EVENT | 2021/07/12

ブロックチェーンに既存ビジネスは参入できるのか【連載】ブロックチェーンと暗号資産が切り拓く未来の世界(2)

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現在の暗号通貨は投資をするアセットクラスの一つだという認識が一般的ではない...

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ブロックチェーンで出来ること、出来ないこと

当初ブロックチェーンはさまざまな分野でのイノベーションを期待されていました。医療、物流、食品、金融、証明書など何でもブロックチェーンにすることでイノベーションが起こると思われていました。しかし物理的に存在する物をデジタルのブロックチェーンの世界で扱うにはあまりにも障壁が大きかった。IoTの分野も日々進歩していますが、実用的なレベルで物理的な商品をブロックチェーンの情報に結びつけるまでにはまだ至っていません。デジタルデータですらブロックチェーン上に保存する事が困難で、ブロックチェーンを使ったDropboxやiCloudのようなクラウドのファイル保存サ―ビスもまだ実用段階にありません。

では現在ブロックチェーン上で実用的なレベルで何ができるのでしょうか。

それは金融サービスです。この1年で多くの新しいブロックチェーンプロジェクトは金融の分野で花開いています。ブロックチェーン上で世界中に分散化されていて管理者がいない金融サービスを総じてDecentralized Finance。通称「DeFi」と呼ばれます。このDeFiの分野で毎日新しいイノベーションが起こっています。

DeFiの歴史は人類の通貨と金融の歴史と似ています。

DeFiという分野はビットコインがもたらしたトークン化された通貨という新しいデジタル通貨の発明から始まりました。紀元前5000年前に人類は貴金属を使った物々交換を行い、金や銀などに経済的価値を見出し、世界で初めての通貨を発明しました。古代の時代に人々が金で取引をしていたように、ブロックチェーン上でビットコインを通じて安全にデジタルの取引ができるようになりました。そして金と同様に希少価値があるビットコインがデジタルゴールドとも呼ばれる理由がこれです。

さらに、紀元前4000年頃にシュメール人によって最初のお金の契約が発明されました。支払い期日や対価を受け取った時に初めて支払い義務が発生するなど、人類史上初の金融サービスが作られました。この契約情報をデジタル化したものがイーサリアム(第二世代ブロックチェーン)のスマートコントラクト機能です。ビットコイン(第一世代ブロックチェーン)では取引の資産の金額しか記録できないところ、イーサリアムでは取引の契約書を作成し記録することができます。これによってお金の支払い期日や条件を実際の経済活動にリンクさせることができました。イーサリアムのスマートコントラクトを利用すれば、確実に相手の資産を担保にとったり支払い期日に支払わせることができます。これはお金自体に契約条件のプログラムを書き込めるので、支払い期日になると自動的にそのお金が支払いされます。通貨が紙ではなくデジタルトークンなので支払い契約そのものを通貨に直接プログラムできるわけです。

このようなお金の契約が作られた後、次に人類が発明したものが株式です。

契約書が出来たことによって人類は1602年に世界発の株式会社、東インド会社を設立しました。多くの人から資本を集めて事業を行うことが可能になりました。これはイーサリアムのICO(イニシャル・コイン・オファリング(英: Initial Coin offering )の略称で、暗号資産の新規発行による資金調達方法の一つ)の仕組みと同様であると言えます。ICOを利用すれば誰でも自分の株式のようなトークンを発行でき、それをブロックチェーン上の分散型取引所(DEX)でワンクリックで上場することができます。これにより世界中の人がブロックチェーンを通じて誰でも何処でも簡単に資本を集めることが可能になりました。

そこから人類は売買、貸付、保険、デリバティブ商品などさまざまな金融商品を編み出していきました。この流れは現在の分散型金融DeFiのイノベーションでも同じです。例えば、災害保険はDeFiならではのアプローチができます。スマートコントラクトと呼ばれるデジタル化された契約書に台風の気象衛星データと一緒に保険金をかけることが出来ます。これによって、台風の被害にあった場合、ブロックチェーン上の契約書が自動的に台風の被害地域を気象衛星データから割り出し、被害にあった地域の人の口座に自動的にそして即座に保険金が送金できる仕組みを作れます。

さらには現在イーサリアムを超えようとする複数の第三世代ブロックチェーンが台頭してきています。この新しいブロックチェーンの技術によりこれまで人類が既存金融技術では開発できなかった未だ見ぬ新金融商品が誕生することが期待されています。

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