新型コロナウイルスの感染拡大以降、働き方は大きく変容を遂げた。テレワークが多くの企業で導入され、オンライン会議が浸透。場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が享受される一方、生産性や社内コミュニケーションといったデメリットも顕在化した。
自動翻訳サービスなどを開発するロゼッタは、そんなテレワークの課題に大胆な解決策を見出した。同社は、昨年10月1日から本社機能をVR空間に移転を開始。VRヘッドセット「Oculus」を使用し、あらゆる場所から出社できるオフィスを目指し、取り組みを始めた。
ロゼッタはなぜ距離の壁と国境の壁、そして言語の壁を超える挑戦を始めたのだろうか? どのような「働き方のネクストステージ」を展望しているのだろうか? ロゼッタ西新宿オフィスにて同社のVRオフィスに訪問し、IR部の村井啓泰氏に話を伺った。
聞き手:岩見旦・米田智彦 文・構成:岩見旦 写真:赤井大祐
あらゆることに通じる「VRって楽しい」
―― 昨年10月から御社の本社機能をVR空間に移転という発表がありましたが、現在はどのようなステータスでしょうか?
村井:昨年の秋口に幹部層がVR空間で仕事を始め、今は一般社員の一部まで広がっている状況です。本社機能をVR空間に移しますという言葉と、現在の使い方はある意味若干のニュアンスの違いがあって、会議の場として、人が集う場としてVRを活用しているのが現在の姿です。
FacebookのVRオフィス「Infinite Office」のリリースが遅れていたり、VRヘッドセット自体の問題がまだネックになっていて、事務作業を含めた日常業務をVR空間で行うという域にはまだ達していないです。
エジプトを背景にVR空間で取材
―― 現在、VR空間で取材させていただいていますが、どのようなソフトを使っているのでしょうか?
村井:VR会議室としてSynamon(シナモン)の「NEUTRANS BIZ(ニュートランス・ビズ)」を使用しています。この他にも海外製のSpatial(スペーシャル)にも会議室を設けています。
―― VRへの移転に関して、社員の方の反応はいかがでしたか?
村井:皆さん楽しんでいますね。初めてVRで会議に参加される人がいると、みんな遊んでなかなか本題に入れないこともあるようですが(笑)。
―― まさに今の私たちのようですね。逆にVRに移行したことで、何か問題点はありましたか?
村井:それが無いんですよね。何かを止めてVRというより、従来の働き方やこれまで欠けていたものを補う新たな選択肢を増やしただけなので。あえて言えばOculusが少し重いかなくらいですかね。
―― VRヘッドセットも多分、数年でもっと軽くなるでしょうし、コンパクトになるでしょうね。そうなってくるとその違和感すらもなくなるかと思います。
村井:そうなるでしょう。目的が違えど、ウェアラブルのグラス型もさまざまあるわけで、そういったデバイスの問題、ハードの問題は時間が解決するでしょう。
村井啓泰氏
―― 昨年11月には、決算説明会をVR上で開催しましたね。
村井:初めての取り組みな上、お年を召した方も多いので、どうなることかと開催前は思っていたのですが、実際に行ってみると、予定の2時間を遥かに超えて4時間話が尽きませんでした。皆さんOculusを着けて楽しげな雰囲気で。
これってあらゆることに通じていることだと思うのですが、VRって楽しいんですよね。こういったイベントだけでなく、普段の仕事の楽しくなると感じています。さりげなくVR空間をエジプトの風景の中にするだけで、とりあえず余計な重しみたいなものは一旦外れるとおいうところもあります。効率性ということももちろん大事でそのためのツールではあるんですけど、まずはとても楽しめる場なのかと。
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