CULTURE | 2021/05/20

国会議員の元秘書、面識ない男性宅に侵入し刃物で襲撃裁判。ありえない犯行動機に法廷呆然【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(25)

Photo by Shutterstock
過去の連載はこちら

阿曽山大噴火
芸人/裁判ウォッチャー
月曜日...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

Photo by Shutterstock

過去の連載はこちら

阿曽山大噴火

芸人/裁判ウォッチャー

月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。

金品を奪ったわけでもない

非常に珍しい罪名と理解しがたい犯行動機の裁判傍聴記になります。

罪名 住居侵入、傷害、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律違反
U被告人 フィットネスジム経営の男性(38)

起訴されたのは2つ。1つ目は、1月5日午前2時15分にU被告人が東京都北区の被害男性(77)宅に侵入し、マイナンバーカードをスマホで撮影して保存した件。

2つ目は、1月20日午前3時54分にU被告人が同じ被害男性宅に侵入し、就寝中の被害男性に包丁を持って覆いかぶさり、体を押さえつけようとしたが、抵抗され、包丁の刃を折られたので、近くにあった枝切りハサミの柄で殴って全治3週間のケガを負わせた件。

国会議員の元秘書が殺人未遂で逮捕と報じられた事件ですが、殺人未遂ではなく傷害での起訴となっていました。そして、個人的には初傍聴となるマイナンバーカード法違反の裁判です。全国で何例目なんでしょう、相当珍しいはず。

罪状認否でU被告人は「覆いかぶさることはしていません。体を押さえつけるというのは覚えていません」と詳細に関して一部否認はしたものの、全体的には認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、U被告人は大学卒業後にアパレルなどの仕事をして、犯行当時はフィットネスジムを経営していたという。前科前歴はなく、妻子と同居していたとのこと。

被害男性は調べに対し、「1月19日23時頃、布団に入り、就寝した。ふと、視界の右側に人影があり、右手で押すと犯人は襲ってきた。私は足が不自由な分、腕力には自信があったので、犯人が持っていた包丁をつかんだ。動いているうちにパキーンと包丁が折れる音がして、犯人は枝切りハサミを手に取って、柄を広げたまま、斧を振り下ろすようにして、頭を殴ってきた。犯人とは面識もないし、犯行中無言で怖かった。取り調べでは否認しているそうだが、何があったのか話してほしい」と犯行状況を事細かに説明しているそうです。寝てたら、足元に包丁持った男がいるって想像しただけでも背筋が凍ります。

面識もなければ、金品を奪ったわけでもないこの事件。被告人の口から動機が語られるのです。

次ページ:「知ってもらおうと思いました」被告人の口から明かされるその理由

next