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文:汐里
温室効果ガスのメタンガス、放出量が過去20年間で10%増
家畜のゲップやおならが地球温暖化の原因となっていることを知っているだろうか。ゲップやおならとして発生しているのは、温室効果ガスのメタンガスで、国立環境研究所によると、過去20年間で、世界のメタンガス放出量は10%近く増加している。
また、自然保護団体『グリーンピース』によると、家畜はすべての車、トラックによって排出される温室効果ガスと同程度の温室効果ガスを排出。
さらに、気候分析サイト『カーボン・ブリーフ』によると、牛肉や羊肉を食べることによる環境への影響は、他の食品を食べることによる影響よりもはるかに大きいという。これは、牛や羊が、一度飲み込んだ食べ物を再び口の中に戻し咀嚼(反芻)する動物であるため、消化過程でより高いレベルのメタンガスを発生させるためだ。
メタンガスへの早急な対策が求められている中、メタンによる地球温暖化を防ぐべく、イギリス名門大の学生たちが動き始めた。
大学側に気候変動への対応においてリーダーシップを求める
メタンガスによる地球環境への影響を踏まえ、オックスフォード大学の学生組合による評議会で、「キャンパス内の食堂で、牛肉と羊肉を食べることを禁止する」という議案が提出された。
この議案には、「イギリスを代表する大学として、国は我々にリーダーシップを求めているが、オックスフォード大学は気候変動への対応においてリーダーシップが欠如している」、「大学が提供するイベントやアウトレットでの牛肉や羊肉の禁止は、2030年の目標を大学が達成するための実行可能で効果的な戦略だ」といった主張が盛り込まれていた。同大学は2030年までに二酸化炭素排出量の50%削減を目指す、持続可能性推進を掲げている。
11月17日、この議案は評議会の3分の2以上の賛成で可決となった。とはいえ、組合だけの採決で、大学全体のルールを変更することはできない。学生たちは引き続き、「キャンパス内での牛肉・羊肉の禁止の実現」を求めて、ロビー活動を行っていくという。
学生組合を代表するベン・ファーマーさんは食肉の制限について、「この重要な問題に、大学が参画することを嬉しく思います」と、喜々として話す一方、「食をベースにした変化は、大学のすべての学生やスタッフにとって可能ではないことを認識することが重要です」と述べており、食肉の制限が困難となりうる一部の人々への理解を示した。
なお、ケンブリッジ大学、ロンドンのゴールドスミス大学はすでに、キャンパス内での牛肉禁止ルールを導入している。
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