NFTというと、NFTアートと言われるようにデジタルアート作品の唯一のオリジナルの証明として説明されています。しかし、このところのニュースを見ていると、アートだけでなく、さまざまな応用が行われつつあるのが分かります。
例えば、ビールで有名なバドワイザーがNFT事業に取り組むことが発表され、世界中にある醸造所から新鮮なビールを入手できるNFTなども考えているそうです。
今回は、アートの証明書としてのNFTではない、新たなNFT技術の応用について見てみたいと思います。『焼却』することで発行されるバーナブルNFT、イベントによって変化するダイナミックNFT、NFTを組み合わせることで新たな価値を生むコンポーザブルNFT、そして、1つのNFTを分割するフラクショナルNFTについて説明します。
足立 明穂
ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家
シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わることを確信。帰国後は、ITベンチャー企業を転々とする。また、官庁関係の仕事に関わることも多く、P2Pの産学官共同研究プロジェクトでは事務局でとりまとめも経験。キンドル出版で著述や、PodcastでITの最新情報を発信しつつ、セミナー講師、企業研修、ITコンサル業務などをおこなうフリーランス。
すでにあるNFTを『焼却』して手に入れるバーナブルNFT
唯一無二のNFTトークンを『焼却』、つまり、二度と使えない状態に消滅させることで手に入る新たなNFTトークンのことを、バーナブルNFTと言います。
NFTを使えなくするというのは、実は簡単なことで、誰も秘密鍵を知らない特別な口座にNFTトークンを入れることになります。秘密鍵が分からないので、それ以降、移動させることができず、所有者も変えることができません。つまり、暗証番号も分からない、所有者も分からない口座に入っているお金と同じで、実質、価値がなくなり、焼却したと表現されます。
このバーナブルNFTの事例としては、デジタルアーティストPak氏が運営するプロジェクトがあります。Pak氏は、老舗のオークションハウスであるサザビーズでも取り扱われる作品を生み出すようなアーティスト。2020年12月には、100万ドル(約1億900万円)でNFTアートを販売しています。
このプロジェクトでは、NFTトークンを焼却すると、ASH(アッシュ)トークンが手に入ります。『ASH』とは、『灰』という意味なので、まさに、NFTを焼却して灰が手に入るのです。
そのASHトークンは、Pak氏の特別な作品と交換できるようになるとのことで、アートの価値を問い直す新たな試みとして注目されています。
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