何があったのでしょうか。
工藤:ショップの営業を国の許可制にして、税金を取りつつ優良店だけを残そうという考えだったのですが、そのハードルが高すぎて許可が取得できないお店が続出してしまったのです。閉店したお店のほとんどが医者常駐のところで、ほぼ全部なくなってしまいました。他には国の許可を取っていたはずの大麻農家が剥奪されてしまう、なんていうこともありました。
―― それでは、現状は違法ショップで買うことを余儀なくされてしまうということでしょうか?
工藤:そうした側面は確かにありますが、新型コロナウイルスの感染拡大以降は通販での購入がメインになりましたし、むしろそうした現状の方がお店も増えている気もします。
大麻ショップの検索サイト「Weedmaps」よりバンクーバー周辺の大麻ショップ一覧ページ。新型コロナウイルスの影響で通販対応のみになっていた店も多かったが、徐々に店舗営業も再開し始めているようだ
―― コロナ以後の変化はどうですか。ロックダウン直前は世界各国で行列ができていたなんてネットニュースも流れていましたが。
工藤:外出規制を守ってしまったのであまり取材ができていないんです(苦笑)。先ほど通販が増える傾向にあるというお話をしましたが、最近ではネットの広告がより増えてきた印象もあります。ただ通販だとどうしても事前に匂いがわからないので、どうしても自分に合うか・効くかわかりづらくなってしまうのが辛いですね。