シビックテックを活用した新しい地域創りの可能性(Theme2)
Okinawa Open Days2020、2日目のテーマは「持続可能で活力のある地域社会に向けて」。SDGsなどの活動を通して、地域社会の活性化に向けた動きがある中、昨今のwithコロナや多数発生している激甚災害などを踏まえ、持続可能で活力のある地域社会がさらに重要な課題となっている。その際にデジタル技術を活用することで、何に貢献できるかという議論を進めるという内容だ。
なお、この日の夜には「スペシャルセッション 〜OOLの夕べ〜」と題し、沖縄を感じてもらうような特別なセッション(沖縄の歴史文化トーク、泡盛の紹介、三線演奏)や、OOL育成プログラム参加者紹介なども行われている。
最初の講演は一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事の福島健一郎氏による講演。「市民がテクノロジーを活用して自らが望む社会を創り上げる活動とそのテクノロジー」を指すシビックテックは、シビックテック団体のCode For Japanが制作した「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」などの取り組みを通じて今年一気に広まったが、福島氏はその石川県バージョンの組織の代表というわけだ。
コード・フォー・カナザワは、2013年に設立された日本初のシビックテックコミュニティ。14年2月に一般社団法人化、100名以上のプロジェクトメンバーで石川県全域をカバー。現在のプロジェクトは9個。それぞれリーダーがいて、自律的に動いている。
これまでの取り組み事例として、金沢市のゴミ収集日をわかりやすく表示し、全国120の地域に広がり高校や大学のプログラミング演習にも使われるようになったアプリ「5374(ゴミナシ)」や、アイデアソンから生まれた石川県能登地方の子育て応援情報サイト「のとノットアローン」などを紹介。
また新型コロナ禍に際しては金沢市のテイクアウト可能な飲食店データを集約した「金沢テイクアウトマップ」のほか、沖縄県向けの新型コロナ対策サイトの制作にも携わっている。
講演資料より
加えて講演では、参加メンバー獲得に苦しんだ立ち上げ初期のエピソードを振り返りながら、シビックテック団体に求められる要素についても語られた。「テックが主役ではない。市民と課題が主役」「誰かにやってもらうという姿勢では真に欲しいサービスは作れない。自分自身が動くからこそ無駄なことはできない、自分が欲しいものだからみんなが使う」など、貴重な体験談が語られた。
沖縄における観光危機管理の取り組みとICT(Theme2)
沖縄の観光振興を担う広域DMOである沖縄観光コンベンションビューローに長年勤務し、2019年に独立、「観光危機管理をわかりやすく伝える」を目的とした株式会社サンダーバードを立ち上げた翁長由佳氏による講演。
「沖縄と観光危機」というテーマだと毎年のように訪れる台風のイメージが強いが、観光客のほとんどが空路・海路で訪れる沖縄は、同地での危機以外でも「他地域に大雪や台風が発生し飛行機が運行中止」「海外で9.11のようなテロ事件が発生し、飛行機移動そのものが忌避される」といった関連被害が多発してきたことを指摘。
講演資料より。2018年に沖縄で流行した麻しん(はしか)の風評被害によって観光産業が受けた影響の報告
その他、被害発生が予測されうる課題として、
・県内全宿泊施設の空室情報は一括管理されていない(飛行機が欠航時に困る)
・避難場所の確認環境が整っているとは言い難い(テレビ、ラジオ、県災害ポータルサイトでは発信されてるいが、それらにリーチできていない人は?)
・県内観光施設の開閉園状況が一括管理されておらず、外国人も含む観光客が知らずに危険な場所に行ってしまうことが回避できない
といったものが存在しているものの、あまり重要視されてこなかった側面もあったという。
こうした課題をITを用いて解決すべく、翁長氏のサンダーバードら7社が共同で今年4月に「防災ICT協働体」を設立。自助・共助・公助の連携にICTをプラスし、安全性と効率化を両立させた防災協働社会の実現を目指していくための取り組みが紹介された。
講演資料より
講演資料より
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