EVENT | 2020/06/11

ネットメディアの文脈を熟知する人気ライター・ヨッピー氏、中川淳一郎氏が「博報堂」入り!アフターコロナは組織の枠超えが加速?【後編】

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人気ブロガー・ライターのヨッピー氏。

ヨッピー:はい。普通のサラリーマンでした。インターネットを見ている側でしたが、ブログとかテキストサイトは当時からやっていましたね。

受けるネットニュースを体感マシンとして肌感覚で理解

嶋:そう思うと、中川はやはり先駆けだよね。当時、新聞社や出版社の多くは、Yahooがニュースやコンテンツ配信を頼みに行っても、まだまだ「ネットで配信したら新聞や雑誌が売れなくなる」というスタンスで突っぱねられました。

一方でYahooをはじめ、ライブドア、mixi、gooなどが独自のニュース編集部を作り、それに並んで中川はAmeba Newsの責任者に。藤田さんもすごいよね。Tシャツを36枚しか売らなかった男に、『Ameba News』を任せるなんて(笑)。

メディア論的には「livedoor ニュース」や「Ameba News」が登場し、トラディショナルなジャーナリストからの「これはニュースなのか」といった見方も含めて、一部始終を体験しながら、ネットニュースがマネタイズされる仕組み、いかにネット民に受けるか、といったことを日々“人間体感マシン”として中川は奮闘してきたわけです

民衆に受けるネットのノウハウは、やがて広告にも波及

―― ネットの勢いやカルチャーを感じながら、広告業界への影響はどのように感じていましたか?

嶋:2008年に25周年記念として『北斗の拳』の新聞広告が出たんですよ。マンガ上だと端役が、その新聞広告では大きく描かれています。それは、「ネット民に受けるから」ということをさっそく中川が解説してくれました。

ということは、この広告の制作サイドはネット民がどう反応するかを理解した上で、広告のグラフィックを作っていたわけです。これからの広告の作り方が変わると感じ、衝撃を受けましたね。

それから、出版社にとってネットニュースのビジネスはマネタイズできると考え、中川といろんな出版社にプレゼンしに行きました。実はその流れで、中川は2010年から小学館の『NEWSポストセブン』を任されるようになったんです。

―― そうだったんですね。その頃、ヨッピーさんはどんな仕事をしていましたか?

ヨッピー:まだサラリーマンですね。上京して商社に勤務していました、僕がいた事業部は小売店向けにものを卸す仕事で、バイヤー相手に商品の値段どうしようとか在庫の確保はどうしようとかそういう話をする営業です。

とにかく会社はジャンル問わずなんでも扱っていたので、今のようなコロナ禍であれば、絶対にバイヤーから「マスクある?」と言われるでしょうね。なかなか仕入れられないけど、社長から厳命されているから絶対探してきて!と言われる感じです。

―― サラリーマン時代はどんなインターネットサイトを見ていましたか?

ヨッピー:プライベートでは『オモコロ』でちょろちょろライターの真似事というか、変な記事を書き始めました。もともと[Yahoo!]ジオシティーズなんかで、今でいうブログをやっていまして、その流れからですね。

大学生の頃から書いていて、内容はバイト先の店長がムカつき過ぎるから、空想上で斬殺するといったことを書いていました(笑)。

嶋:それは文学だね。自己表現して、ちょっと留飲を下げていた感じ?

ヨッピー:まったくその通りです!ポエムな感じで、めちゃくちゃなことを書いていました。僕、自己顕示欲が強いんですよ。当時から。今振り返ってみると、中・高とわりとクラスのリーダー的ポジションにいたんです。でも、社会人になるといきなり下っ端もいいところじゃないですか。クライアントにめちゃめちゃキレられたり。

しかも社会の歯車でしかないし、大企業の一平社員なので、満たされない自己顕示欲をインターネット上で発散していたのが当時ですね。

小学館が運営するニュースサイト「NEWSポストセブン」任され、1年で1億PVを達成

―― 一方、「NEWSポストセブン」の編集を任された中川さんは、就任当初からPVは好調だったのですか?

