CULTURE | 2020/06/09

ヘルニアの激痛に耐えかねて海外へ…異色の「医療大麻の使用レポート」を執筆した『マリフアナ青春治療』著者インタビュー

2020年3月、『マリフアナ青春治療』(KKベストセラーズ)という本が出版された。
著者の工藤悠平氏はコンサルティング...

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今の日本でも合法的に販売されているCBD製品の問題点。そして医療大麻解禁なるか?

工藤氏がカナダで育てていた苗。すべて同じ品種の種から育てたものだが、かなり個性が違うことがわかる

―― 日本における大麻の話は「音楽がより気持ち良く聴こえる」に代表されるようなサブカルチャー的に語られてきたものが大半であり、医療的な効能はよほど興味を持って探しに行かないとほとんど見られません。こうした現状について工藤さんはどう思われますか?

工藤:個人的な意見としては、日本で議論が進まないのは「大麻=犯罪=危険」といった食わず嫌いがかなり作用していると思っています。私自身、嗜好目的で使っているわけではなくとも日本の友人と普段の会話で話題に出すのははばかられてしまいます。

ですが、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、経済面も含めた不安が拡大する中にあっては需要がより増えるのではないかとも感じます。自宅で簡単に育てられますし、リラックス効果を求める人もより増えるのではないかと。

―― 日本でも大麻から陶酔作用のない成分「カンナビジオール(CBD)」のみを抽出したオイルや食品など(ストレス解消や快眠、湿疹・ニキビ対策、アンチエイジングなどの効果があるとされる)の販売・使用は合法ですし、この数年はショップも増えてきました。

工藤:厚生労働省も2020年4月にCBD製品輸入に必要な書類と審査方法を明文化しましたね。実は私も2019年ごろから日本向けのCBDオイルの輸出販売ビジネスに携わろうとしたことがあったのですが、新型コロナによって貿易というビジネスそのものにも不安定要素が出てきてしまったため、結局頓挫してしまいました。

そしてCBD製品でのビジネスをする際、日本の大麻取締法にも問題があるんです。法律では「茎と種を使うのはOK」となっているだけで、少しでも葉や花穂(花冠)が混じっていると、それだけで「大麻」に該当し、違法になってしまいます。「陶酔作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)が入っているものはダメだけど、陶酔作用のないCBDだけならOK」とはなっていないんです。

大麻入り飲食品の一例。大麻入りだが陶酔成分であるTHCが入っていないものもある。それぞれのパッケージにはTHCの含有量も表記されているので、ある程度は自分で摂取量もコントロールできる

―― つまり「CBDだけを抽出していても、茎・種以外を使っていると違法になってしまう」ということですね。

工藤:そうなんです。医療大麻を含め解禁している国ではそんな処理をしないため、日本向け専用に加工するとなると、そもそもそんなことをお願いできる業者がかなり限られるうえ、コストも上がりますし効果も落ちてしまいます。

現状、日本で流通しているCBDオイルは10mlで1万円前後と決して安くはないですが、「茎と種だけならOK」という制限がなければ価格は4分の1ぐらいに落ちるのではないでしょうか。

―― 医療大麻への期待は日本でも高まっていますが、ワイドショーの低レベルな薬物報道やネットの反対論者から出る十把一絡げの「ダメ。ゼッタイ。」なイメージなどに引きずられすぎて解禁への機運の高まりは見られません。工藤さんは日本の情勢についてどう思われますか?

工藤:私自身、できることなら日本に住みながら医療大麻を使いたかった人間ですが、残念ながらこの数年でどうこうなるとは思っていません。ただ、去年東洋経済オンラインが掲載した、島津製作所が北米で発売した大麻の成分分析装置の記事が話題になっていましたし、日本でも徐々に「嗜好目的の大麻」と「医療目的の大麻」の違いの認識が進んでいくのではないかとも思っています。

大麻に関しては、カナダに実際住んでみてもまだまだわからないことだらけで、現在も少しずつ勉強して理解を深めているところです。さらには大麻が解禁されたカナダ、アメリカでは、これまでになかったような発想の関連商品も徐々に出始めています。今後も新しい発見があるたびになんらかの形で情報を発信していきたいと思います。


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