EVENT | 2021/07/07

「派遣社員だけテレワーク禁止」「求めたらクビ」は違法の疑いアリ。ブラック企業と戦うユニオン共同代表が語る実態と対策【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題

特集記事【日本でテレワークが進まない「5つの要因」。経営陣・中間管理職・現場が明日からすべきことはこれだ!】はこちら
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悩んでいるのはあなた一人だけではない

―― 声を上げる側としては、やはりそのことによって会社から圧力がかかるのではないかという心配も大きいと思います。総合サポートユニオンとも連携しているNPO法人 POSSEが、テレワーク適用を訴えて解雇された派遣社員の裁判のサポートをしているという件も話題になりました。

青木:実際、我々のところにも同様の相談が何件も届いています。ただ正直なところ「誰でも絶対に、簡単に解決できます」とは断言できない問題ではあります。それでも難しいからと思い悩んでいるだけでは、恐らく一生解決しないんです。

―― 確かにその通りです。

青木:そもそもテレワーク差別は「非正規社員が受ける数多くの差別的待遇のひとつ」でしかないんです。なぜこんな扱いをされるのか、いくらなんでも酷すぎないか、これまでもひどい目に遭ってきたけど我慢して何とかやってきたのに、命に関わる局面でもまだ差別するのか。そうして積もり積もってきた不満が遂に爆発したのが今回の一件です。

会社側は「非正規社員は怒らないだろう」と思っているんですね。多くの人が我慢しちゃっているとのもありますが、対抗手段として雇い止めすることができてしまってきた。そこに対して「これは我慢いかないよ」という抗議をぶつけることで変わってくることもある、というのが先程お話しした非正規社員の同一労働同一賃金の裁判の件だったりするわけです。

立場が弱い、非正規労働者が一人で闘えというのは無理があるので、同じような状況の人たちがつながっていく必要があります。組合の言葉では「連帯・団結して」という言い方をしますが、同じ境遇、同じニーズを抱えている人たちが今は皆バラバラに孤立してしまっている。そうした中でもSNS上で繋がったり労働組合の中でつながったり、私たちが組織するLINEのオープンチャットなどを通じて少なくとも「同じ境遇の人がいるんだな」ということが実感できる、「ネットで署名活動をしたらこんなに集まった」ということを通じて一人ではないことを実感できる、自分の訴えていることは正当な権利なのだと実感できる、そうしたことを積み重ねながら集団でものを申していく必要があると思います。同じ職場で仲間が見つからなければ、違う会社の人同士でつながるのも良いと思います。

「不誠実な対応をする企業」は世論のプレッシャーに晒される

「シフト制労働黒書」を掲載した首都圏青年ユニオンのウェブサイト

―― 総合サポートユニオンと同様に、非正規でも1人からでも加盟できる労働組合を運営する、首都圏青年ユニオンが先日発表した「シフト制労働黒書」を読みました。これには緊急事態宣言で飲食店などのシフトに入れず休業補償もされないというアルバイト労働者が会社に補償を訴えた事例集も載っていますが、意外にも、と言うと語弊があるものの「交渉した結果、少なくないケースで補償が支払われているんだ」ということに驚きました。

青木:そうなんですよ。我々も結構休業補償問題を扱っているんですが、驚くほど解決率が高かったです。9割以上は取れている。コロナ禍での非正規労働者の権利行使は、みんなハードルは高く感じていらっしゃって正直、大勢の人が立ち上がったとまでは言えないのですが、やった人たちの結果は総じて良好です。

労働基準法では「事業者都合の休業の場合、給与の6割以上の補償を支払う必要がある」と罰則付きで定められているんですが、驚きなのは休業補償をその規定以上、10割勝ち取っているケースがほとんどだということです。

なぜそうなったかというと、やはり世論が大きく関係しているのだと思います。多くの人は「政府や自治体の『自粛要請』で休業させられているのに、補償が無いのはかわいそうだ」と感じていると思いますし、そうしたニュースは注目度が高いですよね。それは企業側にとってもプレッシャーであるということが有利に働いたと思います。

―― 「シフト制労働黒書」に掲載された事例だと、富士そばのケース(緊急事態宣言によって労働時間が大きく減少していたアルバイトの休業補償が、訴えにより10割支払われた)は特に話題になりましたし、SNSで「そういう待遇を強いるなら食べに行くのをやめようかな」という反応も多く見られました。

青木:そうですね。それが社会問題化するということだと思います。テレワーク差別に関して同じような問題提起ができているかと言えばまだ途上だと思いますが「それは許されないでしょう」「顧客や取引先が知ったらどう思うか」という議論ができていけば、組合での交渉で解決できる問題だと思っています。

―― この記事は企業側・正社員側の人も多く読むと思うのですが、そうした層の人たちに「非正規社員のテレワーク差別を続けているとこんなリスクがあるぞ」と訴えるためにはどのような言い方がベターだと思いますか?

青木:簡単にこうだとは言えない、難しい問題ですね。テレワーク差別に関しては企業側が何か勘違いをして生じているのではなく、その逆で経済的合理性のある判断をした結果そうなってしまっている面もあり、性善説的に見ることが難しい問題です。

端的に言えば、今は「企業が正社員をテレワークさせるために非正規社員にリスク負担を押し付ける」という側面も大きいわけです。総合サポートユニオンの組合員からも派遣会社から「テレワークできます」と聞いて行ってみたら派遣社員だけはできないというような求人詐欺じみた話も多く耳にしますし、企業側は確信犯的にそれをやっています。

つまり、経済的合理性の観点で企業を説得するのは難しい。その論点ではなく、雇用形態によって人間を差別しちゃいけないよね、社会的な批判につながりませんか、SDGs対応を掲げていますけどそれに反していませんか、というようなロジックになってくるかと思います。

―― 語弊のある言い方になってしまいますが、休業補償=お金の話だと相対的に注目を集めがちである一方、テレワーク差別単体だと「テレワークができていない正社員も多い。それに今すぐ生活の危機に陥るわけじゃないでしょう」と思う人もいるかもしれません。青木さんは「これは非正規社員が受ける数多の差別的待遇のひとつでしかない」とおっしゃいましたが、「そうした数々の非正規差別、いい加減変えていきませんか?」といったより広範な訴えに含めていった方がもしかすると伝わりやすいのかもしれません。

青木:その線はあるかもしれませんね。あとは深刻さを訴えるという観点ですと「非正規社員が出社したままだと、いつまでも満員電車も三密も減らないですし、コロナ感染リスクが下がりませんよ」と言えば分かりやすいのではないかと思います。

加えて、国に対しても労働法制やガイドラインがあるのに守られていないケースがこれだけあるわけで、より強くメッセージを発する、強制力のあるような措置を取ることも求めていきたいと思います。


総合サポートユニオンでは、テレワーク差別を含む労働問題に関する相談を電話・メールで受け付けています。詳しくは公式ウェブサイトをご覧下さい。

■電話番号:03-6804-7650
(平日17~21時/日祝13~17時 水曜・土曜休み)

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※労働相談以外のお問い合わせ(取材のお問い合わせなど)は、TEL: 03-6804-8444(事務局)へおかけください。

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