嶋:「NEWSポストセブン」の編集者たちは雑誌を作るプロであり、読者を惹きつけるタイトルセンスもあって、ベースの週刊誌である『週刊ポスト』も『女性セブン』は今も30〜40万部発行されています。

でも、ウェブの文脈は雑誌の文脈と違うって気づいたんですよね。当時の編集長のすごいところは、彼らが週刊誌を作ってきた歴史からしたら素人に近い中川を呼んで、三顧の礼で迎えたことです。『Ameba News』の編集を4年経験している中川のキャリアが生きたわけですね。

中川は週刊誌の記事をウェブに落とし込むなら、ネットの文脈に合うようにリライトしなきゃダメだと提案しました。週刊誌で受ける記事は、「そら、見たことか」といった主観的な記事が多いけど、ネットユーザーは、どちらかと言えばそういうことは自分で決めて、客観的な情報を読みたい。だから、主観的な部分は削除した方がいいと具体的にアドバイスし、結果、「NEWSポストセブン」は始動後たった1年で1億PVに達しました。

週刊誌の記事はすべて独自取材された一次情報。なにしろ、松田聖子に直接取材しているメディアですからね。“こたつジャーナリスト”的に、実態としてはスポーツ新聞に載っている情報をリライトするようなメディアとはクオリティが違います。中川は媒体の価値をちゃんと理解し、ネットニュースの仕組みとしてこのネタは受けるとか受けないといったことを肌感覚で会得していくわけです。

中川:当時手がけていた低予算のネットニュースの記事は、さまざまな著名人のブログをソースにしたり、「デイリーポータルZ」や「オモコロ」に影響を受けていたので、「体を張りました系」を企画したりすることが多かったですね。

―― 話は2010年代に突入してきましたが、この頃、ヨッピーさんはどうしていましたか?

ヨッピー:僕はそろそろ会社に飽きて、プライベートで自己顕示欲を満たしていたインターネットの方を本業にしたいと思い始めました。とは言え、当時はネット記事の市場が大きくないので、ウェブライターという仕事だけで飯を食える人なんか当時、ほとんどいなかったんじゃないかな?

そこではじめはライターではなく、インターネットの会社に転職しようと考えて面接を受けたんですけど、「ワシ、ネット上ではまあまあ人気あるんやで?」とか思いながら面接行ったら2次面接で落とされました(笑)。

それで面接受けるのも面倒だし、「とりあえずサラリーマン時代の貯金もあるし、半年くらい遊びながら転職活動すればいいや」と思って「仕事辞めて暇だ!」とかTwitterやブログに書いていたら、「うちでも書いてくれませんか?」という依頼が結構来るようになりました。

どうせ暇だしと思って気軽に受けているうちに、気づいたら「これで飯を食えるかも」となって、就活するのはやめてそのまま今に至りますね。

―― ヨッピーさん、中川さんともに歴史があり、それぞれのキャリアと実績を積んだ上で博報堂にジョインしたわけですね。今後のケミストリーが楽しみです。最後に、今後のビジョンについて教えてください。

ヨッピー:広告ってネット民に嫌われがちじゃないですか。でも、メッセージが心に響くいい広告もたくさんありますよね。僕もみんなを勇気づけたり、喜んでもらえたりするような広告をたくさん作れるようになれたらいいなと思っています。

嶋:博報堂が持つスキルやノウハウだけでなく、もっと異能のさまざまな業種の人が集まり、ゆるい連携によって異なる才能同士が触れ合うことで、ケミストリーが起きるし、学び合うことができます。そういう意味でも、もっと多様な人にジョインしていただき、連携しながら大きな案件をヒットさせたいですね。

中川:僕が個人的に感じているのは、メディアと広告業界の断絶。博報堂の人が編集者やディレクター、プロデューサーに対して、直接声をかけちゃいけないという空気があります。

「それってオレらがやっていいことなの? 正式なルートを通さないとその人達にアプローチできないんじゃないの?」と。でも、別にメディアの人って「いいネタがあったらください」というスタンスです。「声をかけちゃいけない」ということではない、と伝えたいです。

ヨッピーさんや僕に声をかけていただいたように、もっとほかの会社の人にも声をかけてコミュニケーションをとっていいと思うんです。これを機に、「正式なルートを通すべし」といった格式張った暗黙のルールをぶっ壊したいですね(笑)。

―― ぜひ今後はFINDERSにも気軽にご一報いただければと思います。ということで、本日はありがとうございました。


ネットメディアの文脈を熟知する人気ライター・ヨッピー氏、中川淳一郎氏が「博報堂」入り!アフターコロナは組織の枠超えが加速?【前編】

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