過去記事では、京都・丹後で培われた伝統的な絹織物「丹後ちりめん」300周年の節目とこれからの100年に受け継ぐ「TANGO OPEN」事業について紹介した。
その一環として、このほど丹後ちりめんを用いた現代的なドレスが発表された。
このドレスは日本を代表するブライダルドレス・デザイナー、桂由美のコレクション「Yumi Katsura Paris Couture」から、「TANGO OPEN “WHITE COLLECTION”」としてリリース。
「TANGO OPEN “WHITE COLLECTION”」は、気鋭のファッションデザイナーで、海外からの評価も高い、デザイナーの岩谷俊和氏が手がけている。
ご本人に、作品に込めたコンセプトや思いについて直撃した。
取材・文:庄司真美 写真:高橋敬大
岩谷俊和
デザイナー
1974年横浜生まれ。文化服装学院アパレルデザイン科メンズコース卒業。1996年株式会社アト・ワンズに入社し、2002 年にアパレルブランド「DRESSCAMP」を立ち上げる。2004 年に「第 22 回毎日ファッション大賞新人賞」「資生堂奨励賞」「第 6 回モエ・エ・シャンドン新人デザイナー賞」を受賞。その後、CHAMPIONのスポーツウェア、高級時計ブランド「PIAGET」、コスメブランド「M・A・C」など、幅広い分野のブランドとのコラボレーションアイテムを手掛ける。2008 年、株式会社 IWY を設立し、株式会社ディーエスファクトリーに参画。新ブランド「DRESS33」を立ち上げ、2009年の春夏パリ・コレクションにてデビュー。
「Yumi Katsura Paris Couture」からリリースされた「TANGO OPEN “WHITE COLLECTION”」。伝統と格式がもたらす素材の上質感、唯一無二の魅力と技法が光る。
「Yumi Katsura」コレクションから、「丹後ちりめん」のドレスを世界へ発信
―― 今回の「TANGO OPEN “WHITE COLLECTION”」以前に、丹後ちりめんを用いたドレスを製作し、海外のコレクションでも高い評価を得ている岩谷さんですが、初めて産地の京都の丹後エリアを訪れてみていかがでしたか?
岩谷:仕事柄、さまざまな生地の産地を訪れたことがあって、近代的な工場が並ぶところも多いですが、丹後では、着物文化が街にも工場にも受け継がれていると感じました。
工業化されたところもあれば、時が止まったようにノスタルジックな現場などさまざまで、歴史と伝統をベースにした独特の雰囲気があって、こういうところから長年、日本の和装文化を支える高級素材が生み出されているのだなと実感しましたね。そこからあらためて、丹後ちりめんの素材をどう生かそうかと着想し始めました。
―― 「TANGO OPEN “WHITE COLLECTION”」を海外にも発信する上で、やはり“日本らしさ”を意識してデザインしたのでしょうか?
岩谷:「Yumi Katsura」のブランドを通して世界に発表するにあたり、“日本”を表現したコンセプトを全面に打ち出す方向性でデザインしました。
デザイナーの岩谷俊和氏。
―― 岩谷さんがデザインのアウトプットをする時に、意外にもごく身近なものから着想を得ると伺ったのですが、どんなシチュエーションなのですか?
岩谷:その時々で、「今はこういう気分」といった、欲するテーマが頭の中にあって、なんとなく考えているポイントと、外出先で見るものがリンクする瞬間があるんです。たとえば、近所を散歩していて、たまたま古着屋の店頭で見かけた服の色がいいなと思ったり、生地の重なり方が何かのヒントになったりする感じですね。
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