LIFE STYLE | 2021/05/24

「まずは自分が幸せになろう」日本・ベルギー・オランダの3カ国から考える働き方と幸福論

仕事最優先で生きてきた日本人が、コロナ禍を機に変化している。少しペースダウンしたとしても、自分や家族の幸福を大切にしたい...

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仕事最優先で生きてきた日本人が、コロナ禍を機に変化している。少しペースダウンしたとしても、自分や家族の幸福を大切にしたいという欧米的な考え方にシフトしているのだ。そこでFINDERSではヨーロッパに移り住んだ日本人2人にインタビューを実施。移住で暮らし方や働き方はどう変わったのか。そして現在、幸福なのか。ベルギーで日本食のエバンジェリストとして働く西田さおりさん、連載「オランダ発スロージャーナリズム」でも活躍中のオランダで企業のクリエイティブディレクションなどを手掛ける吉田和充さんに話を聞いた。

聞き手:米田智彦 構成:松本香織

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

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ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director 1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

西田さおり(ニシダサオリ)

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日本食エバンジェリスト。関西学院大学卒業後、ボストン大学大学院にて国際関係学とコミュニケーション学の修士号を取得。日本にてP&G、ロイズ銀行等、大手外資系企業で勤務した後、世界トップクラスのビジネススクールであるIMDでMBAを取得。ジョンソン・エンド・ジョンソンのEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)地域マーケティング購買戦略担当として、日本人として初めて現地採用され、ベルギーへ移住。2015年に個人事業主として独立し、日本食をヨーロッパに広める活動や、日本企業のヨーロッパ進出のサポート等を行なっている。4カ国での就労経験と、66カ国への渡航歴あり。

事業もなく、お客さんもいないゼロからのスタート

―― お二人は大企業で働いてから海外に渡り、現在は個人事業主として働いていますよね。なぜ思い切った決断を?

西田:私は今ベルギーで、日本食を広く知ってもらうため、ミシュランの星付きシェフたちに食材の使い方を教えたり、メニュー開発のお手伝いをしたりしています。ベルギーへ移住したのは、海外で働きたいという夢を実現するために、スイスでMBAの勉強をしていた時、ジョンソン・エンド・ジョンソンから内定をいただいたから。移住して3年目に半年ほどドバイでの駐在を経験して、ベルギーへ戻ったら、何か違うことをしたいと思うようになったんです。そこで、昔からの夢であった起業にチャレンジしようと思い、なかなか取得できないと言われていた個人事業主としての労働許可証を申請したら、あっさり通ってしまった。それで会社を辞めて、独立しました。会社に勤めていた頃は、副業をしていなかったし、見込み客もいなかったので、本当にゼロからのスタートでした。でも、向こう2年間は収入ゼロでもとりあえず生きていけるぐらいのお金は貯めていましたね。

吉田:僕は現在、オランダで企業のクリエイティブディレクションなどをしています。日本にいた頃は広告代理店で仕事をしていました。移住を考え始めたのは、子どものことを考えたからですね。日本での暮らし方・働き方だと、子どもと接する時間はどうしても短くなってしまいます。また子どもの未来を作っていく教育にも、きちんと向き合いたい気持ちがありました。オランダでは教育の目指すところが日本とはまったく違うんですね。勉強したことが世の中と実際どうつながっているかが意識されていて、「知識」ではなく「意見」が問われる。教育のタイプが自分の希望に合っていて、ビザが取りやすかったのは、当時オランダだけでした。

―― 語学の勉強はどうしましたか?

西田:私は個人事業主として独立した時、ベルギーの公用語を一つは話せた方がいいだろうと考え、本格的にフランス語を勉強し始めました。3年間、公立の語学学校に週に12時間通い、こちらの大学に入るのに必要な「B2」というレベルになりました。それでもまだ仕事で使えるレベルではないですし、今でも勉強は続けています。

ただ、言語習得に近道があるとすれば、やっぱり「話す」「書く」のアウトプットを増やすことだと思います。私が通っている学校では、習って1、2カ月の段階で「みんなにフランス語で自己紹介しなさい」と言われるんです。ボキャブラリーもほとんどなく、文法も分からない状態なのに。でも、それを繰り返していくとできるようになっていきます。日本の英語教育も初期段階からもっとアウトプットしていった方がいいと思いますね。

吉田:僕のオランダ語は「頑張っています」というレベルです。レストランに行って注文するくらいはできるけれど、好きなメニューは決まっているから意味がないし、ワインも赤か白かが言えるぐらい。西田さんとはまったくレベルが違います。もっと言うと、僕の場合は英語も難ありで、思ったことが100%言えるレベルではありません。大人は勉強にかけられる時間が限られるから、なかなか大変ですね。語学は本当にみんな若いうちからやってください。うちの子はもう完全にネイティブ並みになってしまったので、僕はまったく追いつきません。

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