「知ってもらおうと思いました」被告人の口から明かされるその理由
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まずは、弁護人からの被告人質問。
弁護人「犯行前どんな仕事をしてました?」
U被告人「自身が設立したフィットネスクラブとヨガのマッチングアプリの運営です」
弁護人「社員は何人でした?」
U被告人「14人です」
弁護人「ジムの経営状態は?」
U被告人「2020年4月までは順調でしたが、コロナの影響で休業して売り上げが半分に…」
弁護人「それで会社としては給付金の申請をしたと。通ったのはいくら分ですか?」
U被告人「約85万円です」
弁護人「申請が通らなかったのはいくらですか?」
U被告人「約700万円です」
弁護人「なぜですか?」
U被告人「去年の売り上げが不明瞭だとか、売り上げが下がってないとかです」
弁護人「どう感じました?」
U被告人「不公平だと思いました」
弁護人「それでどうしましたか?」
U被告人「6月~12月までスタッフ総出でチラシをまいて、新規のお客様を開拓しようと」
弁護人「効果はありました?」
U被告人「ありました。10月まで順調でした」
弁護人「10月以降は?」
U被告人「Go To イートが始まって、感染者が増え、ジムの売り上げが減りました」
弁護人「その頃、政府に対して、どう思ってました?」
U被告人「出勤者の7割減、オンライン化に応じているのに給付金が支払われないことに不満を持っていました」
この被告人の言い分に、「わかる」という人もいれば、「うちはもっと大変だ」などさまざまな感想はあるでしょう。会社や店を経営していない人でも、何かしらの影響は受けた1年間で、同情・共感する人も多いでしょう。でも、この裁判、ここから被告人の言い分がまったくの意味不明なものに変わっていくんです。びっくりするくらい付いていけなくなります。
弁護人「なぜ、こんなことをしたんですか?」
U被告人「私が起こしそうもない事件を起こして、偏った政策によって中小企業の人たちが苦しんでいるのを知ってもらおうと思いました」
弁護人「起こしそうもない事件って何ですか?」
U被告人「人を傷つけようと」
弁護人「今考えるとどう思います?」
U被告人「同じく苦しんでいる人で、意見書を出したり、議員に陳情すればよかったです」
弁護人「なぜそう考えなかったんでしょう?」
U被告人「業務にかかりっきりで、余裕なかったです」
事件起こすのと、現状を知ってもらうというのが、一体、どうつながるのやら…。当時はそれくらい普通の精神状態ではなかったんでしょう。
この後、否認している部分での質疑応答。被告人と被害男性、どっちの言っていることが正しいというより、互いに興奮状態にあったので、受け取り方の違いなのかなぁと。そして、
弁護人「奥さんとはどうなりました?」
U被告人「妻とは離婚しました」
弁護人「会社は?」
U被告人「社員の整理をしています」
弁護人「ご自身の方は?」
U被告人「自己破産の手続きをしています」
いろんなものを失ってしまったようです。これはコロナのせいじゃなく、自分のせい。
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