イラスト:IKUMA
木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎月30本超のコラムを寄稿するほか、テレビ・ウェブ・雑誌などにメディア出演し、制作現場への情報提供もしている。人間関係コンサルタントや著名人専門のインタビュアーとしても活動中。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
2006年からアイドル女優まっしぐら
新垣結衣と星野源が結婚を発表してから、まもなく1カ月が過ぎようとしている。驚かされるのは、今なお「ガッキーロス」の声がやまず、ネットメディアが関連記事をアップし続けていること。新垣は2018年秋の『獣になれない私たち』(日本テレビ系)以来、2年半以上、連ドラや映画の主演がないにも関わらず、これほどの人気をキープしているのだから、国民的女優と言っていいのではないか。
新垣は6月11日の誕生日で33歳になったが、いつの間にこれほどの人気者になったのか。星野源と共演した2016年秋の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)を挙げる人が多いかもしれないが、そもそも同作が大ヒットしたのは、新垣と星野の人気によるところも大きい。つまり、「『逃げ恥』の段階で、すでに新垣の人気は沸騰寸前の状態にあり、同作がダメ押しとなった」とみる方が自然だ。
新垣のキャリアは『ニコラ』のモデルとしてデビューした2001年からスタート。今年で20年の節目を迎えるが、この間ずっと「かわいい」というイメージが崩れていないことに気づかされる。女優業を始めたのは2004年からだが、2006年には早くも長瀬智也主演ドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)のヒロインに抜擢された。
以降、2007年『パパとムスメの7日間』(TBS系)、2008年『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)、2009年『スマイル』(TBS系)、2010年『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)、2011年『全開ガール』(フジテレビ系)、2012年『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)、2013年『空飛ぶ広報室』(TBS系)と『リーガルハイ』(フジテレビ系)、2015年『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ系)と『逃げ恥』まで、ほぼ年1作ペースで主演かヒロインを演じ、どんな役柄でも「かわいい」と言われてきた。
映画でも2007年『恋空』、2010年『ハナミズキ』、2014年『トワイライト ささらさや』、2017年『ミックス。』などで主演を務めてきたが、やはり「演技派女優」や「大人の女優」ではなく、「かわいいアイドル女優」というイメージが先行している。
同じ2000年代中ごろから主演やヒロインを演じ続けていた同い年の戸田恵梨香、1年上の長澤まさみや井上真央、2年上の石原さとみや上野樹里と比べると、「かわいい」というイメージの強さがわかるのではないか。しかも「アイドル女優」であるにもかかわらず、これらの同年代女優が悩まされた批判的な記事や人々の声が新垣に浴びせられることはほとんどなかった。
結婚発表の時も「アイドル女優」だからこそ「すぐに別れそう」などのやっかみや、「なぜコロナ禍のこんな時期に」などの批判を浴びそうなものだが、新垣にはそれらはない。一見、叩かれそうな「アイドル女優」というポジションであるにもかかわらず、なぜ温かい目で見守ってもらえるのか。
次ページ:ごり押しでない本当のアイドル女優