CULTURE | 2021/04/01

1997年の乳児遺棄事件、DNA鑑定で母親特定。24年越しの逮捕も、その背景に考えさせられる

文:小田千鶴
時たま、ニュースを騒がせる乳児遺棄事件。 その悲劇に、誰しもが胸を締め付けられることだろう。
こうした...

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赤ちゃんの父親に否定され…、頼る人がいなかった母親の苦しみ

ただクリスティンの行動の背景には、思わず胸が詰まるような事情があったのも事実のようだ。『KING5』によると、当時クリスティンにとって妊娠は予定外であり、赤ちゃんの父親に当たる男性に妊娠を告げた時、否定的な反応をされたという。クリスティンは出産という事実に耐えられず、妊娠自体を頭から消し去ってしまったとも言っている。 そのため適切な医療を受けず、妊娠していることすらも誰にも言わなかったとのこと。検察はクリスティンには前科はなく、調査に協力的であると明らかにしている。

生まれてきたばかりの尊い命が、母親によって失われたことは紛れもない事実である。しかしその背景を切り取ると、赤ちゃんの父親の影響とその重圧に押しつぶされたクリスティンを、単純に責めることが出来るだろうか。事件が解決したことで、シアトル北にあるカルバリー墓地に多くの募金によって埋葬されたこの赤ちゃんが安らかに眠ってくれていることを願うばかりだ。


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